日本最西端の島で育まれる食材「与那国パクチー」、その特別な味

  • 写真:北島清隆、岡村昌宏 (CROSSOVER) 
  • 文:早坂妙子

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一周約27km、年平均気温23.8℃の温暖な気候で独自の生態系が育まれている。与那国島へは石垣島から飛行機で約30分、1日2便が運航している(2021年12月現在)。

沖縄県八重山諸島にある日本最西端の与那国島には、冬を迎えると出回る、島民の愛する伝統野菜がある。それは香草。須賀洋介シェフが逸品料理に仕立てる。

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須賀洋介●1976年、愛知県名古屋市生まれ。SUGALABO Inc. 代表シェフ。「ジョエル・ロブション」に長年従事し、パリ、ラスベガス、ニューヨーク、台湾などで活躍。2015年、自身のラボラトリーを東京・神谷町に設立。現在も日本各地の食材、食文化に出合う旅を続けている。

東京から1900km、隣接する台湾とは111kmの距離に位置する日本最西端の島、与那国島。

ここ数年、この島の冬の伝統野菜の「クシティ」がひそかに注目を浴びている。近隣の島、石垣島の住人や旅人たちの間で、「与那国島でしか食べられない幻のパクチーがある」という話が囁かれるようになったのだ。そう、「クシティ」とはパクチーの方言名。

与那国島のパクチーは昔から自家菜園で育てられ、短い冬の楽しみとして各家庭で食されてきた。そのため、ほとんど島外に出回ることはなかったが、近年、島の飲食店でも冬季限定メニューとして登場するようになった。

最大の特徴は、その繊細な味わいと、やわらかさ。口あたりがソフトで角がないぶん、パクチー特有の風味がふくよかに口に広がる。島でパクチーを育てる田島笑智子(えちこ)さんは「海風が運ぶ黒潮の塩分が特別おいしくしてくれる」と話す。島ではサラダが大人気だ。

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田島寛二さん、笑智子さんのパクチー畑。子どもや孫たちが喜ぶからと、帰省するお正月に合わせて、種をまくそうだ。

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左:旬は11月~2月末頃まで。島外へはほとんど出回らないが、この期間、島内の飲食店ではスペシャルメニューとして「クシティサラダ」が登場する。パクチーにツナ、スライスした玉ネギ、好みのドレッシングをかけるのが定番。商店や空港の食堂で出合える。クシティ自体の価格は300~400円。 右:茎が細く、やわらかな食感。自家採種した種をまき、約40日で育つ。沖縄の離島では、伝統食材は家庭菜園で自給自足的に育てられ、おすそ分けを通じて人と人とをつないできた。

SUGALABOのシェフ、須賀洋介さんはこのパクチーを「主役になれる食材だ」と言い切る。この冬、アジアの風を感じる与那国島で特別な食体験の旅を考えてはいかがだろうか。

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Recipe 1 パクチーとカジキのソテー

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大根を昆布だしで煮てフォークで潰し、冷やしておく。与那国産のクロカジキは塩・コショウで下味を付け、グリルパンで焼き目を付ける。島ラッキョウも同様に焼く。大根にフレッシュハーブを合わせて皿に敷き、クロカジキ、島ラッキョウ、オリーブオイルとレモン汁、塩でさっと和えた与那国産パクチーをのせる。添えたグリビッシュソースは、豆腐よう、卵、いぶりがっこ、甘ラッキョウ、ハラペーニョ、グリーンタバスコ、オリーブオイル、唐辛子を合わせる。

Recipe 2 パクチーたっぷり沖繩伊勢エビマヨ

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米粉、コーンスターチ、炭酸水を合わせた衣に、下処理をした伊勢エビをくぐらせてサクッと揚げ、ビスク(エビだし)、マヨネーズ、ケチャップ、タバスコ、練乳を合わせたソースに絡める。千切りしてあく抜きをしておいた赤瓜の上に盛りつけ、仕上げにフレッシュな与那国産パクチーをたっぷりのせてパクチーのフォームをかける。家で簡単につくりたい場合は、ケチャップとマヨネーズをお好みの割合で合わせたシンプルなオーロラソースでも可。

問い合わせ先/八重山ビジターズビューロー 
https://yvb.jp/yvb.html