気候変動でアマゾン森林はどのように変わっていくのか? ブラジルがイギリスと提携して“タイムマシン”を設置

  • 文:仁尾帯刀

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既に敷設されているアマゾンFACEタワーの中心部。©João M. Rosa/AmazonFACE

今月12日までスコットランドのグラスゴーで行われたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)で、アマゾンの植生の30年後を占う研究「アマゾンFACE」が発表された。

イギリス政府とブラジルのINPA(国立アマゾン研究所)が共同で取り組むこの研究はFACE(開放系大気 CO2増加実験)という名の実験方法を用いて、将来予測される高いCO2(二酸化炭素)濃度に対して植物相がどのように反応するかを調べるものだ。

1989年にアメリカのアリゾナで初めて行われて以来、FACEは、日本を含む世界の国々で、主に小麦、米、大豆などの農作物を対象とした研究に用いられてきた。FACEの装置は、畑の特定箇所をCO2噴出パイプで囲い、風向、風速などを測定するコンピュータの制御によって常に一定量のCO2を噴出し続けるものだ。

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アマゾンFACEのタワーの完成予想図。来年11月予定で完成後すぐに実験が開始される予定だ。©AmazonFACE

このたび発表されたアマゾンFACEは、熱帯雨林で初めて行われることとともに、過去最大の規模となることで注目されている。環状に配置した高さ35mの二酸化炭素噴出パイプ16台を1塔のタワーとし、計6塔をマナウス市から北に約70kmの森林に設置するもので、それぞれが直径30mの環内の原生林に、2050年を想定して大気中のものより50%濃度の高い二酸化炭素を吹きかける。いわば、環の内側だけ30年後の未来の環境にする試みだ。

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実験前段階として樹液の量を計測するオペレーションマネージャーのブルーノ・タケシ・ポルテーラ研究員。©João M. Rosa/AmazonFACE

タワー建設前の森林の土壌や生態系に関する実験は既に2015年から始まっているが、イギリス政府による約3億8000万円の出資が決まったことで、来年11月の完成を目処に、まず2塔の建設が年内にも始まる予定だ。気候変動による生態系への影響の行く先は、常に不確かさを含んでいる。アマゾンFACEは、気候変動の最大の原因とされるCO2増加への熱帯林の耐性を調べ、社会経済への影響や、取るべき対策のためのデータを収集することを期待されている。