一大プロジェクトの裏側が明らかに!『クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門"』展

  • 文:はろるど
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クリストとジャンヌ=クロード「包まれた凱旋門、パリ、1961-2021」 Photo: Benjamin Loyseau ©2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation)

19世紀、アウステルリッツの戦いに勝利したことを記念するため、ナポレオン・ボナパルトの命令によって建設がはじまったエトワール凱旋門。古代ローマの様式を模した高さ50mの歴史的建造物は、パリ随一のモニュメントとして多くの人々に親しまれている。もはや世界一有名な門と言って良いかもしれないが、その凱旋門のすべてを布で包んだら…?誰もが想像すらできないような超弩級のプロジェクトを実現させた2人のアーティストがいる。

それが偶然にも1935年6月13日の同じ日に生まれたクリストとジャンヌ=クロードだ。1958年にパリで運命的な出会いを果たしたふたりは、パートナーとして、また共同制作者として日々をともにし、絵画や彫刻、建築の枠を超えた、環境芸術作品と呼ばれる屋外での大規模なプロジェクトを手がけていく。1961年には早くも「包まれた凱旋門」を構想。その後も世界各地で活動していくが、2009年にジャンヌ=クロードが逝去。それでもクリストは実現に向けて創作を続ける。そして2020年に完成する予定だったが、コロナ禍によって延期され、クリストも同年5月に他界してしまう。しかし多くの賛同者へ遺志が受け継がれ、2021年9月に実現の日を迎えた。まさにふたりの人生の夢ともいえるプロジェクトだった。

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「包まれた凱旋門」のプロジェクトのための模型やドローイング(レプリカ)などが並ぶ展示室。photo: Masaya Yoshimura

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左は「包まれた凱旋門」にて使われた同じ素材による布とロープ。製作時に余ったものを展示している。photo: Masaya Yoshimura

東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTでは、「包まれた凱旋門」の構想から実現までのプロセスを模型や映像などで紹介している。はじまりはふたりの出会ったパリ。そこからニューヨークのスタジオでの様子や、「包まれた凱旋門」のドローイングを描くクリストなどを写真や動画にて見ることができる。そしてプロジェクトのために製作した布やロープが壁のように横たわる中、目に飛び込んでくるのが「包まれた凱旋門」の設置や完成した光景を捉えた映像だ。多くの作業員が身体を張って凱旋門を布を覆う様子や、実現したプロジェクトに人々が喜ぶ姿が映されている。クラクションの音とともに自撮りや記念写真をする人たちの映像は臨場感にあふれていて、まるでパリへと飛んだような気分を味わえる。

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大型のスクリーンに上映された「包まれた凱旋門」の公開時の様子。5台のモニターにはプロジェクトを楽しむ観客の姿などが映されている。photo: Masaya Yoshimura

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クリストとジャンヌ=クロード ニューヨーク、ソーホーの自宅にて、2004年9月26日 photo: Wolfgang Volz ©2004 Christo and Jeanne-Claude Foundation

ディレクターや構造エンジニアなどの14名の関係者によるインタビュー映像も必見の内容だ。そこにはクリストとジャンヌ=クロードがどのように案を練り、多くの人々が協力し合いながら、さまざまな困難を乗り越えて実現したのかが記録されている。クリストは「包まれた凱旋門」において、時間によってグレーからコバルトブルー、そして日が上がるとシルバーに輝くパリの光の色を表現しようとした。かつて誰も見たことがなく、おそらくもう2度とない空前絶後の「包まれた凱旋門」のプロジェクトから、クリストとジャンヌ=クロード、そして協力したすべての人々の挑戦や勇気、連帯を感じたい。

『クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門"』
開催期間:2022年6月13日(月)〜2023年2月12日(日)
開催場所:21_21 DESIGN SIGHT
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
TEL:03-3475-2121
開館時間:10時~19時 ※入場は18時半まで
休館日:火、12/27〜1/3
入場料:一般¥1,200(税込) ※ギャラリー3は入場無料
https://www.2121designsight.jp/program/C_JC/