『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のあらすじと見どころ。闇から生まれたヒーローが危険な謎に挑むサスペンス・アクション

  • 文:上村真徹
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DCコミックスを代表するヒーロー、バットマンがゴッサム・シティの悪と戦い始めて間もない頃のエピソードを描いた、謎解きサスペンス・アクション『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のあらすじと見どころを紹介する。

【あらすじ】史上最狂の知能犯リドラーが、ヒーロー2年目のバットマンを“謎”で追い詰める

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あるトラウマを背負う青年エドワード・ナシュトンは、覆面の殺人鬼“リドラー”として犯行を繰り返す。© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

1939年にDCコミックスに初登場して以来、バットマンはコミックスや映像などでさまざまなストーリーが織りなされてきた。ゴッサム・シティの名家の御曹司ブルース・ウェインがバットマンになって2年目の知られざるエピソードを、『猿の惑星』新シリーズを手がけたマット・リーヴス監督が映画化した『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が3月11日から劇場公開される。

両親を殺され悪への復讐を誓った青年ブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せ、悪と敵対するバットマンになった。それから1年少し過ぎたある日、リドラー(ポール・ダノ)と名乗る知能犯による連続殺人事件が発生。リドラーは犯行の際に必ず“なぞなぞ”を残し、優秀な探偵でもあるブルースや警察を挑発し続けるのだった。社会や人間が隠してきた嘘を暴き、世界を恐怖に陥れるリドラーは「次の犠牲者はバットマン」というメッセージを残す。やがてその言葉通り、ブルースの過去、さらに彼の父親が犯した罪まで暴かれていく。

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【キャスト&スタッフ】新世代のヒットメーカーと若き名優が新たなバットマン像を創造

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バットマンはゴードン警部補(左)と共にリドラーが仕掛けた謎を追う。© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

これまでティム・バートンやクリストファー・ノーランら多くの監督がバットマンの映像化に挑み、近年もザック・スナイダーが『ジャスティス・リーグ』などで独自のバットマン像を描いていたのが記憶に新しいところ。今回、『バットマン』新シリーズ第1作のメガホンを握ったのは、『猿の惑星』新三部作で往年の傑作を新たに生まれ変わらせた実績を持つマット・リーヴス監督。コミックス初期のバットマンが探偵として描かれていたことに着目し、スーパーヒーロー・ファンタジーの側面から離れた“探偵バットマン”という新機軸に挑んだ。

新バットマンを演じるのは、『トワイライト』シリーズで絶大な人気を獲得し、近年は演技派俳優として評価を高めているロバート・パティンソン。「世捨て人的なロックンローラーの雰囲気を持たせたい」というリーヴス監督の意向に応えながら、家族の死を経験し自分の人生の意味を探そうとしているブルース・ウェインの深い闇を人間臭く体現している。

そんなバットマンを取り巻く人物として、お馴染みのキャラクターが集結。なぞなぞ好きの凶悪な知能犯リドラーにポール・ダノ、後にキャットウーマンとなるセリーナ・カイルにゾーイ・クラヴィッツ、ゴッサムの良心ゴードン警部補にジェフリー・ライト、“ペンギン”こと犯罪者オズにコリン・ファレルと、そうそうたる名優たちが新シリーズの世界観を形作っている。

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【見どころ】善と悪の境界線で揺らぐ、エモーショナルなダークヒーローの覚醒

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謎めいた美女セリーナ・ カイル(右)は、ある目的を遂行するためゴッサム・シティの暗部に侵入する。© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

これまでバットマンをシリーズ形式で描くにあたって、ブルース・ウェインが幼い日に両親を殺され悪への復讐を誓うという“起源”が必ずと言っていいほど扱われてきた。しかしリーヴス監督は今回、「若きバットマンを描き、彼が自身を改善するために努力する物語の流れを伝えたい」という思いから、ウェインがバットマンになって2年目の時代を舞台として設定。そしてこの設定こそが、ウェイン=バットマンのルーツを新たな角度から掘り下げ、従来のシリーズと一線を画す重要なカギとなっている。

両親を亡くした絶望からいまだ抜け出せず、半ば自暴自棄のような状態でゴッサム・シティの自警活動に取り組む──。従来のバットマンよりも若く衝動的なその姿は、一歩間違えたら悪に堕ちるほど危うく、実は彼が立ち向かう冷酷な犯罪者リドラーと紙一重のようなもの。そんな2人がどのように“ダークヒーロー”と“絶対悪”へと分かれていくかが、対比するようにじっくり描き込まれていて興味深い。

一方、後にキャットウーマンとなるセリーナ・カイルとバットマンとの関係性も本作のもう1つのポイントだ。共に辛い人生を歩んできた2人は、戦い方や価値観こそ異なるものの、社会のはみ出し者として根底で共鳴し合っていく。そんな2人が心の深くで結ばれていく様は、ある種のラブストーリーのようでもある。

苦悩する生身の人間たちが、ヒーローへと成長し、あるいはヴィランへと転落していく──。現実世界と同じ地平線に存在し、ヒーロー映画の枠に収まらず人間ドラマとしても上質。さらに“探偵バットマン”を主人公とした謎解きサスペンスとしても楽しめる、スケール満点な衝撃作といえよう。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

監督/マット・リーヴス
出演/ロバート・パティンソン、ゾーイ・クラヴィッツほか 2022年 アメリカ映画
2時間56分 3月11日(金)全国ロードショー

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