nendo佐藤オオキさんと考える、新型レンジローバーのデザインとは?

  • 写真:筒井義昭
  • 写真:谷井 功
  • 文:和田達彦
  • スタイリング:長山智美
Share:
新型レンジローバーとnendoの佐藤オオキさん、そして佐藤さんがデザインを手がけた家具。左から、「TORII」ラウンジチェア¥669,900、「RING」コーヒーテーブル¥333,300/ ともにMinotti AOYAMA TEL: 03-6434-0142、「Thin Black Line」チェアは参考商品 /nendo house(写真の車両は日本仕様とは異なります)

「迷ったら基本的には面倒くさいほうを選ぶ」、それが僕のルール

いま、日本で最も多忙なデザイナーと言っても過言ではない、nendoの佐藤オオキさん。プロダクトから空間、建築にいたるまで幅広いデザインを手がけ、抱えている案件は400〜500にも及ぶ。多数のスタッフを率いて臨むようなプロジェクトのリーダーを務める際、佐藤さんが大切にしていることは“自分自身がいちばん楽しむこと”。「人それぞれいろいろな考え方があって、みんなに同じレベルで納得してもらうことって難しい。しかしまず自分が率先してテンションを上げることで、これは面白くなりそうだというエモーショナルな期待感が生まれる。プロジェクトにおいては、意外とそういうふうに自分自身が実際に実行することでみんながなんとなく自然と巻き込まれていくみたいな、その感覚はすごい大事なんじゃないのかなと思いますね」。プロジェクトの過程でリーダーはさまざまな選択を迫られるものだが、佐藤さんの場合、まず可能な限り最短距離で選択肢をふたつに絞り、そのうえで迷ったら基本的には面倒くさいほうを選ぶようにしていると言う。「そっちに飛び込んだほうが結果的にうまくいくことが多い。それに、仮にうまくいかなかったとしても、チーム全体であったり自分自身であったりに何かを残してくれるんじゃないのかなという気がします」

cut2_126.jpg
リーダーの資質として必要なのは、ひとつの視点だけで見ないことだと言う佐藤さん。「自分の中にもうひとりの自分がいて、常に対話をしているような感覚。ふたつの視点があるからこそ立体的に物事を捉えることができるのかなと思います」。「Thin Black Line」のテーブルは参考商品 /nendo house (写真の車両は日本仕様とは異なります)

デザインを考えるとき、それが消費者の購買意欲をそそるものであるかどうかはほとんど意識しないと語る佐藤さん。もちろん、結果として売れることは大事なことだが、そこを意識してデザインするのは本質的な行為ではないと言う。「それよりも、お客様が買ったものを生活のどんなシーンで、どう使うだろうかといったことをすごく意識しますね。だから色や形、素材のような目に見える要素の前に、その裏にあるコンセプトや歴史といったストーリー性を重視します」。そのうえで、デザインする際に心がけていることはおもにふたつ。ひとつは、人に気づき、意識変容を与えられるようなものにすること。「今まで当たり前だと思っていたことがじつは特別なものだったり、弱点と思っていたことが長所だったりといった、ちょっとしたきっかけで世界が変わる、そうした体験を提供できるようなものにしたいと思っています」。もうひとつは、いかにシンプルにするかということ。「世の中には複雑な物事が多いですが、それをいかに単純にわかりやすく再解釈してあげられるかというのもデザインの力だと思う。でもそれは簡単そうに見えていちばん難しいことなんですよ」。だから、新型レンジローバーを見た佐藤さんは、まずそのデザインのシンプルさに驚いたと言う。

---fadeinPager---

「新型レンジローバーは、すごくシンプルで本質的なカタチ」

cut3_080_1.jpg
400〜500の案件は、同時ではなく、頭を切り替えながらひとつずつ向き合っていく。「自宅で考えることも多いので、家はすぐにリセットできるように何もないプレーンな空間にしています。移動中はなかなか集中しづらいのですが、レンジローバーの車内は本当に静寂で心地よい。これなら仕事もできそうですね」(写真の車両は日本仕様とは異なります)

