ランドスケープやインドアグリーンのプロデュースを行うSOLSOを運営するDAISHIZEN代表の齊藤太一と、そして、洋服やスタイルのジャンルを超えて多くのファッション誌で活躍するスタイリスト、池田尚輝。生活を彩るものを扱うという点で専門性が共通するふたりが、「木漏れ日」を意味する「アルボラリス」という名をつけられたシングルモルト スコッチウイスキー・グレングラントを手に語り合う。
SOLSOが運営する園芸店、川崎のSOLSO FARMで語り合う齊藤太一と池田尚輝のふたり。ドライフラワーやグリーンの鉢植えが並ぶ、明るい陽光が差し込む温室のテーブルのうえには、グレングラント アルボラリスのボトル、そして明るい琥珀色のウイスキーが注がれたタンブラー。スコットランド・スペイサイドで作られるグレングラントはフルーティーな味わいが魅力のシングルモルトだが、なかでもこの「アルボラリス」はフレッシュな香りが特徴だ。
コロナ禍を経て、生活を豊かにすることへの関心が高まる昨今。ニューノーマルという言葉も一般化してわれわれの生活は変わった。都市生活におけるアーバンガーデニングの注目も高まった。なぜグリーンがある生活が豊かであるのか、齊藤に尋ねた。
「グリーンを取り入れる効果については研究が進んでいて、ストレスが軽減され、生産性も上がるというエビデンスも出てきている。地球温暖化を背景に緑を大切にすることもスタンダードになっていますが、僕は人がグリーンを求めるのは、野生を取り戻そうとしているからではないかと思っています」
齊藤がいう、取り戻そうとしている野生とは何を指すのか。
「進化の過程で人間はもとは猿でした。猿は森を彷徨い木の実を探し、食べていた。やがて耕作を身につけ定住を初め、やがて都市へと繋がり現代があります。人間のDNAは縄文時代から変わっていないとする研究もありますが、地球上に人類が増え、地球環境が変わり、温暖化により地球がやばいという状況になった現代、人間に野生の危機感が蘇り、もともと過ごしていた自然の環境を再び求めはじめた。そんな風に僕は考えています」
おおきくうなずき、呼応するように池田が語る。
「齊藤さんがいう野生の感覚というのは、とてもわかります。植物を自分の生活に取り入れて身近なものとして感じることで、外を歩いていても街路樹や公園に生えている植物それぞれの違いに目が行くようになる。自然と親しむ感覚が生まれるんです。また、植物を眺めていると時間の流れが違うようにも感じます。自分たち人間は24時間が1日であることとか、カレンダーによって刻まれた生活をしているけれど、植物から感じる時間の流れはそういう単位に縛られていない。そんな佇まいに癒やしを感じるのかなと思います」
身近に植物があることにより、家を出た時の景色の見え方まで変わる。生活のなかに癒やしがあることだけでなく、世界もより色鮮やかで豊かになる。それはとりもなおさず、人間としての感覚が鋭くなること、すなわち野生を取り戻したということでもある。では、池田の専門である洋服、ファッションが生活に与えるものとはどうか。
「僕が扱う服って、防寒や暑さに対する必需品という側面もありながら、ファッションとして考えると趣味性の高いもの。植物があることで生活が豊かに感じ、癒やされるように、自分の心が満足できる服を着ることは、同じように心の方面に作用するのかなと思います。植物由来の綿や麻は洋服作りに欠かせないもので、植物と服には深いつながりがありますね」
「近いようで近くない、でも近い……」。齊藤はそうつぶやくと、言葉を継ぐ。
「ある本を読んでいたときに、コスメという言葉の語源がコスミック、宇宙という言葉から来ているという話がありました。古代の人間が儀式を行うときに顔に植物をすりつぶしたものや泥を塗り、自分自身を違う自分に変えようとしたことが化粧の始まりだったそうです。ホワイトセージや幻覚成分がある植物で頭をぼやかして、かつコスメをすることで全く違う自分になり宇宙や神、自然と交信したと。いまとなっては植物と衣服は違う意味のもののように思えますが、実は植物や服は祝祭のための装置だったという点で共通する。ルーツをたどると、自然と繋がるという点で両者には同じ意味があるのかもしれませんね」
根源的な部分で植物と衣服に共通項を見出したふたり。池田が手にしたタンブラーのなかで、ハイボールの氷が溶けてカランと音を立てる。グレングラント アルボラリスの印象を尋ねた。
「いままでのスコッチのイメージと異なり、フルーティーで明るいイメージがあります。その一方でウイスキーらしい重層的な味わいの深みも感じますね」
グレングラント アルボラリスをストレートで飲んでいる齊藤も、また同種の感想を口にする。
「パッと華やか、そんな印象が第一にありますね。いままでのイメージと異なると池田さんがいうとおり、山小屋で薪が燃えるのを眺めながら、というよりは、草原やピクニック、新緑の森のイメージです。風を感じるといってもいいかもしれません。僕は遊びでも仕事でも山に入るんですけど、これから山にはいるぞ! っていうときってハイになるんですよ。普段吸わないタバコを吸いたくなって同行している人に一本もらったり、スキットルに入れておいたウイスキーを飲んだり。そんなときにこのグレングラント アルボラリスは最高だと思います」
「ウイスキーは酔うけれど、僕にとっては覚醒アイテムなんです」と池田は言う。
「夜深い時間にウイスキーを飲むと眠れなくなってしまうんですよ。変に活動的になって模様替えをしたくなったり。だから自分としてはグレングラント アルボラリスだったら一杯目とか早いタイミングで飲みたいですね。いまこうして飲んでいるように明るい時間帯でもいいですね、朝食のときにとは言わないまでも、ブランチには合うかもしれません。深くまどろむというよりも、気軽に楽しむ。フルーティーな香りで心が華やぐ感じは昼のテンションにも合うなと思います」
齊藤が続ける。
「映画でも、オフィスのサイドボードからウイスキーを出して、タンブラーについでクッと一口飲んだりするじゃないですか。なんとなく当たり前のように見過ごしていましたけど、あんな風に気持ちのスイッチを入れるためにウイスキーを飲むというのはありですね」
コロナ禍によって生活や仕事のやり方が変化したと見る向きもあれば、いままで隠れていたものが顕在化したという側面もある。生活様式の変化は、実は気がついていなかった要素の再発見ともいうことができる。
陽光のなかでグラスを傾ける齊藤、そして池田が会話をはずませる。グレングラントが叶える新しいウイスキーの楽しみ方がそこにあった。
問い合わせ先/グレングラント https://ctspiritsjapan.co.jp