スマートフォンを圧倒する、 “40mm”がもたらす作品性

  • 文:麻倉怜士
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RICOH GR IIIx/リコー ジーアール スリーエックス
〈デジタルカメラ〉

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標準画角を得られる「GR Ⅲx」。姉妹機「GR Ⅲ」とほぼ同じ形なので、2台持ちの場合は色が付いた別売リングキャップを装着すると見分けやすい。¥129,800

カメラがスマートフォンに呑まれる時代。スマホに勝つには、よほど勁つよいモノの魅力と高性能が必須だ。その条件を満たす稀有な存在のリコー「GR Ⅲ」に新顔が加わった。「GR Ⅲx」だ。

違いはレンズの焦点距離。GRは28mm(相当、以下同)の広角コンパクトカメラ。1996年にフィルム機として誕生して以来、1モデルが21mmだったほか、歴代11モデルはすべて28mm。今回のGR Ⅲxは、これまでのGRシリーズの不文律を破り、標準画角の40mmを新搭載したのだ。

歴代のGRは、携帯していて、撮りたいと思った時、即座に撮影行動に移れる「最強のスナップシューター」であった。電源ボタンを押すと、瞬時の速さでスタンバイ。レンズ鏡筒が静かに、高速に出てくる敏捷さが、すがすがしい。

GR Ⅲxは携帯性、速写性はそのままに、40mmならではの、異なる作品性を提案する。広角28mmは、適当に被写体に向ければ被写界深度の深い、ピントが隅々まで合ったスナップが的確に撮れる。広い画角には主題以外のものが入るため、被写体に近づいて撮ることが求められ、それが迫力を生み、奥行きのある写真になる。

一方、40mmは人間の視野角と近く、見た目のそのままが撮れる。画角が狭いから、テーマを明瞭にできる。つまり、作品性をより濃く追求できるのだ。さらにクロップ(センサーの周辺画素を除外)して50mmに、テレコンバージョンレンズを加え75mm、もしくは107mmと、中望遠でモデルを浮かび上がらせ、背景をきれいにボカす……という、ポートレート撮影にも挑戦できる。そうすることで携帯性、速写性と並ぶGRのもうひとつの価値の「高画質」がより生きるのである。

画質は解像感が高く、質感は細やか。しかし同時にしっかりとした粒子感と階調感を持つ。

28mmと40mmの二刀を得て、GRはさらに飛躍、スマホを圧倒し、スナップシューターとして超越した存在となった。

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それぞれ専用の別売コンバージョンレンズを装着したGR Ⅲx(右)とGR Ⅲ。クロップ機能も合わせれば、この2台で超広角21㎜から望遠107㎜の画角をカバーできる。

麻倉怜士

デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。近著に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。

●リコーイメージングお客様相談センター TEL:0570-001313