
「若者がお金を使わなくなった」と言われているが、それは本当なのか? 若い人でも好きなことには惜しまずお金を使う人は、実は多いのだ。ただ、それがインドアの趣味に変化しているため目に見えにくい。以前は社会人になったら車を所有するなど誰もが同じような消費をしていた。ところがネット環境が当たり前になりどこにも行かずにアプリや動画、ゲームでお金が使えてしまうようになった。
大きく変化しているのは、「所有よりも利用」「モノよりもコトに消費」が進んでいるようだ。車は所有するよりもカーシェアリング。モノを買うよりも、旅行や観劇、ゲームなどに変化している。また、決済方法もコロナ禍で大きく変わった。得に進んだのはキャッシュレス決済だ。銀行の支店が消えていく今後は、金融の世界からIT化は進んでいくだろう。
20~30代前半の方向けのお金に関するアンケート調査によると、「若い頃から、老後に向けて貯蓄や投資をすることが一般的になる」と回答する方が多く、「(老後のための)貯蓄」志向も高まっている。筆者の講座は家族で受講できるのだが、予想に反して、ご夫婦ではなく成人したご子息、ご息女と参加する方が多くなっている。社会人になってすぐの若い世代でも、老後のお金の不安を抱えているのだろう。コツコツ貯金をしている方は多いのだが、貯金をいくら積み上げても老後の不安は解消できないという相談も受けることも少なくない。不安を安心に変える行動について考察してみた。
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老後破産の不安を解消する行動その1
→20代でもiDeCo活用

最近よく聞かれるのに「20代でiDeCoは早すぎますか?」という質問だ。20代でも老後の資産作りに不安があると考えている方は多い。もちろん老後資金は高額だから早く準備した方が良いのだが、ライフイベントもよく考えて欲しい。マイホームや子どもの教育費の支払いが先にくるのだ。自分でお金を拠出して自分で運用し、資産形成する年金制度のiDeCo。掛金は60歳まで引き出せないので、今後のライフイベントを考え、5000円から2万3000円までの間で拠出額を決める必要がある。最初は負担にならない金額で始めると良いだろう。
さらに、お給料の昇給があった時に掛金をアップできるとより良い。なぜなら、iDeCoは税金の優遇があるからだ。掛金の全額が所得控除になるので昇給と同時にiDeCoの掛金もアップしていけば年末調整でかえってくる税金もアップする。
また、万が一の時は遺族が「死亡一時金」として掛金を請求することも可能だ。死亡日から3年以内に受け取る場合は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になる。税制上は、死亡退職金と同じ扱いになるので500万円×法定相続人の数が非課税限度額になる。この非課税枠を使うことで有利に受給できるのだ。
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老後破産の不安を解消する行動その2
→新社会人からお金の流れを作っておく

筆者は20代の方にもアドバイスする機会が多くある。以前から傾向はあったのだが20代の方ほど男性でも「堅実」に増やすことに興味を示すようだ。とは言っても、まだまだ遊びにも将来への自己投資もしたい年代だから大きな金額よりも少額でコツコツ始めることをお勧めすることが多い。ただし独身の期間というのは、お金の貯め時でもある。筆者も会社の先輩にマイホームを購入するのに頭金だけではなく諸費用も含めると1000万円くらい必要と教えてもらってから、自分の負担分として500万円を貯めるという目標ができた。20代の時に貯蓄できた500万円は、その後の筆者の人生の中で、とても価値の高い資産となった。
その500万円を使って購入したマイホームを10年毎に住み替えしているのだ。次の10年住む家も現在建築中で、転居したら今の家は貸そうと考えている。500万円の資産をただ積み上げるのではなく、収入にも繋げているのだ。お金をただ貯めこむだけではなく、お金を使ってお金を得る「お金の流れ」を作ることが大事なのだ。お金を使っても減らない、もしくは保有しているだけでお金が入ってくるそういう仕組みを作ることが大事なのだ。
たくさんの方の資産を見ていて心配なのは、収入が高いのに貯蓄がない方だ。収入が高いと、使ってもまたお金が入ってくるので大丈夫という心理が働き浪費家計になってしまう。特に年収1000万円くらいで貯蓄が少ない方は、要注意だ。なぜなら年金額には上限があって、平均月収65万円以上の方は受取る年金額はほとんど増えない。年収1000万円の会社員の方のおおよその年金額は、200万円くらいだ。妻が専業主婦の場合、基礎年金と妻の独身時代の厚生年金を合わせて100万円とすると世帯で300万円くらいの年金額だ。年金生活に入ると3分の1の収入で暮らさなければならなくなる。浪費家計のまま年金生活に入るとあっと言う間に老後破産だ。
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老後破産の不安を解消する行動その3
→「ライフイベント表」を作成する

年金額は、納める上限があることを忘れないで欲しい。いままで贅沢をしていた方が、月額25万円で生活できるだろうか。まず見直すべきは、住宅ローンだ。60歳までに完済できるのかシミュレーションして欲しい。子どもの教育費も考え、繰上げ返済するタイミングを考えてみよう。子どもの教育費も大学進学に目標を定め、生まれた時から準備する。目先のことを考え、お金の使い方をデザインするのだ。
そのためにライフイベント表を作成することをお勧めする。まだ独身の方こそ、作成してみて欲しい。結婚の時期や子どもの出産の時期、家族が増えれば広いマイホームも必要になる。車が必要な地域にお住まいの場合は、車の買い替えも考えておこう。何歳の時にどのくらいの資金が必要なのか年齢軸で考える。大事なことは、ファイナンシャルゴールを決めることだ。ライフイベントの経済的な目標を明確にしておくのだ。例えば、30歳までに結婚したいと考えるならば結婚資金として200万円貯金する必要がある。マイホームが欲しい場合は、住宅購入までに頭金と諸経費で400万円くらい貯蓄しておきたいなど考える。
ライフイベント表は、次のような手順で作成しよう。
1)西暦など年の記入欄を作り時期をわかりやすくしておく
2)家族の記入欄を作り家族構成について記入する
3)年に合わせて、それぞれの家族の年齢を記入する
4)年に合わせて具体的なライフイベントを記入する
5)ライフイベントに必要な金額を記入する
ライフイベントは、30年先くらいまで予測して記入するのだが、実際には予定通りに進まないこともある。その都度修正しても良いし、毎年1回時期を決めて考え直すのも良い。
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人生の設計図を考えることで、夢が実現
ライフイベント表を作成したら、それに収支も入れたライフプラン表まで作れると、さらに人生の設計図が描ける。ただし少し複雑になるので、専門家や専用のサイトなどを活用して作るといいだろう。そこまでしなくても、ライフイベント表を作るだけでも、必要資金が分かるので、人生の計画が立てやすくなる。さらにいうと夢も叶いやすくなるのだ。筆者も高校生の頃から、自分の夢とお金の計画を立てることで、夢を実現してきた。転職の計画やマイホームの購入、子どもの私立中学進学など、かかる費用を調べて、目標額を貯蓄してきたので夢を実現することができたのだ。
特に子どもが私立中学に行きたいと言い出した頃は、毎月6万円もの赤字家計だったので、そこから毎月貯蓄ができるように家計を見直すのには、時間もかかった。赤字家計がリバウンドしないよう、節制した生活を習慣化するのには、ある程度時間がかかるからだ。だが一旦習慣化できると、そのままお金が貯まる家計に変わることができる。夢を実現するための金額と貯蓄計画ができれば、夢は叶うのだ。
【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/