【Penクリエイター・アワード】2021年に話題になったあのサービスも。いま注目の起業家8人

  • 文:高橋美礼

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かもめや代表取締役 小野正人

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国内の離島巡りをするうち、僻地の交通と物流の劣悪な現実を目の当たりにしたことから、ドローンによる離島間物資輸送プロジェクトをスタートさせた小野正人。2015年に香川県高松市と約8km離れた男木島の間でドローンを飛ばす実証実験を行って以降、瀬戸内エリアを中心にドローンを使った海上物資輸送の社会実装を目指している。16年には法人として「かもめや」を設立し、AmazonやDHLといった大手資本のサービスからこぼれ落ちてしまう人々に荷物を届ける活動を本格化させた。そして21年8月、香川県三豊市と粟島間を往復する定期航路便の運用を開始。ドローンが海を越えて長期定期航路を飛ぶのは世界で初めてだ。地方への移住に関心が集まるなか、陸・海・空を結ぶ無人物流プラットフォームが離島の生活を変えようとしている。

ドローン物流 長期定期航路

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買い物弱者となりがちな離島の住人へ、ドローンが荷物を配送する。無人輸送の可能性が広がる取り組みだ。

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Luup代表取締役社長兼CEO 岡井大輝

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「Luup」の創業者であり、CEOを務める岡井大輝。日本の交通における課題を解決する新たな交通インフラの構築をするために、電動マイクロモビリティのシェアリング事業を立ち上げた。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、国や自治体と連携して特例措置を設けることで、社会への実装を具現化してきた。21年4月から東京・渋谷や新宿エリアにて、政府の特例措置のもと、電動キックボードのシェアリング事業を開始。電鉄会社とのコラボレーションによって利用者を増やす試みや、保険会社と協業して使用時の安全性を向上させる取り組みを展開している。電動キックボードの実証実験終了後、将来的には、高齢者でも乗りやすいマイクロモビリティも導入していく計画だという。

電動キックボードのシェアリング事業「LUUP」

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電動キックボードのシェアリングサービス、LUUPは、交通事情を変えるだろうか。期待値は高まるばかりだ。

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チャレナジー 代表取締役CEO 清水敦史

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photo: Challenergy

2011年の東日本大震災をきっかけとして、原子力に頼らない発電の道筋を示すべく、独力で「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発したのは清水敦史。オリジナルの発電技術で特許を取得し、14年に創業した「チャレナジー」を率いて、風力発電の課題である台風などの強風に強い「プロペラのない風力発電機」の実用化を目指す。既に21年8月には、日本の3倍も台風が発生するフィリピンの離島に実機を設置し、“電力の地産地消”を実現する実証事業をスタートさせた。また、第一生命の出資を受けて、都市部でも設置可能な小型風車の開発にも着手。22年初頭の本格稼働を計画している。「風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全なエネルギーを供給する」という情熱は着実に形となり、日本に限らず全地球環境へ広がろうとしている。

垂直軸型マグナス式 風力発電機

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プロペラによる揚力ではなく、円筒が回転することで発生する「マグナス力」を利用して稼働する風力発電機だ。 photo: Challenergy

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WOTA代表取締役CEO 前田瑶介

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前田瑶介は、大手設備メーカーや、デジタルアート制作会社の製品・システム開発に従事した経験をもつ。在学中に起業した事業を売却後、WOTAに参画。水道設備に依存せず、水処理を自律制御する技術を搭載した、自律分散型水循環システム「WOTA BOX」の製品化を果たした。難しい配線は不要、チューブとコンセントを挿して電源スイッチを入れれば誰でも、一度使った水の98%以上を再生・循環利用できる。この仕組みが社会インフラとして定着すれば、上・下水道が整備されていない地域でも暮らせるようになり、災害への備えも格段に進歩するはずだ。2020年度グッドデザイン大賞を受賞。21年10月には、英国王立財団とウィリアム王子が設立した環境賞「アースショット賞」に日本から唯一のファイナリストとして選出された。

WOTA BOX

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配管工事は不要、電源さえ確保できれば、砂漠や被災地のような水道がない場所でも、快適に水を利用できる。

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Rebolt inc. CEO 内山穂南/下山田志帆

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2019年10月にReboltという会社を立ち上げた、現役サッカー選手の下山田志帆と元サッカー選手の内山穂南。創業して最初に立ち上げたブランド、OPTでは、吸収型ボクサーパンツを開発した。女性向け生理用品の機能面の不足による苦痛や心理的な違和感と向き合ってきたアスリートの経験から生まれたのは、ステレオタイプな“女性らしさ”を脱却した“かっこいい”製品だ。立体成型ニット縫製による着心地のよさと防臭効果のある素材の4層構造で、機能性においても革新的。21年4月にスタートさせたクラウドファンディングは、開始17時間で目標金額の100万円を達成し、最終的に798人から617万円を超える支援を得た。近年増えつつあるフェムテック商品の中でも、多くの女性を既存の枠組みから解放する第一歩を切り拓いた成功例だ。

OPT

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従来の概念を超える、かっこいい吸収型ボクサーパンツ。機能的かつ心の苦痛や違和感を軽減するプロダクト。

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ethical bamboo代表取締役 田澤恵津子

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フリーのプランナーとして活動する中、国産の竹に出合い、魅せられたことがきっかけで、竹を使用した製品の企画・製造・販売会社、ethical bambooを立ち上げたのは、田澤恵津子。山口県防府市を拠点とする同社では、誰も立ち入らず放置され、自然環境に害を及ぼすとされてきた竹林の竹を、新たなマテリアルとして利用する技術の研究・開発を進めている。既に竹繊維のタオル、洗剤、消臭スプレーなどの生活必需品を世に送り出し、抗菌剤、化粧品なども開発中だ。宇部市には国内初の竹繊維専門工場を設立、研究施設「ethical labo」を社内に構え、さらなる品質の向上にも意欲的だ。21年10月には経済産業省による「ゼロエミ・チャレンジ企業」に選定され、地域とともに里山を保全しながら美しい竹林を全国に復活させる取り組みを行っている。

繊維製品

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自社工場で製造した竹繊維からTシャツをつくるなど、工業用の原材料として国産の竹を活用。

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一般社団法人 炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長 村木風海

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現役東大生で化学者、発明家、冒険家の村木風海。大学に通いながら、一般社団法人 炭素回収技術研究機構(CRRA)の代表理事・機構長として、独立した研究開発を行っている。「地球温暖化を止めて地球上の77億人全員を救い、火星移住も実現して人類で初の火星人になる」と壮大な夢を表明し、実際に数々の発明をかたちにする行動力で注目を集めてきた。温暖化の原因となる二酸化炭素を回収する装置「ひやっしー」を最初に完成させたのは、高校2年生の頃。現在は第四世代となる次世代型の「ひやっしー」の開発を進める傍ら、回収したCO2から直接軽油の代替燃料を合成する「そらりん計画」、誰もが日帰りで宇宙の入り口まで往還できる「成層圏探査機もくもく計画」などを進めている。科学的根拠をもって熱い理想へ突き進む若き化学者の今後に期待したい。

ひやっしー

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カートリッジ式世界最小のCO²回収装置「ひやっしー」は目下、改良した次世代型を開発中。

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※この記事はPen 2022年1月号「CREATOR AWARDS 2021」特集より再編集した記事です。