リーバイス®︎ 501®︎を通してデニムの歴史を学ぶ

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一

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多くのバリエーションを持つ「501®︎」の中でもスタンダードさが際立つ「MADE IN THE USA 501®︎オリジナルフィット」というモデルで、品番は「00501-2546」。シルエットはヒップにかけてストレートで、裾にかけてやや細くなるテーパードレッグが特徴。フロントには「501®︎」のアイコンであるボタンフライ。しかも14オンスの「赤耳」付きのデニムを使って、アメリカの工場で仕立てている正真正銘のアメリカンジーンズだ。¥19,800(税込)/リーバイス®︎

「大人の名品図鑑」デニム編 #1

スポーティなファッションの流行であまりスポットライトが当たらなかった「デニム」が最近、復活の兆しを見せている。考えてみれば「デニム」は永遠の輝きをもつもので、流行やブームとは異なるポジションにあるものだ。今回はそんな「デニム」の名品の魅力を追う。

「ジーンズをはいて死にたい」と言ったのは不世出のアーティストであるアンディ・ウォーホル。天才ファッションデザイナーのイヴ・サンローランは「ブルージーンズを発明したかった」と自分が求めるスタイルをジーンズで代弁した。

「ジーンズ」「デニム」「5ポケット」など、最近ではさまざまな呼び名があるが、本来「デニム」とは生地=素材を指す言葉で、「ジーンズ」はその生地が形になったものだ。しかし近年、特にアメリカや日本ではデニム生地、あるいはそれに類する生地でつくられた衣類すべてを「デニム」と呼ぶ場合が多い。ちなみに日本人がよく使う「ジーパン」は和製英語。アメリカの軍人=GIがジーンズをはいていたことから「ジーパン=Gパン」と呼んだ。命名したのは上野アメ横にあったジーンズショップ、マルセルの店主檜山賢一氏と言われているが、海外では通じないのでご注意を。

そんな「デニム」の元祖と言える存在が、リーバイス®︎が創造したジーンズである「501®︎」だろう。欧州のババリア(現在のドイツ付近)で生まれたリーバイス®︎の創業者リーバイ・ストラウスが、ゴールドラッシュに沸くアメリカ西海岸のサンスランシスコにやってきたのは1853年のこと。そこで雑貨商を開業したリーバイは、「フォーティーナイナーズ」と呼ばれる金鉱掘りや開拓者のために生地としても販売していたキャンバス地を使った仕事用のパンツを商品化した(後に素材はデニムに変更された)。

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今も残る「リベット」の誕生秘話

そんなリーバイのもとに、生地の取り引き先であるネバダ州リノの仕立屋ヤコブ・デイビスから、工夫を凝らしたパンツが持ち込まれたのは1872年。その2年前、ヤコブの元にある女性客が訪れた。森林労働者である夫のために丈夫なパンツを仕立ててくれという依頼だった。ヤコブは馬のおおい用に仕入れていたキャンバス生地でパンツを製作した。その際に労働者の多くがポケットのところがすぐ破れるという不満を持っていたことを知っていた彼は、テーブルの上に転がっていた鋲=リベットを見て、ポケット口の縫製箇所をリベットで補強するという画期的なアイデアをひらめく。

ポケットにリベットを打った彼のパンツは口づてに評判が広まり、彼はさらにリーバイ&ストラウス社から仕入れた青色のデニム生地を使ったパンツも製作、注文は倍増した。『ジーンズ物語』(三井徹著 講談社現代新書)には最初にパンツを製作した1年半後には、200本以上のパンツをさばけるようになったと書かれている。商売がうまくいくうちにポケットにリベットを打つというアイデアが盗まれ、真似されることを恐れたヤコブは生地の仕入先の社長であるリーバイにパンツを持ち込み、共同で「衣料品のポケットの補強にリベットを使用する方法」に関する特許を申請する。そして1873年5月20日、その特許を獲得した。現在でも世界中で愛用されるジーンズが誕生した、記念すべき日だ。

1886年には同ブランドの象徴である、ジーンズの頑丈さを示す「ツーホースマーク」のレザーパッチが誕生。そして1890年には、生産された単位ごとに付けられる番号であるロットナンバー「501®︎」が初めて商品に付けられる。以来、ディテールやシルエットなどは時代に応じて微細な変化はあるものの、基本的なデザインを変えることなくロングセラーを続ける稀有なアイテムとして君臨している。

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初のリサイクルデニムが登場

リーバイス®︎は、多くの映画にも登場するが、今回は2本だけ紹介する。2019年に公開された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。1969年に実際に起こった女優の殺人事件を題材にして名監督クエンティン・タランティーノが描いた作品で、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが初めて共演したことでも話題を集めた。2人とも70年代を象徴するような衣裳を披露しているが、俳優リック(ディカプリオ)専属のスタントマン、クリフを演じたブラピがはいていたのがリーバイス®︎だ。たぶんモデルは「501®︎」だろう。当時の本場のアメカジスタイルが堪能できる作品としてリーバイス®︎ファンならずとも必見の名画だ。

一方、同じ60年代を舞台にした映画だが、英国で制作された『さらば青春の光』(79年)にもリーバイス®︎が何度か登場する。この作品は当時流行した「モッズ」と呼ばれる若者たちが描かれているが、リーバイス®︎は彼らのアイコンのひとつとしてブランド名を挙げて熱く語られている。

そんなリーバイス®︎から今春発表されたのが、リサイクル可能にデザインされた革新的なモデルだ。「501®︎」として初めてオーガニックコットンと消費者から提供されたリサイクルデニムをミックスした生地が使われている。地球環境を守ることは人類共通の重要事項。それはロングセラーを続ける「501®︎」でも同じこと。「伝統と革新」をコンセプトにする老舗リーバイス®︎の次なる一手として、世界中でスポットを浴びることは必至だ。

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ロットナンバーが刻印されたレザーパッチに弓形の「アーキュエットステッチ」。右ポケットに付けられた赤タグは、1970年代までの「501®︎」にあった「ビッグE」と呼ばれるものが付いている。それまで「LEVI’S」だったものが、この時期を境に「LeVI’S」になるのだが、これは「LEVI’S」。現行モデルでこの貴重なタグが付くモデルは珍しい。

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「501®︎」のアイコンのひとつであるボタンフライのフロント。腰裏にはアメリカ製の証明である星条旗が入ったタグが縫い付けられている。
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501®︎で初めてオーガニックコットンと消費者からリサイクルされたデニムを採用して、それ自体がリサイクル可能な「501®︎」。このデニムはスウェーデンのRenewcell社と共同で開発し、実現された革新的な循環型デニム。素材はコットン60%×ビスコース40%で、ソフトでとてもはきやすい。¥17,600/リーバイス®︎
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レザーパッチにプリントされた「501®︎」のマークに注目を。レジスターマークの周りが矢印になっていて、「リサイクル」を表現しているのだろうか。

問い合わせ先/リーバイス・ストラウス ジャパン TEL:0120-099-501

https://www.levi.jp/

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