地域を持続させる、“古くて新しい”注目の再生型団地

  • 文:佐藤千紗

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老朽化や住民の高齢化など、長きにわたる課題をリノベーションとアイデアで解決した、3つの団地を見ていこう。

1.ホシノタニ団地 / 神奈川県座間市

人と街とのつながりをテーマにリノベーションが行われ、団地リノベの先駆的な事例となったホシノタニ団地。小田急線座間駅前に立地し、もとは小田急電鉄の社宅として使われた建物だった。そのうち2棟を建築事務所のブルースタジオが賃貸住宅としてリノベーション。中庭を活かして人が集う広場とし、イベントスペースのあるカフェやサポート付き貸し農園、ドッグランなどを整備した。地域住民とのつながりを生み出し、郊外ならではの魅力的な住環境を創出。東京から引っ越す住人も多い人気物件に。

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リノベーションの一例。住戸はシンプルながら素材にはこだわりが。無垢材のフローリングとペンキ塗装で仕上げた。
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住棟の間を貸し農園やカフェのある広場に変え、住人以外の地域の人にもスペースを開放している。広場では年に2回、マーケットも開かれている。 www.odakyu-fudosan.co.jp/sumai/mansion/hoshinotani

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2.富士見台トンネル / 東京都国立市

国立市にある富士見台団地の商店街にできたシェア商店が話題だ。設計と運営を手がけたのは、この団地の住人でもある建築家の能作淳平。ベッドタウンのイメージが強い郊外団地に、カルチャー色のあるクリエイティブな場所をつくりたいとプロジェクトを開始。味噌汁専門店、自然派ワインバー、中東の菓子クナーファ専門店など、個性豊かな小商いが月替わりで出店する。若者が集えるスポットができたことで新しい客層が街に訪れ、商店街にも新店舗がオープンするなど、地域社会の活性化にも貢献している。

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団地内の商店街をリノベーション。コンセプトがユニークなシェア商店はクリエイティブな発信拠点に。
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富士見台団地の一室をDIYでリノベーションした能作の自宅。畳を再利用したベンチや押入れを転用したデスクなど、昔ながらの団地のディテールを活かしている。 IGアカウント:@fujimidaitunnel

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3.ポストオオミヤ / 埼玉県さいたま市

日本郵便の社宅として使われていた建物を、ルーヴィス、らいおん建築事務所、あきやカンパニーの3社が再生した。空き家を無駄にせず不動産活用するため、物件を借り上げて、オーナーの負担なくリノベーションする「カリアゲ」というスキームを利用。新たに店舗を誘致する他、DIY可能な住居として賃貸する。リノベーション住戸は無垢フローリング、白い塗装壁というプレーンな空間。既存の内装のまま、設備のみを更新した住戸も用意した。今後は周辺エリアも含めた街づくりが展開される予定だ。

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リノベーション賃貸の住戸。シンプルな内装なので、自分で棚や収納を取り付けるなど、自由にDIYできるのが人気の理由。
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団地らしい佇まいを残した1970年築の建物。オーナーから借り上げ、必要な部分だけ改修し、サブリースすることで空き家問題を解決しようという新しい試みだ。 www.roovice.com/works/13313

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※この記事はPen 2021年10月号「捨てない。」特集より再編集した記事です。