日本は破綻するから買えない? 「国債」の大きなメリット3選

  • 文:川畑明美
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国の借金は、GDP対比200%を超しているから、国が破綻するリスクが怖くて個人向け国債を買えないという方がいる。本当にそうなのか? 国債について考察してみよう。monsitj-istock

国債を活用することをおすすめすると、「日本が破綻しないか心配」と言われることがある。現在の日本の借金は対GDP対比200%を超えている。だからそんな心配をするのだろうが、それは心配するポイントがずれていると言えよう。


そもそも日本が破綻したら、あなたの預金の価値が大きく下落する。国が破綻するとハイパーインフレが起きる。ハイパーインフレが起こって物価が上昇すると、いままで1個100円で買えたパンが1個5万円になってしまったりする。そうなったら、預金していても国債で保有していても同じことだ。国債を買わずに預貯金しているのならば、心配しているポイントが違うということだ。


ちなみに銀行も顧客から集めた預金で国債を購入しているのだ。国債が心配というのならば預金もできなくなってしまう。個人向け国債は、リスクを取らない運用をする場合にとても良い金融商品だ。特に資産をたくさん持っている方には、お勧めしている。その理由は3つある。

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個人向け国債はリスクなく運用できる

1)1000万円以上でも元本保証になる

預金保険の保護範囲は、1人につき1銀行で1000万円までだ。一方、個人向け国債は1人でいくら保有していても政府が元本を保証している。例えば3000万円保有していても元本保証なのだ。


2)個人向け国債の変動10年は、金利が上昇してもメリットがある

銀行預金の金利が変動しないので「金利なんて変わらない」と、思っている方も多い。ところが、個人向け国債は割と金利が変動しているのだ。0.09%くらいに上がることもある。変動10年の国債は、半年ごとに適用金利が変わり、その時々の受取利子の金額が増加することもある。最低金利保証は0.05%まで、高値では基準金利×0.66まで保証される。


例えば2015年10月に発行された変動10年の国債を購入していたとする。2015年10月16日から2016年4月15日の基準金利は0.42%だった。この半年間の適用金利は0.28%。その後、2019年の10月16日から2020年4月15日の基準金利は-0.27%だったが、最低金利保証で0.05%の金利が適用になっていたのだ。


3)メガバンクの定期預金より常に高い

現在のメガバンクの定期預金は、0.002%だ。個人向け国債は基準金利がマイナスでも0.05%最低保証があるのだから銀行預金よりも常に利率が高いということ。さらに政府が元本を保証しているので安心だ。

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個人向け国債のキャッシュバックキャンペーンに気を付ける

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国債のメリットをエサに営業を仕掛けてくるケースもある。美味しい話にはウラがあることも考えよう。simon2579-istock

ただし個人向け国債を利用したちょっと強引な販売方法には注意したい。個人型国債は、よく販売キャンペーンをしている。金利が低いのにキャッシュ・バックキャンペーンなどなぜしているのか、疑問に感じるだろう。実は、国債が売れると財務省から販売手数料が金融機関に支払われる。この販売手数料分をキャッシュバックしているのだ。販売手数料をキャッシュバックするのは問題ないのだが、個人向け国債を販売した1年後に新たなセールスが入るのが問題なのだ。


個人向け国債は、購入して1年経過すると直前2回の税引後利息を支払うと元本で換金できるようになる。この換金できるようになった頃、別の商品に乗り換えるセールスをするのだ。利息を2回分支払うのは嫌だと顧客が換金をしぶると、最初のキャンペーンでその分キャッシュバックしているので換金しても損にはならないと、セールスする。

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手数料の高い金融商品をセールス

乗り換えセールスするのは、販売手数料や信託報酬が高い投資信託だったりファンド・ラップだったりする。ファンド・ラップとは、顧客の運用方針に従って証券会社が選んだ資産配分で運用してくれるサービスだ。こちらも手数料がかなり高い。


ただし、このようなセールスが横行しているため昨年、財務省は金融機関に支払う手数料を引き下げた。さらに残高に対して0.02%を管理手数料として金融機関に支払うようになったのだ。その影響か国債のキャッシュバックキャンペーンを取りやめている金融機関が多くなっているようだ。


ただしキャンペーンが全くなくなったわけではない。国債を購入するのならば、ネット証券でご自身の意思で購入するとよいだろう。ネット証券でも国債のキャッシュバックキャンペーンをしている。国債は金利も銀行預金よりも有利だから普通預金に眠らせているのならば、国債も検討するといい。

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万が一の時の資金を確保するのに最適

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病気やケガの時に必要な資金を分けて確保するのに個人向け国債の変動10年は最適だ。kazuma seki-istock

筆者が国債を活用する本当の理由は、「お金をわけて保管できる」ことだ。特に万が一のときのお金を国債に変えておくと安心だ。「現役世代ならば100万円程度の貯金があれば大抵の病気に対処できる」と前回の記事でも書いているが、医療保険を解約したとき、万が一のときのお金を確保するのに個人向け国債の変動10年はお勧めだ。


普通預金ではすぐに下ろせるので、つい使ってしまうリスクもある。個人向け国債の変動10年で保有していれば、満期の10年まで「ついつい使ってしまう」ことは避けられる。そして個人向け国債は、満期を待たずに「中途解約することが可能」だから、「その間に大きな病気をしてしまったら使えない」という心配も無用だ。


購入後1年が経過していないと中途解約できないが、1年後に保険を解約するのならば何の心配もない。医療保険の代わりに100万円ほど変動10年の個人向け国債を購入しておけば、安全に「万が一のときの資金」にできるのだ。もちろん、途中解約には2回分の税引き前利子を返金する必要があるが元本割れはしない。


今購入できる第143回個人向け国債の変動10年の金利は、0.11%(税引前)だ。万が一のときの資金として運用するのは魅力的ではないだろうか?

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/