写真家・桑島智輝がライカで捉えた、アウシュヴィッツでの一枚

  • 文:ガンダーラ井上
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アウシュヴィッツ第二強制収容所。対象と静かに向き合い、歴史の闇を見つめ直した。

メインの仕事道具としては他機を使っていても、ライカにはまた別の愛着をもって接する写真家たちがいる。写真家・桑島智輝さんに、その愛の遍歴をたどってもらった。

アウシュヴィッツで撮るなら、これ以外は考えられなかった。

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Leica M6/「ライカM6」は、10年ほど前に手に入れた。レンズはズミクロン35mmのみ、フィルムはモノクロのT-MAX 400だ。写真集で密着取材する時や緊迫した場面で、その静かなシャッター音が活躍するという。

「藤代冥砂さんに憧れていた頃、『もう、家に帰ろう』という写真集でライカを使ったことを知り、同じ『ライカM6』を手に入れたんです。まずカラーで撮ったけど、よさがあまりわからず数年眠らせていました。ある時、妻をモノクロで撮ったら、これか!って思えた」

写真集やグラビアの撮影が多い桑島智輝さんは、仕事のメイン機としては連写性の高い一眼レフを使う。だが、妻の安達祐実さんと新婚旅行の途上にアウシュヴィッツに向かう際、迷わず選んだのはライカだった。

「フレーム、ピント、露出、すべてを自分でやる。被写体に真摯に向き合い、静かにシャッターを押すべき状況で、これ以外のカメラは考えられなかった。ライカは自分の心情や場の気配を写せる特別なカメラです」

桑島智輝(くわじま・ともき)

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1978年、岡山県生まれ。2002年に武蔵野美術大学を卒業後、鎌田拳太郎に師事。04年に独立。安達祐実『私生活』、新田真剣佑『UP THE ROAD』を手がける。

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※この記事はPen2019年3/1号「ライカで撮る理由。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。