SNSを中心に反響を呼んだ小坂流加のベストセラー恋愛小説を、『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』などの藤井道人監督が映画化。『余命10年』のあらすじと見どころを紹介する。
【あらすじ】余命10年…限られた時間で紡がれていく愛の物語
不治の病を抱えて余命10年と知った女性が、地元の同窓会で出会った男性と恋に落ちるラブストーリーを、ヒロインと同じく難病を患っていた小坂流加が綴った『余命10年』。2017年の文庫版発売以来、“切なすぎる恋愛小説”としてSNSを中心に反響が広がり、累計発行部数65万部を突破するベストセラーを記録した小説を、『新聞記者』の藤井道人監督が映画化。3月4日から全国で劇場公開される。
数万人に一人という不治の病を患い、余命10年と知った20歳の高林茉莉(小松菜奈)。自らの余命を知った彼女は、生きることに執着しないために「もう恋はしない」と心に決めていた。そんなある日、かつて同級生だった真部和人(坂口健太郎)と同窓会で再会し恋に落ちる。最初から終わりの見えている恋だから、もう会ってはいけない。そう思いつつ、自分の気持ちに嘘をつけなくなった茉莉は、自らが病に侵されていることを隠しながら、どこにでもいる20代の男女のように和人と楽しい時を重ねていく。そうして2人の人生が交わっていくことで、茉莉の残された人生が輝き出す。
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【キャスト&スタッフ】藤井道人が難病ものロマンスをリアルな人生として演出
本作でメガホンを握ったのは、『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』などで緻密な演出力を発揮する気鋭の藤井道人監督。オファーを受けた当初は余命ものや恋愛映画に対してある種の抵抗があったが、小説を読んで「闘病中に加筆された部分の生々しさが凄まじくて、小坂さんが本当に書きたかったことに対する執着みたいなものが感じられた」と見方が変化。単に小説を実写化するのではなく、原作者が生きた証を刻みつつ、ドキュメンタリーとフィクションの融合を目指した。
茉莉を演じるのは、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『糸』などのヒット作が記憶に新しい小松菜奈。茉莉と同様に難病を抱え、小説の文庫化を待たずして亡くなった著者の遺した想いを受け継ぎ、ヒロインを全身全霊で演じる。茉莉と恋に落ち、茉莉を変えていくきっかけを作る和人役には、連続テレビ小説『おかえりモネ』などにも出演し、精力的に活動の幅を広げている坂口健太郎。「生きる意味とかわかんない」と弱音を吐きながら、茉莉との出会いをきっかけに生きる喜びに目覚めていく姿を、優しく誠実に魅せる。
また、2人を引き合わせる同級生役で山田裕貴、茉莉の文才を見出す親友役で奈緒が共演。さらに家族として共に妹の病気と闘う茉莉の姉を黒木華、娘の身を案じつつ背中を押す茉莉の両親を松重豊と原日出子が演じ、2人を取り巻く人たちを含めた家族愛の物語としても描かれている。
キャスト
小松菜奈
坂口健太郎
山田裕貴
奈緒
井口理
黒木華
田中哲司
原日出子
リリー・フランキー
松重豊
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【見どころ】終わりがあるからこそ輝いて映る、大切な人との「普通の毎日」
本作で茉莉と和人が交わす恋模様は、一つひとつのエピソード自体は日常の延長にすぎない。しかし、限られた人生を生きる茉莉と、生きることに迷い自分の居場所を見失った和人という2人が交わることで、ありふれた毎日が信じられないほど輝き出していく。そうした一瞬一瞬が藤井監督ならではの透明感のある映像美で綴られていて、大切な人と過ごす「普通の毎日」が愛おしく感じられる。
そうした映像の空気感を特徴づけるカギこそ、藤井監督がオファーを受けた時に目指した「ドキュメンタリーとフィクションの融合」。その表現手段としてこだわったのが、1年を通して撮影すること。季節によって移り変わる気候や自然、さらに匂いや体温まで映像に刻み込むことで、茉莉と和人の過ごした楽しくも切ない時間や季節ごとに変わる2人の気持ちを丁寧に描き、春・夏・秋・冬の四季になぞらえた10年間の物語にリアリティを宿している。
また本作は、人気ロックバンドのRADWIMPSが『君の名は。』『天気の子』に続いて3度目となる劇伴音楽(実写映画は初)を担当しているのも大きなポイント。本作のために書き下ろした主題歌をはじめ、台詞とぶつかり合って物語を台無しにすることのないよう細心の注意を払いながら、10年にわたる“茉莉と和人の人生”に音で寄り添っている。
当たり前の日常が当たり前ではなくなったいまだからこそ実感できる「普通の毎日」の尊さ──。原作者が実際に余命10年を生きながら命を懸けて込めたメッセージを、四季の移り変わりとともに過ぎていく2人の時間によって胸に焼きつけたい。
予告編
『余命10年』
監督/藤井道人
出演/小松菜奈、坂口健太郎ほか 2022年 日本映画
2時間5分 3月4日(金)より全国ロードショー
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