現代は本当に価値のあるものが求められている時代。“一点突破主義”とでも呼べる専門性の高い品が、私たちの生活にフィットする。フード分野ではパン屋ならぬ食パン専門店が街に次々に出没し、カフェではケーキ屋ならぬ生クリーム専門店ができ、いまやモンブラン専門店まである。これらが行列ができるほど評判なのは、「一点勝負できるほど質が高い」「よほど自信があるからこその専業」という判断ができるからだろう。メディアがこぞって取り上げる話題性も、お墨付きに結びつく。
この流れはライフスタイルが激変したコロナ禍を経て、日常を豊かにする本物志向が広がったファッション分野にも通じる。軸の定まった専門ブランドこそがファッション好きの心を掴む。ここに紹介するTシャツ(カットソー)と帽子の2ブランドも、たまらない魅力のある存在だ。なんとTシャツは杢グレーのみ、帽子はわずかな形と色違いで展開するキャップのみというマニアックぶり。実はこの両者を運営しているのはそれぞれ、創業100年以上の杢糸と帽子づくりの老舗である。ユニフォームのように自分定番にするのにふさわしい、出自の確かなブランドなのだ。
今回のファッション連載「着る/知る」では、これらのTシャツのモクティ(mocT)、キャップのオーエイス(O/EIGHTH)をともに取り扱うPRオフィス「にしのや」のスタッフに各アイテムを着用してもらった。代表の西野大士は自身もパンツ専門ブランドのニート(NEAT)を手掛け、大人のファッションアイコンとしてもメディアに顔を出す人物。彼らのパーソナルコーデを眺めつつ、Tシャツとキャップが織りなす世界を見ていこう。
杢グレー糸に特化したモクティ
モクティのスタートは、運営する繊維会社「新内外綿」の創業130周年を記念した2017年。同社によると、日本で初めて杢グレーのオリジナル糸「GR7」を開発したという。霜降りともミックスグレーとも呼ばれるスポーツトレーニングを象徴する杢グレーで、日本のアパレルを支えてきた自負が自社ブランドに込められている。
実店舗はなく購入は公式ECサイトが手軽だが、百貨店などでポップアップショップが開催されることもある。オーセンティックを突き詰めたクオリティを直接肌で感じたい人は、情報をマメにチェックして出かけてみよう。
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顔型に合わせた4型展開のオーエイス
人の顔は丸顔、面長などさまざまで、そこにフォーカスした2022年春夏デビューの帽子ブランドがオーエイスだ。各部位の高さ・幅、ハギの仕方、ステッチ、芯材まで変えて4タイプの顔型に最適化したバランスでつくられている。そのためすべて1サイズ展開でアジャストベルトもつかない。型によって頭周りの大きさも絶妙に調整されているのだ。
かつて大人が都会で被る帽子は中折れハットかハンチング(キャスケット)が標準だった。いまではすっかりカジュアルなキャップに置き換わっている。それでもミニマルモダンな大人服に合うシンプルかつ高級感のあるキャップは市場にわずかしかない。ニッチな要望に応えてくれるオーエイスは帽子好きが見逃せない注目株だ。
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ブランドや店も運営し活動の幅が広いにしのやが、今年移転させた新オフィスを訪れた今回。新しいファッションを伝える彼らの姿勢に改めて惹かれたひとときになった。派手さのないTシャツとキャップを、お洒落に見せる着方のセンスもぜひ真似させてもらいたい。
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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