イギリスに住むアフリカ系、ジャマイカ系といった移民の黒人層が好むポピュラー音楽は、黒人文化が音楽界全体をリードするアメリカとは趣味が異なるようだ。アメリカではヒップホップでもR&Bでも最先端の若いパワーがシーンの中核だが、イギリスでは1970年代のアメリカンソウルやジャズ・ファンクが根底に流れている。オージェイズらのフィリー・ソウルにせよ、マーヴィン・ゲイらのモータウンにせよ、気だるくムーディなテイストがイギリスの移民文化に合うのだろう。近年でこそ、一般人にはヒップホップと区別されにくいラップ入りデジタル音楽のグライムに勢いがあるものの、体温のある生演奏によるソウル音楽はこの地にしっかりと根づいている。
71年創業で昨年で50周年を迎えたイギリスのマルベリーと、ジャマイカ移民2世のファッションデザイナーのニコラス・デイリーとがコラボしたカプセルコレクションは、そんなソウルフルな味わいに満ちたレザーグッズだ。シボ革やスエードを曲線でカットして革紐で縫い付けるクラフト手法は、70年代に流行したもの。非西洋的な手づくり服を着たヒッピーカルチャーともリンクする。デイリーはファッションスクールの名門「セントラル・セントマーティンズ美術学校」を卒業した正統派デザイナーで、ファッションショーにミュージシャンを起用するほどの音楽好き。彼は今回のコラボについて以下のように語っている。
「これまで一緒に仕事してきたミュージシャンたちを想いながら、彼らがステージで身に着けるアクセサリーをイメージしてデザインしました。英国が誇るクラフツマンシップやサステナビリティへの取り組みなどのマルベリーの姿勢にも深く共感しており、一緒にコラボレーションできたことをとても光栄に感じています。長年愛用できる素晴らしいアイテムを生み出すことができました」
デイリーが言うようにこれらのバッグ類にはタイムレスな輝きがある。そして同時に、70年代が旬のファッショントレンドである現在の時代感ともリンクする。パンデミック以降に世の中が求めるパーソナルな幸福感には、温もりのある音楽、そして温もりのあるバッグこそがふさわしいのかもしれない。
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マルベリー公式サイト
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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