
『ダイエットをしたら太ります。最新医学データが示す不都合な真実』という書籍が話題だ。ダイエット中の人、ダイエットしようと考えている人にとって、かなりドッキリとするタイトルではないだろうか。摂食障害が専門の精神科医である著者は、こう告発する。
「ほとんどの場合、ダイエットは成功しません。どうしてって、ダイエットには『ダイエットすると太る』という、“不都合な真実”があるからです」(P11)
著者は、まずミネソタ大学のダイアン・ニューマーク・ステイナー博士が中高生1902人を10年間にわたって追跡調査した結果を紹介。ダイエットや不健康な体重コントロールを繰り返していると、何もしない場合よりも確実に体重が増えるという事実を明かす。ダイエットが一時的な体重減少をもたらすことはある。だが多くの人はその後、リバウンドを起こす。
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「ダイエットをすると太る」2つの理由

ステイナー博士が挙げた「ダイエットをすると太る」理由のうち、著者は「食欲のコントロールができなくなること」「太りやすい体質になること」の2つの理由に着目。ダイエットが心身に及ぼす影響を、最新の医学データをもとに解説する。
食べたい時に食べない、もっと食べたいけれど我慢するなど、ダイエットを始めた時に食べる量を減らそうと試みる人は多い。食欲を意志でコントロールしようとするからだ。しかし近年の研究結果が明らかにするのは別の事実だ。
「生理的な空腹・満腹のサインに従わず、意志によって食欲をコントロールしようとすると、体に備わった正常なコントロール機能がうまく働かなくなってしまうこと、そして摂食障害を発症するリスクが高まることがわかってきたのです」(P63)
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ダイエットしてリバウンドすると、“増えてしまうもの”

人間が空腹感や満腹感を覚えるのは、いくつかのホルモンの働きによる。たとえば、昼時に空腹を感じても食べるタイミングを逃すと、いつの間にか空腹を忘れ、夜になるとまた空腹を感じるのは、「グレリン」というホルモンが規則正しい食事のタイミングを促すから。不規則な食生活を送っていると「グレリン」が正常な働きをしなくなり、空腹感や満腹感をうまく感じられなくなってしまうという。
さらにこう続ける。
「ダイエットによって太りやすい体質になるのは、基礎代謝が低下して、エネルギーを消費しにくくなるためでした。ところがもう一つ、太りやすい体質になる原因があります。ダイエットとしてリバウンドすると、脂肪細胞の数が増えるらしいのです」(P90)
脂肪細胞の数が増えれば、当然、脂肪を蓄える能力が高まるから太りやすくなる。
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ビジネスと深く結びついているダイエット

著者は、酵素ドリンクとファスティング(断食)や腸内洗浄、糖質制限など流行のダイエット法にも言及し、ダイエットがいかにビジネスと関わりが深いかを説く。そもそも私たちはダイエットする必要があるのか?
「『適正体重よりもやや太めの方が長生きする』ことが科学的に明らかであり、やや太めぐらいの体重であれば、心配してダイエットする必要はない、ということなのです」(P94-95)
それでも人がダイエットに走るのはなぜか。精神科医の著者は、現代人が抱える心の課題にも触れる。健康で幸福な人生とは、どんな人生かと改めて考えさせられる。
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『ダイエットをしたら太ります。 最新医学データが示す不都合な真実』永田 利彦 著 光文社 ¥924(税込)