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食文化を伝え、SNSを中心にウクライナ支援の輪を広げる「#Cook For UKRAINE」に注目

  • 文:坂本みゆき

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ロシアによるウクライナ侵攻が始まった際、ロンドンで抗議デモに参加していたというロシア人料理家のアリッサ・ティモシュキナ。彼女はウクライナ人の料理家の友人とともに、ウクライナ支援のため「#Cook For UKRAINE」を創設。いまも支援の輪が広がっているという彼女のプロジェクトについて話を訊いた。

6月28日発売のPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。

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アリッサ・ティモシュキナ●料理家。#Cook For UKRAINE 共同創設者。1985年ロシア・オムスク生まれ。99年、ロンドンの大学院でロシア映画を学ぶため渡英。卒業後、映画界でのキャリアを経て2014年にフードイベントやサパークラブを主催する「Kinovino」をスタート。多くの雑誌や新聞にレシピを提供、19年にはオブザーバー紙フードマガジンで「料理界に新風を吹き込むニューヴォイス第一位」に選出された。ロンドン在住、一児の母。www.alissatimoshkina.com/Instagram:@alissatimoshkina

2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻という世界を震撼させるニュースが流れた時、ウクライナ人料理家の友人オリア・ヘラクレスとともに、ロンドンでの抗議デモに参加していたというアリッサ・ティモシュキナ。

「すぐにふたりでクック・フォー・ウクライナの創設を決意しました」。料理を通じてウクライナの人道的危機を伝え、広く募金を集めるその活動はいま、さらなる広がりを見せている。

具体的な支援方法は、HPに載せたレシピをもとにウクライナ料理をつくる、手づくりのお菓子をバザーなどで販売して寄付を募る、協賛するレストランやカフェでの支払い時に寄付をする……など。スタート直後から多くの賛同を得て、SNSには人々がつくったウクライナ料理の写真など、「#Cook For UKRAINE」のハッシュタグを添えた投稿があふれた。

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ビーツを使った真っ赤なシチュー「ボルシチ」など、ウクライナ料理には温もりを感じるものが多い。ポピーシードを巻き込んだパンは素朴な愛らしさがあると言う。餃子のようなダンプリングに親近感を覚える。 photo:#Cook For UKRAINE

ジェイミー・オリバーらセレブシェフたちとのコラボも実現し、「わずか3カ月で寄付総額が100万ポンドを超えた時は本当に感激しました」とアリッサ。

ロシア人のアリッサとウクライナ人のオリアという、当事国にルーツをもつふたりがともに支え合い、活動している意義も大きい。

「私はロシア生まれですが、血筋はユダヤ系ウクライナ。だから私にとってウクライナの人々は隣人ではなく、家族そのものなのです」とアリッサ。

「食は生命をつなぐだけのものではありません。私たちの暮らしとともにあり、新たな価値観や体験を生み、広い世界へ導いてくれる架け橋でもあるのです」

たとえ未知の国であっても、そこで暮らす人々の料理を口にすれば、自然と彼らの暮らしに思いがめぐる。ウクライナの平安を願い、支援の輪はいまも広がっている。

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左:スタートからわずか2カ月後の4月には「ワールドベスト50」からふたりの活動に対してチャンピオンズ・オブ・チェンジが贈られている。 右:5月19日には寄付総額100万ポンド達成を伝えるメッセージをインスタグラムに投稿。これによりウクライナで避難している家族約37000世帯にシェルターを提供できるという。 photo:#Cook For UKRAINE

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ウクライナ支援「#Cook For UKRAINE」

2016年にシリア支援で成功を収めた「クック・フォー・シリア」を参考にスタート。寄付金はユニセフUKを通して、主にウクライナの子どもたちのために使われることになっている。 www.cookforukraine.org

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ポップアップレストランにて。プロのシェフも活動に賛同している。左から5人目がオリア、その右隣にはセレブシェフのジェイミー・オリバーとアリッサ。 photo:#Cook For UKRAINE

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OTHER PROJECTS

ロシア料理のレシピ「Salt & Time」

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2019年に上梓したレシピ本『ソルト&タイム』。旧ソビエト連邦時代の料理およそ100点を現代のキッチンで再現できるようアレンジして紹介している。現在は来年発行予定の新刊を準備中だ。

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アリッサ・ティモシュキナのFAVORITE THINGS

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photo:#Cook For UKRAINE

「曽祖母の写真」

子どもの頃によく面倒を見てくれたアリッサの曽祖母は、ユダヤ系ウクライナ人だったことから第二次大戦中にはアウシュビッツ強制収容所に送られた経験をもつ。彼女が語ってくれた戦中、戦後の体験の数々は、大切なインスピレーション源になっているという。

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※この記事はPen 2022年8月号「“仕掛け人”を探せ!」特集より再編集した記事です。