1ドル135円を超えたいま、日本で暮らしていても「外貨」が必須な理由

  • 文:川畑明美
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急激な円安が進んで食品や日用品の値上げが続いている。こんな時、外貨建ての資産を保有していれば、目減り分をカバーできる。istock

筆者は常々普通の日本人でも外貨建資産(円以外の通貨で価値(=価格)が表示される資産)を保有することは大切だと、お伝えしている。昨年の8月に書いた日本で暮らしていても「外貨」は必須!知っておきたい外貨運用「4つの常識」を読んで外貨準備を始めた方は、どのくらいいたのだろうか。ドル円が135円を超えてしまい、食品を中心に値上がりが続いているが、昨年の夏、ドル円が110円前後の頃からドル建て資産を保有していればかなりの利益になっているだろう。


例えばドル円110円の時に1000ドル外貨預金にしていれば、ドル円135円の時に円に戻せば利子を含まなくても2万5000円の儲けになる。110円の時ならば、1000ドル×110円で11万円だったのに対して135円ならば1000ドル×135円で13万5000円なので差額で2万5000円。もちろん為替手数料などもかかるが、たった1年でも増えたのだ。


昨年ドル資産を購入していれば、円安で値上がりした家計の足しになった。日本企業であるユニクロも10月にフリースなどの値上げを予定している。生産年齢人口が減少している日本では日本のメーカーといっても海外で生産しているのだから、今後はさらに円安が進めば生活費を圧迫する。

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円はすべての通貨に対して安くなってる

外貨建ての保険を保有している方は、この機会に見直しするといい。また、昨年マイナスになって解約するか悩んでいた先進国債券の投資信託を保有していた方も売却のチャンスだ。先進国の債券は、債券の金利よりも為替の影響の方が強いので今はプラスになっていることだろう。


金融機関でお勧めされる投資信託も流行があり、昨年は株式の投資信託と先進国債券の投資信託のセット販売が多かったようだ。相談にくる方のほとんどの方が、同じ投資信託なのには失笑した。米国の中央銀行であるFRBが政策金利を引き上げたのに対して日銀は、低金利政策を維持するとしている。


米国だけでなくユーロの政策金利も欧州中央銀行(ECB)が7月の理事会で0.25%の利上げに踏み切る。EBCの利上げは11年ぶりだ。いまや円は、米ドルだけでなく多くの通貨に対して安くなっている。

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「今は円安なので米国株投資できない」というのは正しいのか?

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為替の上昇よりも大きく上昇する株価。上昇率が高いのならば、円安でも株価が下がっている米国株や米国ETFは購入のチャンスだ。istock

米国株や米国のETF(投資信託を上場させ株のように購入できる金融商品)の投資方法を教えていると「今は円安なので投資できない」と、いう方が多い。ドルが高いので今購入したら損してしまうと思っているのだろう。だが、それは本当なのか。「ここまで 円安が進み、とまる要素がない。まさかの140円 150円の可能性も視野に入ってきました」という問い合わせもいただくが、まだ円安が進むと考えるのならば尚更、今の段階でドル建資産を保有した方が良いということだ。

ただし、購入する金融商品を間違えてはいけない。外貨預金や外貨建の保険の年利はよくても2%程度だ。年利2%で1万ドル預け3年間運用したとすると、3年後1万600ドルにしか増えない。1ドル135円の時に1万ドル購入するには135万円必要だ。満期に1万600ドルに増えたとしたら、ドル円が135円のままならば、円に戻すと143.1万円だが、ドル円が110円になっていたら116.6万円と目減りしてしまう(手数料や税金は考慮せず)。


ところが、株価1ドルの株をドル円135円の時に1万株買ったとしよう。円建ての買値は135万円。その後株価が1.5ドルになった3年後に売却したとする。ドル円が110円の時に売却して円に戻すと1.5ドル×1万株×110円=165万円だ。為替が下がっても、利益になるのだ。株価が3年で1.5倍になるのは、あり得ないことではない。


今からでも遅いということはない。為替は円が安くなってドルが上がっているが、株価は下がっているのならば、ドルが高くなっていたとしても米国株が値下がりしている今は、米国株や米国ETFを購入するチャンスなのだ。

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どうして円安が進んでいるのか?

円安とは、他の通貨に比べて円の価値が下がることをいう。円の価値が下がるので、同じ1ドルでも多くの円が必要になる。どうして円安になったのか。米国のインフレ率、つまり物価の上昇が進んだことに関係している。40年ぶりの大幅な伸び率ともいわれているが、行き過ぎたインフレは低所得者を中心に生活が苦しくなってしまう。だから米国の中央銀行であるFRBは、インフレを抑制するために金利を上げているのだ。


一方日本の中央銀行の日銀は、逆に利上げに消極的だ。金利が上がっていくドルと金利が上がらない円のどちらが買われるのか? 答えは明白だろう。多くの人が円を売ってドルを買っているので円安が進んでいる。既にドル建ての金融商品を保有している方は、ドル建ての金融商品を売却したら利益になる。円安で進んだガソリンや食品の値上げで目減りした生活費の足しになることだろう。

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もしも日本の金利が上がったら?

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なぜ日銀は他の先進国と違って利上げをしないのだろうか。金利が上がると困る人が続出するからだ。istock

円安が進み国民の生活費の負担が増えているのに日銀は、なぜ利上げをしないのか? それは賃金の上昇が見られないのに金利を上げてしまっては、私達の生活に大きな影響があるからだ。例えば、住宅ローン。賃金が上がらないのに、住宅ローンの金利が上がったら、どうなるのか考えて欲しい。返済額が増えてしまい生活が困難になる方もでてくる。


そうなったら、庶民はさらに財布のヒモをかたく締めなくてはならない。景気回復とは、ほど遠いものになってしまうのだ。また金利が上昇してしまうと銀行から借り入れしている中小企業の倒産も考えられる。ギリギリのところで運転資金を回しているのならば、金利の上昇は大きな負担になる。倒産する企業が増えれば、賃金上昇どころか収入がなくなり生活保護世帯が増えてしまう。

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円安で日本人がどんどん貧しくなる?

2022年度の国の財政予算を見ると国債の利息の支払いは22.6%となっている。金利が上がれば、国債の利息も上がる。住宅ローンの返済に私達が困るのと同様に国も借金の返済が重くのしかかってくるということだ。日本の金利引き上げは、考えにくく金融緩和が続くと考えられる。冒頭に戻るが、筆者は以前から、日本に住んでいても外貨資産を持つべきだとお伝えしている。特に現在のように円安が進むと外貨建資産を持たない方の資産は、目減りしてしまう。


1ドル100円の時の1000万円は10万ドルだが、1ドル135円では約7万4000ドルだ。グローバルベースで見るとあなたの資産が目減りしているということだ。とても怖いのは円安が進むと日本で暮らしていて、日本で働いていてもグローバルベースの賃金も目減りするということだ。


円安でお給料が上がったという方は、いないと思う。円安で給料が上がらないのならば、生活費だけが円安で上がり続けるということだ。円建ての資産だけでは、どんどん貧乏になっていってしまうのだ。円安が進んで生活が苦しくなってから重い腰を上げるのではなく、常に先々を予測して早く行動することが重要だ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/