1881年に創業し、銀座を代表する老舗として知られる和光。銀座には銀座四丁目交差点に面している本館を含めて4店舗あり、そのうち食料品を扱う和光アネックスの地階グルメサロンがリニューアルオープンした。
最大のトピックは時の食品館をテーマに、日本ならではの四季折々の味覚を用意し、特別で豊かな体験を提案する新設の「FIND OUT ABOUT NIPPON」コーナーだろう。プロデュースしたのは、Pen本誌でもお馴染みのプレミアム野外イベント「DINING OUT」や、地域の魅力の編集と発信に取り組むウェブメディア「ONESTORY」の運営を行う株式会社ONESTORYだと聞き、思わず期待値が上がってしまった。
---fadeinPager---
日本の味覚とお酒のペアリングによる未知の体験
まず取り上げたいのは話題のソムリエ2名による、食とお酒とのペアリング。新しい日本酒体験が人気を集めている日本酒ソムリエの千葉麻里絵氏は、滋賀県長浜市の冨田酒造による「七本鎗 武者修業 木桶仕込み」をセレクト。酒職人である松本日出彦氏とのコラボレーションによる限定品で、無骨な風味を残しながら洗練された甘みを感じさせる生原酒の純米酒だ。


和光でしか扱わないプレミアムな日本酒に対して、石川県輪島市の陽菜実園が完全無添加で仕上げたひなみ柿のドライフルーツ「ひなみ柿 デ セック/ドゥミセック」をペアリング。水分を多めに残したゼミドライで、噛むほどに口の中に広がる程よい甘みが七本鎗のまろやかさを引き出してくれる。

さらに千葉氏は、岐阜県高山市の飛騨山椒による「実山椒」をセレクト。こちらは岐阜県奥飛騨温泉郷でしか育たないという高原山椒を、熟す前のやわらかい状態の実を塩漬けにしたもの。柑橘系の香りと辛さ、しびれのバランスが秀逸で、爽やかな風味が七本鎗の土っぽさを和らげ見事な調和を感じさせてくれた。

そして、2人目のソムリエは、ワインのペアリングやアルコールの構成要素を表現したノンアルコールペアリングが好評の外山博之氏。お酒に選んだのは青森県弘前市の弘前シードル工房kimoriによる「kimoriシードル(スイート)」。酸味と甘みのバランスがいいサンふじを主な原料とし、無ろ過製法でにごりや澱も残しつつりんごの果実感を楽しめるシードルに仕上げている。


合わせたのは、石川県輪島市の松尾栗園がつくる「能登の焼き栗棒」。糖度30度超えの焼き栗のみを丁寧にペーストにして棒状に固めたもので、焼き栗の味をそのまま閉じ込めた和スイーツ。栗独特の控えめな甘さにシードルの優しい甘さと炭酸による爽やかさがマッチし、お互いの味わいを引き立ててくれた。用意されたペアリングは全部で17ペアあり、紹介した以外にもさまざまな驚きを感じさせる提案が新鮮だった。

---fadeinPager---
話題の酒職人が5つの蔵とコラボレートした限定品
もうひとつのトピックは、リニューアルオープン記念の限定品として、酒職人の松本日出彦氏が5つの蔵と造り上げた「松本日出彦 武者修業 別誂」だろう。松本氏といえば、家業の松本酒造で28歳の若さで杜氏に抜擢され、従来の日本酒造りを大きく変えたことで知られる。2020年の退任後は、「武者修業」と題して、新政(秋田)、仙禽(栃木)、七本鎗(滋賀)、田中六五(福岡)、花の香(熊本)の5つの蔵で酒造りを共にしてきた。

今回、発売されたのは、その「武者修業」で新たに誕生したという日本酒。「新政酒造×松本日出彦 直汲二0二0」、「仙禽×松本日出彦」、千葉氏のペアリングにも登場した「七本鎗 武者修業 木桶仕込み」、「田中六五 松本」、「花の香 松本日出彦別誂」の5本がそろった。

特に松本氏がこだわったのが、「直汲み」という製法だ。通常の日本酒造りでは、上槽と呼ばれる工程で醪を絞った酒を大きなタンクに移すのだが、その際に酒が空気に触れると酸化が進み、風味が変化するといわれている。「直汲み」とは上槽時にその場で瓶に詰めるという手間暇のかかる製法で、最もきれいな酒質をそのまま瓶詰めするためフレッシュな味わいになる。どの蔵の生原酒も限定75本。取り扱いは和光のみなので、ぜひこの機会に「FIND OUT ABOIT NIPPON」を訪れるといいだろう。
問い合わせ先/和光アネックス グルメサロン TEL:03-3562-2111