味わい深い出汁とスパイシーなカレーの融合にやわらかな麺が絡む、京都のカレーうどん。専門店まであるほどの愛されぶりだ。しんしんと冷える冬、この5軒へ駆け込もう。

てんぐうどん店／元田中

開店と同時に人が吸い込まれるように暖簾をくぐり、店内はたちまち満席に。「てんぐうどん店」は創業を戦前に遡る、地元密着型のうどん屋だ。常連客が慣れた様子で注文するメニューの一番人気は「カレーうどん」。昆布、イワシ、鯖、ウルメなどのブレンド削り節で引いた出汁に、奥行きを出すため独自の工夫を加え、カレー粉は市販のものを使用。「うちは毎日来られるお客さんもいるから、毎日食べても飽きない味にしています」と、3代目の芝山晃一さんは語る。出汁の効いたカレー餡に、京都らしくたっぷりのお揚げとネギと、豚肉入り。そこに、箸で持ち上げれば切れそうなほどやわらかい麺が絡む。スパイシーな中にも優しさを感じる味わいで、最後の一滴までたちまち完食。昼頃には売り切れる「いなり寿司」や「赤飯」とともに、飾らない京都の味を堪能したい。

おかる／衹園

1925年の創業以来、祇園の真ん中に暖簾を掲げ、界隈で働く人や芸舞妓さんにひいきにされてきた老舗。自慢の出汁は利尻昆布の一級品と、鰹、鯖、ウルメ、メジカの削り節を使って毎朝、引く。牛肉と九条ネギたっぷりの「肉カレーうどん」が定番だが、近頃はそこにミックスチーズをトッピングした「チーズ肉カレーうどん」のファンが増加中。濃厚なチーズが出汁とカレーと溶け合い、なんともまろやかで深みのある味わいになる。「採算度外視、出るほどに赤字です」と女将さんは苦笑いするが、なるほどクセになる一品だ。

六条 招福亭／新町六条

宇治茶を練り込んだ翡翠色の茶そばが名物のこちらは、創業1938年の隠れた名店だ。昨秋、従来の店舗の向かいに移転。新しくカウンター席が増え、より気軽に入れる雰囲気になった。人気が高いカレーうどんは、出汁や麺の風味を楽しめるように辛さを抑え、餡は濃いめ。愛知の小麦を使ったやわらかい自家製細麺と好相性だ。バリエーションも豊富で、サクサクに揚げた豚が肉厚な「カツカレー」はボリューム満点。

岡北／岡崎

平安神宮の東側に立地。竹や唐紙を使った和モダンな空間ながら、創業は1940年。一子相伝で代ごとに磨かれてきた味と技は、厳選素材で引いた出汁と四国産の挽きたて小麦粉を使用した自家製麺に集約される。出汁の風味もさることながら、注文ごとにゆでる、つるつるでしなやかな細麺は他では味わえない。5種揃うカレーうどん、まずは「甘ぎつねカレー」をお試しあれ。箸で持ち上げるとずっしり重いお揚げは、噛むと甘い出汁がじゅわっとあふれ出し、カレーの辛みと絶妙にマッチ。京都ならではの味わいだ。

味味香／衹園

1969年に屋台から始めたカレーうどんの専門店。木屋町で深夜まで営業していたが、もっと多くの人に京のカレーうどんを味わってほしいと八坂神社並びに移転した。濃厚な出汁に、11種類を調合したオリジナルスパイスを加え、出汁で溶いた片栗粉でとじる。麺はソフトな中にもコシのある中太。創業以来、カレーうどんに合う出汁、スパイス、麺を常に研究し、進化させてきたゆえの完成度の高さだ。麺の太さやカレーの辛さを選べたり、オリジナル薬味を加えられたりと、専門店ならではのアレンジの自由さも楽しい。