【Penが薦める腕時計、今月の3本】大胆な発想で“魅せる”、新時代の樽形デザイン

  • 写真:渡邉宏基
  • 文:並木浩一
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FRANCK MULLER[フランク ミュラー]/ヴァンガード グランデイト。大胆な文字盤のオープンワークからのぞく機構内部が、幻惑を誘うほどに見る者を圧倒する。インデックスリングを宙に浮かせたツーレジスターを横置きし、6時位置に日付表示ディスクを可視化させた、3つ目風のダイナミックなレイアウト。ガラスも立体的に湾曲させ、裏蓋側も手首に沿うように曲線を描く独自のフォルムも健在。自動巻き、18KPGケース、ケースサイズ53.7×44㎜、パワーリザーブ約42時間、クロコダイル×ラバーストラップ、日常生活防水。¥4,455,000/フランク ミュラー ウォッチランド東京 TEL:03-3549-1949

ワイン樽に似た形状から、フランス語で「樽」を意味する「トノー」と呼ばれる腕時計が初めて登場したのは20世紀初頭。懐中時計が腕時計に切り替わる時代の出来事だ。上着のポケットから出し入れするために角のない丸型が必須だった懐中時計に対し、その制約から解放されて誕生したのがトノー型だ。とはいえトノー型は守旧派のラウンド、アールデコ期に急成長した角形に比べ、その後も“上品なクラシック”の座にとどまり、主役からは遠ざかっていた。

評価が急変したのは1990年代。天才時計師フランク・ミュラーの登場による。半ば忘れられたトノーに再び光を当てただけでなく、意匠に画期的な“違い”を施した。樽の中心を頂点として縦軸・横軸双方から盛り上がるカーブをかけ、三次元的な丘状の構造をもつ独創性を加えたのである。日本では「トノウ カーベックス」の名前で知られることになったトノー・サントレ(湾曲)型ケースは、世界を席巻。フランク・ミュラーは数多の複雑機構を搭載し、トノー型に機械式時計の先頭を走る牽引役を担わせたのである。

いまトノー型はブランドの垣根を超えて進化を続けている。ウブロのような先端素材の導入や、大胆な発想で“魅せるデザイン”に特化したクロノグラフが開発され、比類なき個性を演出してくれる一本が誕生中だ。

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HUBLOT[ウブロ]/スピリット オブ ビッグ・バン ブラックマジック。搭載された「キャリバー HUB4700」は、1969年に誕生したクロノグラフの名機の系譜に連なるムーブメント。1/10秒計測を可能にする毎時36,000振動の高速・高精度エンジンをセラミックケースに収め、スケルトナイズして魅せる。自動巻き、セラミックケース、ケース幅42㎜、パワーリザーブ約50時間、ラバーストラップ、100m防水。¥3,058,000/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ TEL:03-5635-7055

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PARMIGIANI FLEURIER[パルミジャーニ・フルリエ]/カルパグラフ クロノメーター。完全自社製でCOSC認定のゴールド製一体型クロノグラフ・ムーブメント「PF362」は、毎秒10振動(毎時36,000振動)の高速キャリバー。文字盤側の格子状オープンワークからは、地板の美しいペルラージュ模様を透かしてみせる。自動巻き、18KRGケース、ケース径48.2×40.9㎜、パワーリザーブ約65時間、ラバーストラップ、30m防水。¥4,928,000/パルミジャーニ・フルリエ TEL:03-5413-5745

※こちらはPen 2021年12月号「腕時計、この一本と生きる」特集よりPen編集部が再編集した記事です。