【着る/知る】Vol.116 今冬のノルディック柄ニット探しは、種類豊富なコム デ ギャルソンからはじめよう

  • 構成・文:高橋一史 写真:青木和也
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襟周りに輪を被せたように柄が連なる編み模様がノルディックセーターの特徴。

最新コレクションが並ぶファッションブランドの展示会に行き、そのシーズンに自分が思い描いていたスタイルと合致するアイテムに出合うと嬉しくなる。色柄が美しいノルディック柄に心惹かれていた今季に訪れたコム デ ギャルソンの展示会も、そんな楽しさに満ちていた。デザイナーの渡辺淳弥がデザインするメンズの2ブランド、コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(以下、ジュンヤ)とコム デ ギャルソン・オム(以下、オム)である。

なかでもジュンヤはノルディック柄をさまざまなアイテムに応用する熱の入れようだ。聞けば今季のコレクションテーマが、「古いけど新しいトラディショナルスタイル」だという。もともとビンテージのワークウエアやスポーツウエアを取り入れてきたジュンヤが、よりレトロな存在に目を向けたのが今シーズンだ。

ノルディックセーターは幾何学模様、雪、トナカイといった冬のモチーフを連続させて編み込んだ北欧のニット。名の通りノルウェーがルーツとされている。柄がケープのように上半身を丸く覆うデザインが一般的だ。寒さを防ぐ服だから太い糸のざっくりした編みになっている。似たアイテムにフェアアイルセーターがあるが、こちらはスコットランド発祥で柄がボーダー状に全体を覆うもの。ノルディックセーターとは区別されるのが通例である。行動が制限され閉塞感のある日常に華を添える柄ものの服は、いまこそ買い足してワードローブに加えたいキーアイテムだ。

ここではジュンヤとオムのラインアップから、創造性と着やすさのバランスが巧みなものを厳選セレクトして紹介する。さらに今季は京都を拠点とするレインメーカーの展示会でも新発想の素晴らしい逸品に出会ったので、こちらも併せてお届けしよう。

コム デ ギャルソン・オム
ベーシックを一捻り

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日本の老舗メンズニットメーカー、ジム(gim)と協業して本物の風格に仕上げた一着。¥52,800(税込)/コム デ ギャルソン・オム(コム デ ギャルソン TEL:03-3486-7611)

ノルディックセーターはもともと、女性的なソフトさのある服だ。オーセンティックな柄のこのニットも例外ではないが、胸にミリタリーウエアのようなポケットがつている。何気ないこの工夫で途端に男性的な印象になるのだから、ファッションデザインの世界は奥が深い。本体の編糸はざっくりとした粗野な風合いの伝統的なもの。スマホ一台だけをポケットに投げ入れ、デニムやイージーパンツの上に羽織って街中を散歩したい。

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コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン
温故知新のデザイン

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柔らかな素材がたっぷりと身体を包む。模様はビンテージニットから着想されたもの。¥70,400(税込)/コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(コム デ ギャルソン TEL:03-3486-7611)

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身頃に配された毛羽立ったニット素材で、温かな表情になったミックスアイテム。¥137,500(税込)/コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(コム デ ギャルソン TEL:03-3486-7611)

柄をプリントしたTシャツからアウターに至るまで、今季のジュンヤはノルディック柄が大充実。たんなるトラッドでは物足りずデザイン力のある服がほしいなら、今季はまずジュンヤの店に足を運ぼう。

ここにセレクトした2着はともに、自分定番として長く着続けたい洗練された仕上がり。セーターは色の美しさもさることながら、モヘア・ウールのふわふわの風合いが秀逸。シルエットもたっぷりで、テレワーク中の室内でも着ていたくなる心地よさだ。

風が冷たい日の屋外でもノルディック柄を着たい人にぴったりなのが、もう一着のコート。ノルディックセーター+スタジャン+モッズコートのスーパーレイヤードだ。グレイッシュなモノトーンで色調がほぼ統一されているため、すべてが自然に馴染んでいる。バケットハットやベースボールキャップを被り、スポーティーさを強調する着方を狙ってはいかがだろうか。

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レインメーカー
京都の職人が染めた柄

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糸分量が多く目の詰まった編みながら、カシミアのごとく柔らかで滑らか。¥61,600(税込)/レインメーカー(TEL:075-708-2280)

今回のラストを飾るのは京都在住のデザイナー渡部宏一による、日本及び和装と親和性が高いレインメーカーのニット。グラフィカルな色模様を手掛けたのは、伝統工芸士の重野泰正である。「京鹿の子絞り染め」の技法で、バージンエクストラスーパーファインウールのセーターがひとつひとつ製品染めされている。ノルディック柄の可能性を広げる、大胆かつ繊細な試みだ。

終わりに

モノトーンのシンプルな服装のアクセントにしたり、全身を明るい色で揃えるのがノルディック柄を都会的に着るコツである。ダボッとしたアウターを羽織り、インナーでチラ見せするのもいい。こうした伝統柄アイテムはそれこそ古着屋でも探せるものの、デザイナーにより工夫されたモダンな品を選べば、そこに未来が感じられてより愉しめるだろう。これまで男っぽい服ばかり着てきた人こそ、その男っぽさを少し和らげる気持ちで袖を通してはいかがだろうか。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。