写真家・野村佐紀子が故郷の下関で初の大規模な個展「海」を開催

  • 文:上村真徹

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Pen本誌連載「創造の挑戦者たち。」の撮影も行う野村佐紀子の展覧会「海」が、2月11日から山口県下関市で開催される。©️Sakiko Nomura

荒木経惟に師事し、男性ヌードを中心とした湿度のある独特な作品世界を探究する写真家・野村佐紀子。東京を拠点に作品を発表し続けている彼女が、故郷の山口県・下関市で初の大規模な個展「海」を2月11日から下関市立美術館にて開催する。

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下関の海の情景は、写真家・野村佐紀子の感性の源でもある。©️Sakiko Nomura

海に面した下関市綾羅木で育った野村は、幼少の頃から西日が海の夕闇に吸い込まれていく風景を眺めながら「美しいものが一番悲しい」と感じ、孤独と不安に襲われていたという。そんな野村が故郷で開く個展は、数々の作品や感性の源に触れる場であり、故郷の海や夕日の記憶が野村の闇の表現につながっていることが本展を見ることでよく分かる。

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下関市内で撮影された作品も数多く展示される。©️Sakiko Nomura

今回の写真展で展示されるのは、初期から現在までの代表作約150点。代名詞ともいえる男性ヌードや、“美しさと痛み”“生と死”を想像させる供花(お供え花)、さらに現在は東京を拠点とする野村の目でとらえた故郷・下関の情景が紹介される。また、野村の写真展を数多く手掛けてきた藤木洋介がゲスト・キュレーターを務め、長辺3mを超える大画面から鑑賞者との距離を縮める親密なサイズのものまで、変化に富んだ構成となっている。

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野村が近年精力的に取り組んでいる供花の新作。美しさと痛み、生と死、そしてどこかエロスを想像させる。©️Sakiko Nomura

なお、写真展と併せて2月11日13時30分から野村と藤木洋介とのアーティストトーク、3月5日18時から野村と芥川賞作家・田中慎弥との対談イベント、3月13日13時30分から山口県立美術館副館長兼学芸課長の河野通孝による講演会「野村佐紀子の写真について」が、それぞれ下関市立美術館にて開催される。

【展覧会概要】

会期:2022年2月11日(金・祝)~3月27日(日)
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
会場:下関市立美術館
観覧料:一般¥1,200、大学生¥960(18歳以下無料)