年末年始は、ウイスキーで世界を巡る

  • 選・文:西田嘉孝
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世界でも新たな変異株が広がりを見せるなど、コロナ禍は今年も収束せず、心置きなく海外に行けるのはまだ少し先になりそうだ。

ここでは、ウイスキーファンにはお馴染みのものから知られざる実力派まで、スコットランド、アイルランド、アメリカ、台湾、オーストラリアの「いま飲むべき」ウイスキー5つを紹介する。年末年始のゆったりとした時間にウイスキーを飲みながら、気分だけでもワールドツアーを味わってみるのもよいだろう。

<スコットランド>

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パッケージやラベルには鮮やかなコーラルカラーと椰子の木のモチーフを採用。カリブの陽気な空気感を表現した印象的なデザイン。

いまや世界の様々な国でウイスキーがつくられているが、長きに渡りその品質において他国のウイスキーを圧倒してきたのが、スコットランド産のスコッチウイスキー。そんなスコッチのシングルモルトを代表する銘柄として、必ず名が挙がるのが「ザ・グレンリベット」だ。

政府がウイスキー税を導入したことから、100年以上に渡って続いたスコッチウイスキーの密造時代。スペイ川流域のスペイサイドエリアのなかでも多くの密造者が集ったリベット谷において、ウイスキーづくりの名人として名を馳せたのがグレンリベットの創設者であるジョージ・スミスだった。スミスは1824年にライセンスを取得し、英国政府公認第一号蒸留所として自らが設立したグレンリベット蒸留所を登録。スコッチウイスキーの新たな時代を築くとともに、国内外にその名声を広めていった。現在はシングルモルトスコッチのスタンダードとして、世界の酒好きたちに愛されるザ・グレンリベット。そんな同ブランドの革新性を味わえるのが、「ザ・グレンリベット カリビアンリザーブ」だ。

その名の通り、カリブ海周辺の島々で生まれるラムの熟成に使用した樽を、フィニッシュ(仕上げの熟成)の一部に使用。ザ・グレンリベットらしいフルーティで華やかな香りの後から次々に現れるのは、バナナやマンゴーのような南国のフルーツ。飲めば、ホワイトチョコやトフィーを思わせる濃厚な甘さとほどよいスパイス、そしてトロピカルフルーツのフレーバーがバランス良く響き合う。年末年始のパーティや正月のお祝いなど、慶事の席にもよく似合いそうな華やかな味わいの一本だ。

ザ・グレンリベット カリビアンリザーブ ※Eコマースチャンネルにて限定発売
700ml アルコール度数40% ¥5,610(税込、参考小売価格)

ペルノ・リカール・ジャパン
https://www.theglenlivet.jp/our-whisky/cc-cr.html

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<アイルランド>

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2022年のファーストリリースが待望される蒸留所。シングルバッチは一度の仕込み、ダブルオークは二つの樽を意味する

かつてはスコットランドとならぶウイスキー大国でありながら大きく衰退し、1970年代には国内に2つの蒸留所を数えるのみとなってしまったアイルランド。しかし、世界的なウイスキーブームを背景に見事な復権を遂げ、現在は新たなウイスキー蒸留所が続々と誕生している。そのうちの一つが、2018年に設立されたクロナキルティ蒸留所。アイルランド南部のコーク州にある海沿いの街クロナキルティで、8世代に渡って農場を営んできたスカリー家の人たちが創業した蒸留所だ。

農家の蒸留所らしく、自らの農場や近隣で栽培した自社畑産の大麦を使用。大麦麦芽(モルト)に加えて未発芽の大麦なども原料とし、銅製ポットスチル(単式蒸留器)で3回の蒸留を行う、アイルランド伝統のシングルポットスチルウイスキー(ピュアポットスチルウイスキー)を生産する。蒸留開始は2019年。スコットランドと同様に、アイルランドでも3年以上の熟成が義務付けられているため、実際にクロナキルティで蒸留されたウイスキーが飲めるのは2022年以降となる。

とはいえ、「クロナキルティ シングルバッチ ダブルオーク」を飲めば、このアイリッシュの新星の実力が伺い知れる。アイルランド国内の蒸留所から仕入れた10年熟成のグレーン原酒と4年熟成のモルト原酒をブレンドし、新樽とボルドーワイン樽で3〜6カ月後熟成させたアイリッシュブレンデッド。穏やかな木の香りやフルーツのキャンディ、バニラや粒コショウを思わせる香りと、ジンジャーやリンゴ、芝生やココナッツを思わせるフレーバー。アイリッシュらしい軽やかさも好印象な一本だ。

クロナキルティ シングルバッチ ダブルオーク
700ml アルコール度数43.6% オープン価格

コートーコーポレーション TEL:0798-71-0030

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<アメリカ>

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蒸留所にはマスコットのチーフピッグも。500エーカー(東京ドーム43個分)にも及ぶ広大なファームで実験的なライウイスキーづくりを行う。

自由な発想でウイスキーづくりをおこなう蒸留所が各地に誕生するなど、クラフトウイスキー大国となっているアメリカ。とはいえ、アメリカンウイスキーの筆頭といえば、やはりケンタッキー州でつくられるバーボンウイスキーだろう。バーボンウイスキーの香ばしい風味やバニラのような甘みは、マッシュビル(原料穀物の配合比率)の51%を占めるトウモロコシと、オークの新樽での熟成に由来する。一方、ライ麦を主原料とするライウイスキーもまた、長きに渡り世界で愛飲されるアメリカ生まれのウイスキーだ。

