宇梶剛士が作・演出を務めた舞台『永遠ノ矢〜トワノアイ』の上演記録映画が札幌で上映

  • 文:野村萌々
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アイヌ民族がルーツの宇梶剛士が作・舞台演出・監督を手がけた舞台の記録映画が公開に。

本映画『永遠ノ矢〜トワノアイ』は昨年7月1日に釧路で行われた舞台の上演記録だ。2019年東京高円寺で上演された宇梶剛士主催『劇団パトスパック』による舞台『永遠ノ矢』は1週間という短い期間で2000人近い来客を記録、また多くの北海道やアイヌ関係者が訪れた。その中で北海道でも上演してほしいとの声が相次ぎ、2021年・夏札幌を始め、道内7か所での上演を予定。しかし、コロナ禍の影響で釧路・平取・北見の3か所のみの公演に。観ることが出来なかった北海道の人のため、今回の映画が企画された。

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物語は、遠い昔(1669年)、アイヌの弓の名手・イソンクルは、松前藩の鉄砲隊を率いる大将を射止めんがために木立の大木の上にいた。イソンクルは矢筒に収められた矢の1本を掴むと他の矢は捨ててしまう。そして決戦に臨むイソンクルは弓に、唯1本だけの矢をつがえるが、その矢は敵の大将ではなく、空に向かって放たれた。残されたのは空っぽの矢筒だけ。この負の遺産のような矢筒が代々受け渡されてきて。今は、東京で生まれ育ちながらも亡き父の影を追うように北海道にやってきて暮らしている菅野家の長男一矢の手にある。そこに父親の墓のことで一矢を訪ねてやってくる次男・海を中心に繰り広げられる。

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それぞれが考えさせられるストーリー

東京でぼんやり暮らすひとりの若者。家を出て北海道で暮らす兄を探しに訪れた北の大地で アイヌに起因する自身のルーツを知るとともに『アイヌ文化の魅力』や『アイヌの人々の優しさ』を体感。しかし、同時にその裏にある『アイヌの悲しい歴史』や『今も根強く残るアイヌ差別』を知ることとなる。そして『アイヌであることの葛藤』を抱えながらも未来に希望をもって生きる人々やアイヌの血は流れていなくても、アイヌ文化の伝承に携わる若者とのかかわりの中で自身の生き方を見つめ直し、短い期間の中で人間として成長を遂げるストーリー。

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『永遠ノ矢(トワノアイ)劇場版』
監督/上林昌嗣
出演/宇梶剛士、金井良信ほか 2022年 日本映画
2時間08分(予定) 3月12日よりシアターキノにて上映