【Color of Japan 日本の魅力、再発見】小笠原諸島の美しき夜空で感じる<天壇青>

  • 文:岩崎香央理

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<小笠原諸島:360° VR映像>
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<小笠原諸島:エリア映像>
全画面にして、ハイビジョンの映像の迫力をお楽しみください。

日本列島から南に約1,000km。6日に1便の定期船を唯一の渡航手段に、24時間のクルーズの先にたどり着く秘境が、世界自然遺産・小笠原諸島である。

約4,800万年前のプレート変動をきっかけに、海底火山の活動によって形成された小笠原。誕生以来、一度も大陸と地続きになったことのない絶海の島々は、「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、特異な生態系を進化させてきた。

夜は、あらゆる命が自然の中で成長する時。小笠原の美しい夕暮れは、島の生態系を育む長い夜の始まりを祝福しているかのようだ。日が傾くと、父島北西部の三日月山の展望台には、島民や観光客が続々と集まってくる。ウェザーステーションと呼ばれるここは、かつての気象観測所。海に沈む夕日と満天の星空を見渡せる名所だ。日が落ちたあとに色づくマジックアワーを過ぎると、夕闇があたりを包み、空は紫色混じりの深い青へと変化する。<天壇青>という名の、瑠璃色のようなナイトブルー。中国の皇帝が天を祀る祭壇を天壇といい、その高貴な青瓦を由来とした色である。

人の少ない場所で夜空を独り占めしたいなら、父島の中心から離れた小港海岸がおすすめ。人工的な光のない砂浜で、波音をBGMに天体ショーを堪能できる。母島に滞在するなら、視界を遮るもののない旧ヘリポートまで足を運んで、仰向けに寝転がってみたい。夜空に滲む天の川へと吸い込まれそうな、宇宙との一体感を味わえるだろう。

新しい命が生まれる、小笠原の夜。5月から8月にかけて、あちこちの浜でアオウミガメの産卵が見られる。月明かりを頼りに、自然の営みを目に焼き付けよう。

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<ウェザーステーション>
父島のウェザーステーションにて全天球の星空を撮影。展望台からは冬にザトウクジラのジャンプが見えることも。水平線に太陽が沈む直前、緑の閃光が一瞬輝く珍しい現象「グリーンフラッシュ」を求めて、人々が集まってくる。

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<小港海岸>
父島南西部の小港海岸は、遠浅で砂浜が広く、プライベートビーチのように静かな入江。海に夕日が落ちたあとはすぐに帰らず、その後しばらく空が劇的に焼ける「マジックアワー」を楽しみたい。

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<旧ヘリポート>
母島南部の、現在は使われていない旧ヘリポートは、視界が360度確保できる小笠原一の天体観測ポイント。周囲も暗く、まさに降り注ぐような星空を体験できる。

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<ウミガメ>
小笠原諸島は日本最大のアオウミガメ繁殖地。5〜8月の産卵期は夜間にメスが砂浜に上陸し、穴を掘って100個以上の卵を産む。その45〜75日後に赤ちゃんカメが孵化し、一斉に海へと向かう。

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