そんなライウイスキーの可能性に賭けた、故デイヴ・ピッカレル率いるチームが2007年に設立したのが「ホイッスルピッグ」。蒸留所があるのは、バーモント州ショアハムの500エーカーにも及ぶファームの一角。原料となるライ麦の栽培から樽材となるオークの調達までを敷地内で行うなど、ファーム・トゥ・グラス(農場からグラスまで)の理念を実践したウイスキーづくりを行う。

アメリカの連邦アルコール法では、原料の51%以上にライ麦を使うことがライウイスキーの定義の一つされるが、ホイッスルピッグでは原料のほぼ100%にライ麦を使用。さらには、ライウイスキーでは珍しい長期熟成や様々な樽での熟成も行うなど、ライウイスキー専門ブランドとして革新的な取り組みを行ってきた。

「ホイッスルピッグ10年 スモールバッチ・ライ」は、そんなホイッスルピッグの原点とも言うべき一本。香りはタバコやオーク、かすかなシトラス。ライウイスキーらしいリッチでスパイシーな香味を纏い、味わいは驚くほどにパワフルなのに飲み口はスムース。寒い冬にストレートやロックで楽しみたい、ちょっと贅沢なライウイスキーだ。

ホイッスルピッグ10年 スモールバッチ・ライ
700ml アルコール度数50% ¥11,000(税込、参考小売価格)

MHDモエ ヘネシー ディアジオ
https://jp.whistlepigwhiskey.com/

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<台湾>

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亜熱帯での熟成など、ウイスキーづくりの常識を覆し続けるカバランの入門ボトル。

長らくプレミアムウイスキーの消費国として知られてきた台湾に、2006年に誕生したカバラン蒸留所。同国の総合飲料メーカーである「金車(キングカー)」グループが本社のある台湾宜蘭県に設立した蒸留所で、蒸留所名のカバランは同地の旧名だ。

スコッチの伝統に倣って設計された蒸留所では、形もサイズも同じ20基のポットスチルを擁し、年間約1000万リットルのウイスキーを製造する。

山と海が交わる雄大な蘭陽平野に位置し、富士山よりも高い山々の豊富な伏流水に恵まれるなど、豊かな自然環境やシングルモルトのみのラインナップ、良質な樽へのこだわりが同蒸留所の特徴。さらには、世界的にも珍しい亜熱帯性気候下での熟成によって、モルト原酒に南国的なフレーバーが付与されることもカバランの特徴だ。

そんなカバランの入門編として打ってつけの一本が、「カバラン ディスティラリーセレクト No.2」。バニラや花の蜜のような繊細なアロマの奥に広がるのは、熟した果実を思わせるトロピカルな香り。飲めばカスタードやほのかなスパイスが感じられ、フルーツケーキのように重層的な甘さから、穏やかな樽のニュアンスをともなう心地よい余韻へとつながっていく。この一本を試すだけでも、カバランが世界的に評価される理由がよくわかるが、同じシリーズの「カバラン ディスティラリーセレクト No.1」と比較してみるのも面白い。

ちなみにカバランでは蒸留所見学にも力を入れており、コロナ前には世界中から年間100万人以上が蒸留所に訪れたという。まだ蒸留所を訪れたことがない人は、コロナ禍があけたらぜひ見どころ満載の蒸留所にも足を運んでみてほしい。

カバラン ディスティラリーセレクト No.2
700ml アルコール度数40% ¥4,950(税込、参考小売価格)

リードオフジャパン
TEL;03-5464-8170

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<オーストラリア>

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オーストラリア産ワインと深く結びついた蒸留所。バーボン樽などで熟成した後の“フィニッシュ”ではなく、ほぼすべての期間でワイン樽を使うのが特徴だ。

オーストラリアといえばワインのイメージが強いが、意外とウイスキーづくりの歴史も古い。なかでも90年代以降、オーストラリア産ウイスキーの一大産地となったのがタスマニア島だ。清冽な空気と水、大麦やピートにも恵まれた北海道ほどの面積の島には現在も多くの蒸留所が稼働。オーストラリア産のポートワイン樽などを熟成に使用することによる、フルーティでパワフルな香味がタスマニアンウイスキーの特徴だ。

そんなタスマニアンウイスキーとは一線を画すスタイルでウイスキーづくりをおこなうのが、2007年に創設されたスターワード蒸留所。蒸留所があるのは、豊富な緑と歴史的な建築物が並ぶ美しい街並みが広がり、コーヒーやビール、美食の街としても知られるメルボルン。創設者のデイヴィッド・ヴィターレにとって、オーストラリアの主要なワイン産地に囲まれ、「一日の中に四季がある」といわれるほど激しく気候が変化するメルボルンは、自らが理想とする「オーストラリアならではのウイスキー」をつくるのにうってつけの環境だった。

スターワードの最もユニークな点は、オーストラリアの優れたワイナリーから仕入れたワイン樽でフルタイムの熟成を行うこと。フラッグシップの「スターワード ノヴァ」は、原料のすべてにオーストラリア産の大麦麦芽を使い、オーストラリア産赤ワイン樽で熟成したシングルモルト。レッドベリーや黒ブドウ、熟したリンゴやシナモンなどが感じられる香りと、上品な味わいのバニラやカカオ、温かなスパイスが印象的なフレーバー。飲むほどにほどよいタンニンが口の中に広がる、メルボルンの風を感じる革新的なウイスキーだ。

スターワード ノヴァ
700ml アルコール度数41% オープン価格

ウィスク・イー
https://whisk-e.co.jp/products/starward_nova/

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