「新型レンジローバーは、すごくシンプルだなって言うのが印象的ですね。まるで大きな石から削り出した石像のようだと感じました」と語る佐藤さん。「小さな子どもにクルマの絵を描いてみましょうって言ったときに描く絵がレンジローバーっぽいんじゃないのかなって僕は思ったんですね。そのぐらい本質的な形をしていると思います」。プラットフォームから完全に新設計された新型レンジローバーは、基本性能の向上はもちろんのこと、さまざまな先進技術も追加されている。「機能を削っているわけではなく、むしろ増やしているのにここまでシンプルにできるのはすごい。技術の高さを感じます」。またメカニズムやデザインを一新しつつも、コンセプトを含めたブランドの核となる部分を守っている点に、伝統と革新という相反する要素を併せもつイギリスらしさを感じたと言う。さらに実際に触れ、試乗してみて感心したのは、その滑るような乗り心地と静寂さ。「いい意味でクルマらしくなくて、静かな部屋の中にいるようでした。極端な話、走らずにただ室内でコーヒーを飲んでいるだけでも楽しめそう」。過度な装飾に走らないシンプルなデザイン。それでいて高級感があり、落ち着いて自分だけの時間を過ごせる車内。そこに、佐藤さんはこれからのラグジュアリーの在り方を感じ取ったと言う。「今まではステータスを誇示するために、人からどう見られるかという面が重視されがちでした。それに対し、自分らしい時間や空間を上手に楽しむ。それがこれからのラグジュアリーなのかなという気がします」

cut4_030_1.jpg
新型レンジローバーをイメージして描いたスケッチ。これからのラグジュアリーとは、日常の中で感じるものではないかと言う佐藤さん。「毎日楽しめる、持続する、本当の意味での豊かさ。特にコロナ禍を機にそういうものが求められるようになった気がします。このレンジローバーは、移動する手段としてだけでなく、中に滞在する移動の過程ですらラグジュアリーな瞬間に変えてくれます」(写真の車両は日本仕様とは異なります)

---fadeinPager---

さらに上質になった、新型レンジローバー

新型レンジローバーのプラットフォームには新設計の「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」を採用し、ボディー剛性が先代より50%アップしたほか、ハンドリングや乗り心地、静粛性は向上。またホイールベースが2種類用意され、ロング版にはレンジローバー初となる3列7人乗り仕様も設定された。パワートレインは3リットル直6ディーゼルターボと4.4リットルV8ガソリンターボの2種類のエンジンに加え、プラグインハイブリッドとマイルドハイブリッドも用意。さらに24年にはランドローバー初となるピュアEVモデルも登場予定だ。また新型レンジローバーでは、ジャガー・ランドローバーのビスポーク事業などを担うスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が手がけた「SV」グレードが新たに導入された。ラグジュアリーとパーソナライゼーションを追求し、卓越したクラフトマンシップを体現するSVは、上質感を重視した「SVセレニティー」とダイナミックな「SVイントレピッド」の2種類のデザインテーマを用意。それぞれより上質な素材を用い、電動で展開できるクラブテーブルや冷蔵庫など特別な機能が備えられている。

なお今回の佐藤オオキさんの特別動画も以下のアドレスで公開中。

https://www.landrover.co.jp/vehicles/new-range-rover/Oki-Satos-Gallery.html

cut4_021_1.jpg
「サンクチュアリ(聖域)のような空間」を目指したというインテリア。インストゥルメントパネルまわりのデザインなどにレンジローバーらしさを残しつつ、最新のインフォテインメントシステム「Pivi Pro」のタッチスクリーンなどを装備。上質な素材を用い、モダンに仕立てられている。(写真の車両は日本仕様とは異なります)

023A8417.jpg
ルーフ、ウエスト、シルの特徴的な3つのライン、クラムシェルボンネット、上下分割式のスプリットテールゲート、ボートテールと呼ばれるテーパー状のリヤエンドなど、歴代モデルの特徴を受け継ぎつつも、シンプルさを追求したエクステリア。点灯するまで存在に気づかないリヤランプなど、ユニークかつモダンなディテールも魅力。(写真の車両は日本仕様とは異なります)

023A8400.jpg
1970年に登場した初代(写真奥)から数えて5代目となる新型レンジローバー。ラグジュアリーSUVの祖として、またランドローバーのフラッグシップモデルとして、その核となるDNAを引き継ぎながら、時代に応じて着実に進化を重ねてきた。(写真の車両は日本仕様とは異なります)

新型レンジローバー SV P530 LWB(ロングホイールベース)

サイズ(全長×全幅×全高):5265×2005×1870㎜
排気量:4394cc
エンジン:V型8気筒ターボ
最高出力:390kW(530ps)/5500〜6000rpm
最大トルク:750Nm/1850〜4600rpm
車両価格:¥28,580,000~(税込)
問い合わせ先/ランドローバーコール
TEL:0120-18-5568
www.landrover.co.jp

※写真の車両は日本仕様とは異なります。