“醜い”ルックスが新鮮⁉︎ 話題の「ブルータリズム建築」8選

  • 文:宮田華子

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(c)Citizen of the Planet/Alamy/amanaimages

ブルータリズム(Brutalism/またはブルータリズム建築)とは、第二次世界大戦後の1950年代、世界中で流行した建築様式。打放しコンクリートやガラス等の素材をそのまま使い、粗野な印象の建物のことを指す。

「ブルータル」とは「獣のような、荒々しい」の意味であり、コンクリートの塊でできた灰色の建築物は、確かに獰猛な野獣をイメージさせる。こうした建築物をイギリスの建築家アリソン&ピーター・スミッソン夫妻が「ブルータリズム建築」と呼んだことから、この名前が定着したとされている。

20世紀初頭のモダニズム建築の流れを汲んで起こったムーブメントだったが、1970年代頃から「醜い建築」と批判されるようなり、以後この様式は衰退していった。

しかしブルータリズム建築の終焉から50年経ったいま、再注目されている。現在の建築スタイルとは異なるシンプルで大胆なデザインが逆に新しく見え、再評価されているからだ。

そこで建築好きならぜひ知っておきたい「世界のブルータリズム建築」を紹介する。

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1.三位一体教会(ウィーン、オーストリア)

竣工:1976年
ウィーン郊外にあるカトリック教会。通称「ヴォトルバ教会」とも言われる。彫刻家フリッツ・ヴォトルバがデザインした模型を基に、建築家フリッツ・G・マイヤーが建築物として完成させた2人の共作だ。コンクリート製の積み木を慎重に積み重ねたような形が印象的な建物だ。

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内部からも「積み木」感がしっかり見て取れる。

現在も地域住民に愛される教会として、毎週礼拝が行われている。

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2.ガイゼル図書館(サンディエゴ、アメリカ)

竣工:1970年
カリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD)の図書館。トランスアメリカ・ピラミッド(サンフランシスコの)等、近未来的デザインで知られる建築家ウィリアム・レナード・ペレイラがデザインを担当した。

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現在工事中の部分も含め、内部が見られる動画。

「Architectuul」によると、ペレイラは当初、台座の上に球状の建物を置き、その中に構造体を配置するデザインを考案していた。しかし構造体がスペースを取りすぎることから外側に配置することとなり、ランタンのようなデザインになったという。

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3.トーレ・ブランカス(マドリード、スペイン)

竣工:1969年
スペイン人建築家フランシスコ・ハビエル・サエンス・デ・オイサの代表作と言われる。実験的かつ「いままでにない」集合住宅として建設された。高さ81m、23階建ての建物には「成長する木」という意味が込められている。建物の主構造が階段やエレベーターで覆われた形が特徴である。

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最上階の円盤型のフロアがUFOに似ていることから近未来を感じさせる。現在は集合住宅およびオフィスとして使用され、屋上は大きなプールのあるルーフテラスとなっている。

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マドリードを一望できる、屋上のプール。

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4.ウエスタン・シティ・ゲート(ベオグラード、セルビア)

竣工:1980年
別名「ジェネックス・タワー」とも呼ばれる35階建てのツインタワービル。セルビア人建築家ミハイロ・ミトロヴィッチが設計を手掛けた。2つのタワーは最上階の橋で繋がれている。26階以下はジェネックス・グループが経営する商業スペースであり、上階はアパートになっている。

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ベオグラード第二の高層ビル(高さ115m)であり、空港から街中に入るときに目に入ることでも知られている。

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5.ラ・トゥーレット修道院(エヴー、フランス)

竣工:1961年
リヨン郊外の丘陵地帯にあるこのドミニコ会の修道院は、スペイン人建築家ル・コルビュジエが生前に手掛けた最後の建築物としても知られている。鉄筋コンクリートによる5階建て建物は、外観だけ見ると「これが修道院!?」と誰もが驚くだろう。

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シトー派のモデルから直接インスピレーションを受け、急勾配の土地に建てられた。丘の頂上に“ベッド”(※コルビュジエによる表現)を見つけ、ピロティによって傾斜を調整している。中庭外壁の3面にガラスを配置し、「波動式ガラス壁」と呼ばれるシステムを初めて実現した。現在は修道院としてだけでなくホテルとしても使われているので、一般ビジターも宿泊可能だ。

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6.ピレリ・タイヤ・ビルディング(ニューヘイブン、アメリカ)

竣工:1970年
竣工当初の名は「アームストロング・ラバー・ビルディング」。「Wallpaper」の報道によると、建築家マルセル・ブロイヤーがアームストロング・ラバー社のオフィスビルとして設計。ビルは上下2つのセクションに別れており、これは上のオフィスと下の研究室との間の音を遮断することを意図したもの。プレキャストコンクリートパネルで作られたファサードが日陰を作るとともに、ダイナミックな視覚的魅力を作り出している。

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1988年にアームストロング・ラバー社がピエリ・タイヤにビルを売却。2000年にコネティカット州の歴史登録財に登録された。2003年にビルを購入したIKEAが建物の一部を取り壊し批判されたが、2019年に建築開発業者「Becker + Becker」に再び売却。2022年5月「ホテルマルセル(全165室、ヒルトンホテルグループ系列のホテル)」としてオープンした。

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7.レ・シュー・デ・クレテイユ(クレテイユ、フランス)

竣工:1974年
丸みのあるブルータリズム建築の代表例の一つが、パリ郊外のクレテイユにある15階建て円筒形の10棟の建物群「レ・シュー・デ・クレテイユ」だ。建築家ジェラール・グランヴァルが設計を手掛けた集合住宅開発地である。

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レ・シュー・デ・クレテイユが俯瞰および敷地内から見られる動画。

「シュー」とはキャベツのこと。公団住宅の需要に伴い、実験的な試みとして建築された。丸いバルコニーは居住者のプライバシーを守るための工夫。現在も集合住宅として使用されている。2008年、フランス文化省はこの建物群を「20世紀遺産」に認定した。

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8.ナショナル・シアター(ロンドン、イギリス)

竣工:1976年
建築家デニス・ラスダンがナショナル・シアターの建築家に指名されたのは1963年。その後予算の修正もあり、13年をかけて完成した。ラスダンが得意とする傾斜や水平面を大胆に取り入れるデザインが、コンクリートの外壁にいかんなく発揮されている。

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チャールズ皇太子が「原子力発電所のようだ(正確には『ロンドンのど真ん中に、誰にも反対されずに原子力発電所を建設する巧妙な方法』)」と皮肉を込めて評したことがあるのは有名な話。長い間ロンドンでもっとも賛否両論のある建築物と言われてきた。現在は演劇の殿堂として、また「(国が資金を提供する)公共事業として建設された最後の偉大な建築」としてロンドン市民に愛されている。

現在も勇ましく空を見上げてそびえ立つブルータリズム建築の数々。建築史に残るスタイルとして、ぜひ押さえておきたい。