日本で暮らしていても「外貨」は必須! 知っておきたい外貨運用「4つの常識」

  • 文:川畑明美

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食品を中心に輸入に頼っている日本では、ごく普通に暮らすにも外貨の資産保有が必須なのだ。metamorworks-istock

日本で生活していても「為替リスク」にさらされていることを意識しているだろうか。筆者は、普通の日本人でも外貨建て資産(円以外の通貨で価値(=価格)が表示される資産)を保有することは大切だと思っている。そこで今回は、外貨運用する際の「4つの常識」をお届けしたい。

私たちは日本に住んでいても直接・間接的に、外国の製品やガソリン(ほぼ100%輸入)などの資源を使っているが、輸入品は、為替レートで価格が大きく変わる。為替が変われば、価格に直接反映するのだ。


さらに言えば、日本のメーカー製品も国内で作られているものは少ない。例えば、服や下着も日本製は少数だ。また、食品も輸入品が多い。特に小麦粉等は輸入に頼っているので、円安になると麺類やパン、小麦を使ったお菓子などが値上げされる。最近は、価格は据え置きだが内容量が少なくなったりしている。つまり、日本で生活していても為替リスクにさらされているのだ。


今後はさらに少子高齢化が進むと考えられている。食品や日用品は、生産する人口が少なくなるので、輸入品に頼らざるを得ないだろう。資産の一部を外貨建て資産で保有しておけば、円安の時には外貨が高くなり、円に換金したら多くの円に換えられる。外貨建ての資産を準備していれば、円安になって輸入品が高騰しても安心だ。ただし、為替の動きを予想するのはとても難しい。だから外貨を準備すると決めたら、一度に外貨にするのではなく時間をかけて外貨建ての金融商品に変えることだ。

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外貨運用の常識その1
→お金を生み出す「外国資産」で保有する

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ただ外貨を保有しているだけでは、お金は増えない。持っているだけで増える「資産」に注目しよう。
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「外貨を持つこと」と「外国資産を持つこと」は違う。外貨をただ保有しているのではなく保有しているだけで、お金を生み出す「外国資産」であることが重要だ。少し考えてみて欲しいのだが、外貨預金でドルやユーロを持っていてもそれを日本国内で使うことは、ほとんどできない。外貨を保有していても日本国内では、円に換えないと使うことはできない。


もちろん、海外に家族がいて送金するために必要ということならば、外貨を保有することに意味はあるのだが、そういう理由以外では、ただ外貨預金をしていても、あまり意味はない。円預金より多少金利が高くても、高額な換金手数料を考えれば利益は微々たるものになってしまう。また、外貨建ての保険なども同様だ。円建ての保険よりも利率は高いが、為替の差益によって、その金利の利益分は消し飛んでしまう程度だ。そうではなく、保有しているだけでお金を生み出す「資産」で保有することだ。

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外貨運用の常識その2
→金融資産の安全性をしっかり確認する

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金利の高い国の銀行で定期預金を作ったら有利な気がするが、実はそうでもない。BBuilder-istock

外貨保有のために「金利の高い国で銀行の定期預金を作ろう」と考える人もいる。金利が6%近くもあるフロンティア諸国(経済発展の初期段階にあり、将来的に高い成長が期待される国々)の銀行の定期預金は一見、魅力的に見えるだろう。だがよく考えて欲しい。フロンティア諸国は、まだ株式市場もない国もある。そこまでではないにしても、フロンティア諸国は金融市場が発達していないので、日本の銀行と同じようには考えられないのだ。


少し冷静になって考えて欲しい。必ず格付け会社で、現地銀行の格付けを確認するべきだ。格付けが低い銀行ならば、倒産の確率が高い銀行ということになる。つまり、格付けの低い銀行の定期預金は、「非常に投機的な債券」を購入することと同じことだ。日本と違って、預金保護機構がない国がほとんどなので、銀行が倒産したら、お金は戻ってこない。また海外の金融資産のデメリットは、日本に持ち込むと、結局日本の税制で課税される。


