天然ふわくしゃパーマと漫画原作のテレビドラマに見えた、ヒットの法則

  • 文:小林久乃
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『ミステリと言う勿れ』は毎週月曜夜9時からフジテレビで放送中のテレビドラマ。(C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

放送中の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)がそこかしこで好評である。どんな役柄もすべて自分の中に吸収、発散をして視聴者の心を仕留めていく、菅田将暉が主演。しかも人気絶頂期に愛する人と結婚したばかり。これだけでも視聴欲はそそられるのに、今回は物語が本当に面白い。

大学生・久能整(菅田)が、独特の観察眼と知識で刑事事件の真相を見抜き、ラストシーンで大逆転劇を見せるのが作品の醍醐味。第一話では整を犯人扱いしていた警察たちも、彼の推理には舌を巻き、今では完全に頼り切り状態なのだ。集合知をたった一人の青年が覆すとは、爽快そのもの。見ていてワクワクする……はて? 何だろう、この既視感……と、気付いたのが、整のアフロヘアのようなふわくしゃ天然パーマ。思えば、天然パーマが出演して、主役や準主役を演じたドラマは確実にヒットしているではないか。

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“天パ”というコンプレックスと日々葛藤する

ここ数年でドラマオタクの私が印象的だった、(勝手に)天然パーマドラマを回想していこう。まずは前述の『ミステリと言う勿れ』。警察も感服するほどの事件解決逆転劇を繰り広げていく整には、天然パーマというコンプレックスがある。バスジャックに巻き込まれている最中でも、サラサラヘアの人物を見かけるとつい本音が湧き上がってしまう整。

「それ、地毛ですか? いいですね」

「夢に見る髪ですよ」

通販でストレートヘアになれるヘアアイロンを見つけて、果敢にチャレンジするけれど敢えなく玉砕。同じように天パに劣弱意識を持っていたのは、『凪のお暇』(TBS系・2019年)の大島凪(黒木華)。毎朝、1時間もかけてヘアアイロンでボンバヘアを必死に伸ばして、出社。周囲の人間関係に馴染めず、恋人ともうまく行かず……というところで、思い切って退職。この瞬間、彼女はヘアアイロンから離れて、天パを隠すのをやめている。

二人に共通しているのは、パーマヘアが強烈であること。他のビジュアルが印象に残らないほど、アイコン化していた。大阪のおばちゃん一歩手前のグリグリ感である。

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パーマヘアも武器にする学園の王子たち

パーマヘアが目立ったドラマといって忘れてはならないのが『花より男子』(TBS系・2005年)の道明寺司(嵐・松本潤)。この作品、何度か映像化されているけれど、松潤のふわくしゃパーマヘアが太眉と一緒にしっくりきていた。彼は『きみはペット』(2003年)の合田武志役でも、パーマヘアだったことも思い出す。そして『花より男子』の続編として放送された『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系・2018年)では、神楽期晴(King & Prince・平野紫耀)も、道明寺スタイルを継承するかのように、ふわくしゃパーマだった。『花晴れ』、毎週夢中で見ていたのだけど、続編をいまだに待ち侘びているのは私だけだろうか。あの消化不良のラストシーンを何とかしてくれ。

両者、学園で生徒たちを牛耳るトップオブトップ。「さすが!」と敬服するのは、天然パーマを完全に手中へ収めていること。コンプレックスなんてもつわけがなく、むしろカッコ良さに変換しているのは高度のビジュアルありきである。隣の席の同僚が急にふわくしゃにしてきたら、完全に社内外では浮くし、あんまり飲みには行きたくないもの。

と、私たちを魅了し続けている作品たち。すべて、漫画原作なのである。衛星放送だけど何度か映像化されている『アフロ田中』(WOWOW)も同じく。漫画原作、天然パーマ。この二つの武器が揃った瞬間、作品はパーマヘアのうねりのごとく、人気が爆発するのかもしれない。他に、天然パーマをチャームポイント化している面々といえば、俳優の大泉洋や、タレントの片桐仁も脳裏に浮かぶ。でも今回は、あくまでも役柄として天パを使っているという前提で選んでみた。個人的セレクションであること、お目こぼしくださいませ。

小林久乃(こばやし・ひさの)

エッセイスト、コラムニスト、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載をしながら、単行本、書籍も制作。狙った仕事は逃さない。3月に人間関係の距離感をテーマにしたエッセイを発売予定。ドラマオタク、静岡県浜松市出身、40代、独身。

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