かつてはライアン・マッギンレーのアシスタントを務め、次世代を担うフォトグラファーとして注目されるチャド・ムーアの写真展『The Start Of Something』がアニエスベー渋谷店で始まった。キャットストリート側のファサードには、ブルーライトに照らされた瞳を撮影した『GEORGIA BLUE EYE』の大判プリントが貼り出され、外壁には新作写真集『Anybody Anyway』に掲載された作品をコラージュ。店内に足を踏み入れると、3階の展示会場へとさらに作品の数々が誘ってくれる。
20歳の頃からBMXのプロライダーとして活躍し、仲間のBMXライダーの撮影をするうちに写真に夢中になったというチャド。ケガで引退を余儀なくされたことでフォトグラファーへの転身を決め、ライアン・マッギンレーのアシスタントを2年ほど務めたのちに作品の発表を開始した。身近な友人たちを継続的に撮り続け、そのカラフルな画面に被写体との親密さを閉じ込めた表現が世界的に注目を集めている。
新作写真集『Anybody Anyway』を「covid前と後の世界の探究」だとチャドは表現する。拠点とするニューヨークはコロナ禍で極度の外出制限が実施され、それまで日常的に行ってきたポートレイト撮影ができなくなった。その期間には、夜空の写真を自宅から「ポートレイトのように」撮影を続け、新作写真集は、未公開のアーカイブとコロナ禍を経て撮影を再開した友人たちのポートレイト、夜空を収めたナイトスケープで構成されている。展示についてチャドはこう話す。
「最初のイメージとしては、東京のストリートの壁にポスターを貼り付けるように自分の写真を展示するインスタレーションを考えた。ちょうどアニエスベー渋谷店の外の壁の感じだ。ニューヨークにはペタペタとたくさんポスターが貼られているので、その空気を東京に持ってこようと思った。そこからスタートして、アニエスべーのショップで展示が決まったので、写真集のイメージがコラージュとなって店内へと続いていく方法が決まった。多くの友人の姿が会場を埋め尽くしていて、すごくハッピーな展示になったよ」
現在もニューヨークで夜空の撮影を続けていて、秋にはその作品展を東京でも行いたいと意気込みを見せる。
「写真をやっていて一番エキサイティングなのは、もちろん撮影自体が楽しいのは当然なんだけど、こうやって展示をして、自分が撮影した作品によって空間が生まれることに特別なものを感じるよ。ここで展示の設営をしながらそんなことを感じたよ」
撮影後に長い時間をかけてモニターと向き合う作業は「退屈でなくなってほしい時間」だと笑うチャド。レセプションでの短いインタビュー後に、「会えてよかったよ」とハグしてくるお茶目な人柄こそが、魅力的な友人たちのポートレイトを生む原動力に違いない。会場で展示から作品の魅力を体感し、写真集を手に取ってみてほしい。
チャド・ムーア『The Start Of Something』
開催期間:2022年5月17日(火)〜6月8日(水)
開催場所:アニエスベー渋谷店
東京都渋谷区神宮前6-19-14
TEL:03-6803-8170
開館時間:11時〜20時
会期中無休
入場無料
企画協力:Super Labo
※アニエスベー京都BAL店でも6月30日まで開催中
https://www.agnesb.co.jp/