【らしく、美しく暮らす──。】Vol.4左官職人・久住有生が語るこれからの住まいのカタチ

  • 写真:杉田裕一
  • 文:小久保敦郎

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重要文化財の修復をはじめ、ホテル、個人邸など幅広い分野で左官職人として活躍する久住有生さん。先日オープンしたアトラスギャラリー渋谷にて、白金と青山のレジデンスで予定している作品のこと、そしてこれからの住まいについて聞いた。

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東京の白金に2023年竣工予定の都市型タワーレジデンスを展開する、旭化成不動産レジデンス×ワールドレジデンシャル。コンセプトは「らしく、美しく」。この連載企画では、その地に縁のある方に登場いただき、この特別なエリアの文化的な背景と、街の魅力をひも解いてきた。最終回は、白金と青山のレジデンスで左官職人として関わることになった久住有生さんが再び登場。壁を通して、土地の記憶を紡ぎたいと言う。

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「アトラスギャラリー渋谷」で体感する“真の上質”

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久住有生(左官職人)●1972年、兵庫県淡路島生まれ。祖父の代から続く左官一家で、初めて鏝を握ったのは3歳の時。1995年、23歳で独立。重要文化財など歴史的価値の高い建築物の修復をはじめ、商業施設、個人邸などを多数手がける。日本の左官技術を広く伝えるべく、国内外でワークショップや講演会を積極的に開催。

久住さんがこの日訪れたのは、渋谷マークシティにオープンした「アトラスギャラリー渋谷」。アトラスタワー白金レジデンシャルをはじめ、都心で展開するアトラスの思想を体感できるコンセプトルームだ。そのひとつ、プレミアムルームを見学した久住さんは「素敵な空間でありつつ、すっきりしていますね」とひと言。
「すっきりしているのに素敵だと思わせるのは、とても難しいこと。ひとつひとつのクオリティが高くないと、その雰囲気はうまくつくれませんから。簡素にするという意味ではなく、しっかりつくり込んでいるのにちゃんと馴染んでいる。床や家具、ファブリックなどすべてこだわりがあるのに、調和がとれている。真の上質とは、そういうものだと思います」

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アトラスギャラリー渋谷のプレミアムルーム。ものごとの本質をテーマにしたライフスタイルを提案する。

アトラスは、旭化成グループが培ってきた技術力と、住み心地への追求を反映させた都市型マンション。来年竣工予定のアトラスタワー白金レジデンシャルでは、久住さんが左官の技を駆使してエントランスの壁を塗ることになった。また同年竣工予定のアトラス青山レジデンシャルでも、エントランスに久住さんのアート作品が飾られる。白金は、本連載2回目で紹介した通り、久住さんが心穏やかに過ごせる街のひとつ。実は青山も思い出深い街なのだという。
「何年か青山に住んでいたことがあるんです。第一線の店が集まっていることもあり、日中は人出が多く賑わっている。でも、日曜日の朝はほとんど人が歩いていない。休日にとても気持ちよく散歩できる場所なんです。都心で生活する上で、自分にとってはすごく贅沢な時間でした」

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コンセプトルームの廊下を歩く久住さん。「上質な世界観が伝わる空間ですね」
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ダイニングルーム。休日はパーティを開きたくなる優雅さ。
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広々としたエントランス。シューズインクローゼットを備える。
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キッチンにはアイランドカウンターとワインセラーが。

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これから求められるのは、土地の記憶を継承する住まい

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アトラスタワー白金レジデンシャルの縮尺模型。ゲートからの長いアプローチで邸宅感を演出する。
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エントランスは開放感があるガラス張りに。久住さんの塗る壁が、その一角を覆い尽くす。

芦野石のゲートからエントランスまで、およそ18mのアプローチがのびるアトラスタワー白金レジデンシャル。久住さんが塗る壁は高さ4mほど。「マンションのエントランスではこれまでにない規模かも」というスペースがある。この白金の地に、建物の基盤づくりのため地面を掘削していた段階で、久住さんは一度訪れている。それは、土の様子を見るため。
「例えば昔からの建築の壁を修復するとします。その時、自分が使いやすい土を持ち込むのではなく、できるだけその地域にある土を使うのが僕の基本スタイルです。古い建物ほど近隣で手に入る材料でつくられていることが多いし、同じようにして未来へつなぐほうがいいと思うから。都心の建築物でも、なにかできることがあるのではと考えました」

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アトラスタワー白金レジデンシャルの建設中、現地で土をチェックする久住さん。左官の仕事は壁を塗る前から始まっている。

これまで国内外で数多の土を観察し、土地の歴史と向き合ってきた久住さん。白金の現場で触れた土はどうだったのだろうか。

「これまでの経験上、少し高い場所にある土地だったり、かつてのお屋敷街、古いお寺があるような場所は地盤がいい傾向にあります。だから白金もいい土かな、という予感はありました。深く掘った場所に降り、実際に見てみると、とてもきれいな土で。例えば塊を手で剥がすと、きれいな土肌がいくらでも出てくる。そんな土でした」
工事中に出た土を採取して、保管。エントランスの壁を塗る際に、その一部を混ぜて使うことにした。

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地面の遥か下で眠る土には、その土地の記憶が刻まれている。

マンションが立つ土地の土を壁の材料にすることについて、久住さんはこう話す。
「素材としていいな、というのがひとつ。ただそれ以上に、住む人に少しでもこの土地のことを伝えられれば、という思いがあります。人の寿命に比べると、土は大地の中で気が遠くなるような長い時間を刻んでいる。自分たちが生まれるずっと前からそこにある土を壁に使うというのは、連綿と続く土地の記憶を表に出すこと。だから見るだけでなく、触って感じてほしい。触れた時の感触も、できるだけ近いものにしたいと考えています」
昨今は家で過ごす時間が増え、自分らしい生活とはなにか見つめ直す人が多いという。らしさとは、大地に張る根のようなもの。ただの住まいではなく、土地の記憶を継承する住まい――。これからの時代には、そんな住まいがしっくりとくるのかもしれない。

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アトラスタワー白金レジデンシャル

所在地:東京都港区白金1-343-16(地番)
交通:東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪」駅徒歩3分
構造・規模:鉄筋コンクリート造、地上23階、地下1階
総戸数:94戸 ※非分譲住戸29戸、単独分譲住戸4戸含む
間取り:1DK~3LDK
専有面積:33.38~114.12㎡
竣工予定:2023年9月中旬(予定)

アトラス青山レジデンシャル

所在地:東京都渋谷区渋谷2-5-13,14(地番)
交通:東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線「表参道駅」徒歩8分、
東京メトロ・東急東横線「渋谷駅 」(B4出口)徒歩8分、JR線渋谷駅徒歩9分
構造・規模:プレストレストコンクリート造、地上14階、地下1階
総戸数:61戸 ※非分譲住戸33戸、単独分譲住戸2戸含む
間取り:2LDK・3LDK
専有面積:55.05m²〜81.27m²
竣工予定:2023年7月中旬(予定)


※掲載の情報は2022年3月現在のものです。専有面積や間取り、共用施設、スケジュールなどは、今後変更となる可能性があります。

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問い合わせ先/アトラスタワー白金レジデンシャル
TEL:0120-982-562
www.afr-web.co.jp/atlas/mansion/shirokane/concept/index.html

アトラス青山レジデンシャル
TEL:0120-982-562
www.afr-web.co.jp/atlas/mansion/aoyama/index.html

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