【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第141回
さながらジュラ紀のアイコンか!?ファイティングブルのロックスターが降臨

  • 写真&文:青木雄介

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デイトナ24時間を制覇したレースカー「ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO」に準ずる公道仕様のスーパースポーツ。

2020年、世界的なムーブメントとなった黒人差別への抗議運動“ブラックライブズマター”。その抗議運動でアンセム(賛歌)に祭り上げられたのはラッパー、ダベイビーの『ロックスター』という曲だった。自らをロックスターになぞらえ、「新車のランボルギーニ」がリリックの中心モチーフになっている。

好戦的でストリートに共鳴する反骨精神があり、簡単に手に入れられる代物ではないランボルギーニ。ダベイビーに限らず、いまをときめくトラヴィス・スコットやリル・ウージー・ヴァート、オフセットにカーディBなどもリリックに「ランボルギーニ」を入れ込み、韻を踏む。ファイティングブルはヒットチャートのアイコンと呼べるほど人気を博している。

彼らの好みはSUVのウルスか、フラッグシップのアヴェンタドールだけど、現在最もホットなのが、このウラカンSTO。これがまた近年のランボルギーニブームに拍車をかけるであろうロックなモデルなんだな。STOとはスーパートロフェオ・オモロガータの略称で、公道走行可能なレーシングモデルの意味。

ウラカンSTOは、ランボルギーニのエネルギッシュなキャラクターを、まるでファンタジーの実写版のようにデザインに落とし込んでいる。アイコニックな傑作、ミウラに倣った一体化されたフロントカウルに、左右後方に開けられたワイルドなエアダクト、さらにリアボンネットのシャークフィンなどは、むき出しになった恐竜の骨格のような印象を残す。このやりきった感は、さながらスーパースポーツのジュラ紀って感じですよ(笑)。

ステアリングを握れば、それが伊達じゃないことが証明される。富士スピードウェイのホームストレートでは、時速280㎞まではあっという間。640馬力を発生するV10エンジンは自然吸気ならではの美しくも伸びやかな加速で、レッドゾーンに達する。強力なカーボンブレーキは、周回を重ねてもアスファルトに喰らいつく牙のように鋭い。

ウラカンSTOはレーシングカーと同じ剛性を保つために宇宙工学でも用いられるカーボンのサンドイッチ構造を採用し、さらにウインドースクリーンを薄くし、マグネシウムホイール採用によって乾燥重量1339㎏という驚くべき重量を実現。ミッドシップの後輪駆動なので、コーナーでフロントのノーズが入りやすくリアの限界値も高い。低速でのシャープなコーナリングで他車を置き去りにし、ラップタイムを削りとる。とことん戦うためのポテンシャルを与えられたハードコア・スーパースポーツなんだ。

五臓六腑に響くアイドリングから超高速域での獣のような咆哮まで、エキゾーストノートは圧縮され爆発する運動体としてのピュアネスがほとばしる。まるで限界まで太陽に近づこうとしたギリシア神話のイカロス。全身に溶けたタイヤ片を浴びながら、ガソリンの匂いを纏ったモータースポーツの化身ですよ。

ロックスターの引退よろしく、最後のピュアエンジンになるとしても驚かない。「お見事!」とスタンディングオベーションしたい完成度なんだよね。

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リアウイングの調整は手動で行い、最大13%の空力バランスを変えることができる。

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ドライブモードANIMAは「STO(スポーツ)」「Trofeo(レース)」「Pioggia(レイン)」の3モードに統合されている。

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リアボンネットフレームと一体化されたシュノーケル型のエアスクープ。

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ブレーキ冷却のためのダクトも大きく開いている。

ランボルギーニ ウラカン STO
Lamborghini Huracán STO

サイズ(全長×全幅×全高):4549×1945×1220㎜
排気量:5204㏄
エンジン:V型10気筒自然吸気
最高出力:640PS/8000rpm
駆動方式:MR(ミッドシップ後輪駆動)
車両価格:¥41,250,000
ランボルギーニ カスタマーサービスセンター
TEL:0120-988-889 www.lamborghini.com

※この記事はPen 2022年1月号「CREATOR AWARDS 2021」特集より再編集した記事です。