東京古靴日和#2
6000円で見つけた古い「オールデン」のローファーは復活するのか?

  • 写真・文:勝川永一 
  • 編集:穂上 愛
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シューズデザイナーの勝川永一です。
「東京古靴日和」2回目のコラムです。

私は「H.KATSUKAWA」というシューズブランドを展開するにあたって、イギリスの伝統的な紳士靴の本質的なモノづくりから強く影響を受け、そこをベースに独自の視点を取り入れたシューズクリエイションをしてきました。

アイデアのなかには製品の歴史や古いものを自ら体験している事も非常に重要です。新しい物を生み出すのには、過去のアーカイブを体感している事も大事です。

そんな思いで、今回も古靴を再生して、アーカイブを体験したいと思います。
今回は、「ALDEN(オールデン)」の「ブルックス ブラザーズ別注 タッセルローファー」です。
もちろんUSA製です。

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中古品ですが、6000円という破格で購入したものです。
その破格の理由はこちら。

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そうです。
いわゆるクラックです。革が乾燥し、履きシワにそって亀裂が入っています。
これは、通常ですと6000円の価値すらも怪しいかもしれませんね。

ですが、夏に履くためのローファーとして即購入しました。
なんとか補修できるのではないか? という自信のもとに、です。

とはいっても、ここまでのクラックは私自身も補修が可能か不安がよぎりますが、反面、現在も私が運営している「The Shoe of Life」という名のシューリペアショップの経験上、履けるような状態まで補修できるのではないか?という思いもよぎりました。

ではさっそく、補修に取り掛かりましょう

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まずは市販の皮革用パテで埋めてみようと思います。

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この大胆なクラックを埋めるのには、結構な量のパテを使用します。

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ここから重要なヤスリの作業です。
しっかりヤスリがけしないと、パテが残って凸凹してしまいます。

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30分くらいかけてヤスリがけしました。
なかなか根気のいる作業です。

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しっかりヤスリがけして、表面をフラットにした後に、市販の皮革用顔料で塗装していきます。

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乾いたらその上から靴クリームを塗り、化繊毛の固いブラシで、余分なクリームをふき取ります。

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仕上がりました。
クラックは埋まりました。履けるレベルの修復は出来ているのではないでしょうか。

正直言いますと、このコラムに載せたいがために、かなり急いで仕上げたので、個人的には納得しきれない仕上がりですが、今回は大目に見ることしましょう。

あのレベルのクラックであっても、市販の皮革補修製品を使い約1.5時間でこの程度までは補修ができました。
みなさんも、すてきな古靴がクラックのため格安で売られていた場合は、勇気を持って購入してご自身で補修をされてみてください。
一層の愛着がわくと思います。また物を補修して大事に使うというのは、素直に気持ちが良いものです。

そしてなによりも肝心なのは、この補修したこのタッセルローファーを、どう履くかということ。

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寝かしておいたイギリス軍シェフパンツに、素足で合わせてみました。
ギンガムチェックが春らしくて気持ちが良いです。補修してよかったなと思える瞬間です。
レザーシューズは“どう履くか?”もとても大事です。

次回もまた、靴にまつわる何かを語りたいと思います。

連載記事

勝川永一

シューズデザイナー / レザーアーティスト

靴メーカー勤務後、渡英。ポールハーデン氏に師事したのち、2004年に帰国。その後、修理職人として働きながら、’07年にブランド「H.Katsukawa From Tokyo」をスタート。2016年にNorthampton Museum and Art Galleryにおいて、勝川永一のコンセプチュアルシューズ作品「Return to the Soil」が、東洋人初めての靴作品として、その美術館コレクションに収蔵される。

勝川永一

シューズデザイナー / レザーアーティスト

靴メーカー勤務後、渡英。ポールハーデン氏に師事したのち、2004年に帰国。その後、修理職人として働きながら、’07年にブランド「H.Katsukawa From Tokyo」をスタート。2016年にNorthampton Museum and Art Galleryにおいて、勝川永一のコンセプチュアルシューズ作品「Return to the Soil」が、東洋人初めての靴作品として、その美術館コレクションに収蔵される。