サステイナブルの流れが強まる昨今。大量生産・大量消費を見直すべく、技術とセンスで古着に新たな命を宿す、ある日本のブランドの試みに注目した。

ファッションは石油産業に続いて環境に負荷を与えるものとして知られる。『大量廃棄社会』(光文社新書刊)によれば、日本で供給されている衣類の4枚に1枚が新品のまま捨てられているという厳しい現実がある。衣類の処分はいまや社会問題のひとつだ。
もともとの製品=古着にデザインやアイデアを加え、新たな製品にする「アップサイクル」と呼ばれる手法で、ある種の社会貢献を果たしているブランドが2ndエグジスタンスだ。

二木信彦(ふたつぎ・のぶひこ)●エフエムワイ インターナショナル代表取締役。横浜国立大学工学部卒業。大手アパレル、商社系の会社などで経験を積んだ後に独立し、2000年に会社を設立。商品企画から販促、輸入、コンサルティングまで、ファッションビジネスのさまざまな分野に精通。
山形の職人の技によって、古着がアートのように変貌。
「ブランドのスタートは1年半ほど前。知人がアジアで古着のビジネスに携わっていて、私も古着の市場をいろいろと知っていました。それに私自身が古着をリメイクするのが好きだったので、ある意味運命的にこのブランドを始めたのです。長くファッションビジネスに関わってきましたので、この活動は恩返しみたいなもの。これまでとは違った視点でモノづくりをしていこうと思っています」と、デザイナーを務める二木信彦は語る。
2ndエグジスタンスが扱う古着はアジアで調達したものだ。なかでもパキスタンが多い。実はパキスタンの古着輸入量は年間約110万トン(2018年)で、世界一。「数年前まで政情が安定せず、救援物質のようなかたちで古着が集まる」と二木は話す。しかも古着はアメリカからもヨーロッパからも集まるので二木が望むものを入手しやすい。自らも現地に赴くが、“ピッカー”と呼ばれる人たちを現地で雇い、つくるものを念頭に古着を集める。
輸入された古着は山形の工場に運び込まれ、分解、縫製され、新たな製品へと生まれ変わる。古着はそれぞれが一点モノでサイズも異なる。製品化にはつくり手の技量とセンスが求められる。山形の工場はそのノウハウをもち、協力工場含め年間1万着以上を縫い上げる。完成した製品もまたすべて一点モノだ。もとの古着を超えた“アート”のような出来栄えと言える。
「古着をバラバラにして、1枚の生地のように仕上げ、そこに型紙を入れてまったく違った製品をつくることもあります。我々はそれを『リクラフテッド』と呼んでいます。パンツをコートに仕立てられる。この技術があればどんなアイテムもできます。日本でやる理由がここにあります」
さらに二木は古着だけでなく、アパレルメーカーの倉庫などに眠るデッドストックを活用して、新たな製品を生み出すことも始めている。
「アフターコロナでは、販売できなかった製品をどう処分するかということも重要になるでしょう。我々がやっていることは、その解決策のひとつになるかもしれません」
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※この記事はPen 2020年7/15号「東京古着日和。」特集より再編集した記事です。