事業でも言えることだが、売上を上げることにばかり頭が行ってしまい、利益がどのくらい残っているのかを考えていない人が多い。使う時期に「使えるお金」になっていて、なおかつ、金利や目に見えるものだけではなく、税金や渡航費など目に見えていない経費を考えてから海外の金融資産を検討すべきだ。そんなに、夢のように儲かる金融商品はないことが理解できるだろう。

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外貨運用の常識その3
→国内でも買える外国資産に注目する

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海外の銀行に口座を開かなくても日本国内にいるだけで外国株式なども購入できる。MarsYu-istock

最近、米国株への直接投資がブームになっている。実際大手ネット証券での米国株の取引口座数はうなぎ登りに増えている。国内にいながらでも、手軽に外国株を購入できる環境が整っているのだ。外国株式や外貨建てのETFで運用することは「外国資産」を保有することになる。ETFとは、投資信託を上場させて株式のように時価で売買ができる金融商品のことだ。海外には日本にはないようなタイプの成長企業がたくさんあり魅力的だ。


ただし海外の株式投資については、情報を集めるにも投資判断をするのにも国内の株式よりも難しい。その場合は、国内の投資信託であっても海外株式のタイプを購入するのでもいい。間接的に外国資産を保有していることになる。むしろ投資信託で国内株のみを購入するよりも海外にまで広く分散することの方が、効率良く資産を運用することができるのだ。

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外貨運用の常識その4
→外貨は米ドルから準備する

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最初に保有する外貨としてお勧めなのは米ドル。米ドルは、輸入品の決済に使われる通貨でもあるからだ。MicroStockHub-istock

ただ外貨と言っても、何でも良いわけではない。ひとつ選ぶのならば「米ドル」をお勧めする。日本で生活するのなら、米ドルの保有がインフレリスクにもなるからだ。例えば、物価が上昇して仮に2倍になったとする。すると海外の商品の方が値段が安くなるので、輸入が増える。米ドルは、決済に最も使われる「基軸通貨」だ。輸入が増えるということは、代金の決済に米ドルが必要になる。そうなると円を売って米ドルを買うため、米ドル高円安が進む。つまり、米ドル建ての資産を持つことで、インフレリスクを抑制できるのだ。


物価上昇に備えて株や米ドルを保有することは、今後必須だろう。また資産運用は、できるだけ若いうちに始めた方がいい。特に、投資信託で利益が十分出るのには、ある程度の長い年月がかかる。さらに資産運用には、さまざまスタイルがあり、自分に合った運用方法を見つけていくのにも時間がかかるからだ。あなたの資産は、あなたしか守れない。


「貯蓄から投資へ」と国が方針を示したのは1996年の金融ビッグバンの頃だ。当時、橋本龍太郎総理大臣が政権を握っていた際に印象的だったのは、外為法の改正だった。それ以前は、普通の銀行では外貨預金はできなかったのだ。なぜ、そこまで細かく知っているのかと言うと、2002年に編集をしていた寺院向けの専門誌で、ペイオフ解禁の記事を担当したからだ。その記事中に「外貨預金はペイオフの対象外」と書いたら外為法で個人が外貨預金できるなんてあり得ないと編集長に怒られた。あまり金融のことに詳しくない編集長を説得するために、色々と調べたのをよく覚えている。

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外貨建てMMFが発売されたのもビックバン以降だった。外貨建てMMFとは、米ドルや豪ドルなど、外貨建ての格付の高い国債などの短期債券を中心に運用される投資信託だ。毎日運用実績に応じた分配が行われ、その月の分配金を月末にまとめて元本に再投資する1ヵ月複利の商品だ。米国株投資をするのなら、円高に振れた時に外貨建てMMFに米ドルをプールしておくといい。狙った銘柄が購入のチャンスになったのならばMMFを解約して米国株を購入することができるからだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに、家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/