食だけじゃない! 三重の大型娯楽施設「VISON」はミュージアムに注目を

  • 文:小長谷奈都子

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「アトリエ ヴィソン」エリアにある食の道具の博物館「KATACHI museum」。インスタレーション的な展示も見どころ。

三重県のほぼ真ん中に位置する多気町は、伊勢神宮や熊野古道にも近く、美しい山々に囲まれた自然豊かな土地。ここに、今夏、日本最大級の商業リゾート施設「VISON」が誕生した。

「すべては、いのちを喜ばせるために。」というコンセプトのもと、東京ドーム約24個分の約119ヘクタールという広大な敷地に、ホテル、温浴施設、産直市場、飲食店、オーガニック農園など、全70店舗が出店。「食」が最大のテーマながら、「知」の体験にも注目を。施設内には、人気の陶芸家やデザイナーが手がける、衣食住に関するミュージアムが3館あるのだ。広い空と清々しい空気の中、知的好奇心や感性を刺激するカルチャー体験を楽しもう。

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無骨な食の道具が、想像力をかきたてる博物館

KATACHI museum

9つのエリアに分かれるうちのひとつ「アトリエ ヴィソン」は、陶芸家・造形作家の内田鋼一がプロデュースする食の道具にまつわるエリア。ここで一際存在感を放つ大きな納屋のような建物が、食の道具の博物館「KATACHI museum」だ。

土壁を塗り回した目地のない建物の内部に並ぶのは、時代も国もバラバラのさまざまな食の道具。それらはショーケースやガラス越しでなく、むき出しで展示され、巡回ルートも決まっていない。「現行のものでなく、紀元前から近代までの古いものばかりです。アート的な観点、彫刻的な観点、技術的な観点などから見て面白いものが揃っている。各国の文化の違いや共通性を知ってもらえればと思います」と内田。

併設のショップでは現代の機能美あふれる調理器具を販売。向かいのギャラリー「Gallery 泛白 uhaku」では白をテーマにした作家の作品や古い器を扱う。

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「KATACHI museum」が入る建物。目地のない土壁は、伊勢神宮をはじめとする神社仏閣の左官仕事を担う工房カズが手がけたもの。雨樋がないのは経年変化によって”雨を風景化する”ためという。

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時代も国もバラバラのアノニマスな食の道具が、什器に見立てた古い家具に並ぶ。石、土、鉄、木、ガラスなど、素材感のあるものが多い。左は18〜19世紀の日本の石製竈(くど)、左は古代メソアメリカB.C.のコスタリカの粉ひき台(メタテ)。

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「KATACHI museum」 の向かいに立つ「Gallery 泛白 uhaku」は、白をテーマにしたショップ。岩田圭介や金森正起といった現代作家や、李朝などアンティークの器を販売する。

KATACHI museum

三重県多気郡多気町ヴィソン672番1アトリエ4
TEL:0598-67-0725
開館時間:10時〜17時(最終入館16時30分)
休館日:なし
入館料:¥1,000(税込)
www.vison.jp

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制作の背景を伝える、ミナ ペルホネン初の常設ミュージアム

minä perhonen museum / minä perhonen museum shop

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多気町とスペインのサンセバスチャン市が締結する「美食を通じた友好の証」を記念して名付けられた「セバスチャン通り」にある「minä perhonen museum」。ミュージアムの入り口は右手の扉。

蝶や植物といった自然モチーフをやさしい世界観で紡ぎ出す、ファッション・テキスタイルブランドのミナ ペルホネン。常設のミュージアムはここVISONが初。

場所は「サンセバスチャン通り」というスペイン・サンセバスチャン市の人気バルなどが出店するエリア。曲線が印象的な空間に、手作業の図案に使われる道具や原画、アーカイブのテキスタイルなどを展示。2011年からデザイナーの皆川明が毎週綴っている詩が壁に貼られ、機織りの音が響くコーナーも。まるでアトリエに足を踏み入れたような体験となる。

「ミュージアムと店舗が常に一緒というスタイルは初めて。ものづくりの過程や背景を知っていただき、作る側の想いを伝えていくことで、着ていただく方の愛着へつながったり、大量生産・大量廃棄といった問題の改善にもつながればと思います」と皆川。ショップには服や小物から家具、器などまで揃う。

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アーカイブのテキスタイルを額装して飾ったコーナー。天井から吊るされたテキスタイルは、通常は表しか見ないテキスタイルを裏側から見ることができ、丁寧なものづくりを実感する。

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洋服やバッグをつくった余り布も大切に保管しているミナ ペルホネン。購入された服の修理が必要になった時に使われたり、余り布を組み合わせたクッションやバッグに生まれ変わる。このコーナーでは機織り機の音がスピーカーから響き、五感でものづくりの背景を感じることができる。

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併設のショップには服や小物のほか、暮らしを彩るアイテムが揃う。家具やインテリアのデザイン、店舗や宿といった空間など、暮らし全般まで活動を広げるミナ ペルホネンの世界観を楽しめる。

minä perhonen museum / minä perhonen museum shop

三重県多気郡多気町ヴィソン672番1 サンセバスチャン通り14
TEL:0598-67-6467
開館時間:10時〜18時(最終入館17時30分)
休館日:なし
入館料:¥800(税込)
www.vison.jp

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住まいに見立てた空間で、心地よい暮らしを提案

くるみの木 暮らしの参考室

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大きな窓を模したコーナーにはアンティークのソファと美術家の望月通陽の作品を飾る。蚊帳に囲まれた空間では、日々の営みを紡いだ言葉「孚(ふ)」を朗読する石村の穏やかな声が映像と共に流れる。写真:木寺紀雄

同じく「サンセバスチャン通り」にミュージアムをオープンしたのは、奈良で38年間続く、ライフスタイルショップの先駆け「くるみの木」。入り口には、代表の石村由起子が16歳の時に骨董市で出合った蕎麦猪口や祖母が愛用した菓子焼き器など、「私の暮らしの教科書のような大切な存在」というアイテムを展示する。

奥へ進むと、キッチン、リビングなど、住まいに見立てた空間に、石村が集めてきた器や道具、アートなどが並ぶ。室内ながら、まるで陽の光や風を感じるような心地よさが漂うのは、長年で培われた明確な暮らしの理想形があるからだろう。「暮らしとはそれぞれの家庭で違う、内に宿るもの。その暮らしのイメージを持ち帰っていただいたり、参考にしていただける場所になればと思います」。併設のショップには作家の手仕事による器や布もの、籠、食品など、暮らしに寄り添う品が並ぶ。

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書斎コーナー。古いイスやライトが味わい深い。壁に飾った真鍮のオブジェは秋野ちひろの作品。写真:木寺紀雄

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ダイニングコーナー。食器棚には大皿からお椀、小皿、徳利、お猪口、そして土物や漆器、ガラスなど、種類も素材もさまざまな器が並ぶ。用と美を兼ね備えたものばかりで、見飽きないほど。写真:木寺紀雄

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併設のショップには器や布もの、籠といった道具から、お茶やお菓子などの食品まで、日常に寄り添うアイテムが多彩に揃う。石村が暮らしの中で大切にしている植物も、さりげなくあちこちに飾られている。写真:木寺紀雄

くるみの木 暮らしの参考室

三重県多気郡多気町ヴィソン672番1 サンセバスチャン通り10
TEL:0598-67-7828
開館時間:10時〜18時
休館日:なし
入館料:¥1,000(税込) ※「孚(ふ)」冊子付
www.vison.jp

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