ハイク×ザ・ノース・フェイス/アディダスのアウター2着は、一生モノの宝物ワードローブ

  • 写真・文:高橋一史

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発売当時は関係者でも入手困難だった、ザ・ノース・フェイス×ハイク第3弾2019年春夏シーズンのレインコート(私物)。

ハイク(HYKE)は基本的にウィメンズブランドなのに、なぜファッション通の男性から熱い目線を注がれるのでしょうか?
さらにそのハイクから、男性体型に合うジェンダーレスラインが登場という嬉しいニュースが。
今回はそんな話です。

前身のグリーン(green)時代から展示会に足を運び店づくりやファッションショーを取材し、ブランド休止期間を経てハイクと名が変わってからも見続けて15年以上の時が過ぎ。
そのあいだずっと、私は彼らのいちファンでした。
ずっと、彼らの名は“ブランド”でした。
製品やショーには無駄を削ぎ落とした緊張感が漂い、仕事が職人的。
ずっと彼らの活動にドキドキさせられてきました。

デザイナーの男女2名も社で働くスタッフたちも、驚くほど気取りのない人たち。
日本のファッション界を率いるトップグループに属してもごく少人数でブランドを運営し、
自分たちの目の届く範囲のことしか手をつけない姿勢も昔のまま。
内部を知ってるメディア関係者ならたぶん全員が、
「ハイクと横並びにできるブランドはない」と言うでしょう。
運営もモノづくりの体制も含めた総合的なブランドの在り方でも。

ウィメンズブランドなのに男の私がハイクを特別と思うのにはもうひとつ大きな理由があります。
「心から好きな女性服を、ファッション通の女性も好む一体感(もしくは安心感)」
さらに、
「男目線でグリーンを着ている女性が好きという公私混同感」

女性のファッションを見るとき、仕事目線と男目線とのせめぎ合いがおこります。
コム デ ギャルソン、サカイ、トーガ、マメクロゴウチ、どれも素敵な服ですが(女性デザイナーばっかり)仕事目線を外して、好きな女性に着てほしいかとなるとまた別の話し。
(ちなみに男目線でもフェミニンワンピ、フリフリ服、ハイヒール、くるくるロングヘアとかの合コンウケよさそうな女性像は苦手)
真剣にウィメンズを判断するとき私は脳内で自身の性を切り替え、「私は女。じゃあこの服ってどう?」と考えます。
そうすると、不自然に開きすぎた背中、ウエストを太く見せるシルエット、すっきりしない首元、二の腕をカバーしない袖丈といった問題点が次々に見えてきます。
「アタシはこんな服にお金払えねーよっ」ってなる。
男性デザイナーの服に多い傾向です。


ところがグリーン、さきほど述べた理由のなかでハイクでなくグリーンと言ったのはグリーン時代に新作を見るといつも脳内性転換されず、
「これ好き、これも好き!これカッコいい!」状態だったから。
そして同じアイテムを、女性の編集者、スタイリスト、モデルが嬉々として試着して個人オーダーしていく。
さらに社のスタッフたちの着こなしもとても素敵。
モデルのように背が高いことも化粧が濃いこともないのに、ただただ素敵。
私的な男目線での“好み”。
こんなブランド、ふたつとない存在でした。

ハイクになってからグリーン時代に感じたジェンダーレス感覚を体現しているのが、定番ブランドとのコラボレーション企画です。
マッキントッシュ→アディダス→ザ・ノース・フェイスと続いたカプセルコレクション制作のなかで、ザ・ノース・フェイスでは第3弾のとき待望のメンズサイズが展開されました。
しかもモッズタイプのコートが新登場!
ずっと眺めるだけだったグリーン、いやハイクを着られるときがやってきたのです。

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ザ・ノース・フェイスを運営するゴールドウイン社員も入手がまず無理とされた、狭き門をくぐり抜けて我がモノになった宝物の一着。
スポーツウエア好きにとって世界最高の素材「ゴアテックス」を搭載した、土砂降りの雨のなかを歩き続けられるハードコア仕様のモード服。
ただですね、展示会でデザイナーの大出由紀子さんに相談したところ、
ウィメンズのMが私にはベストというアドバイスを受けて結局ウィメンズを選ぶことになりました。
基本的なパターンはほぼメンズと同様らしく。
でも女性と比べれば逆三角形な私が着ても、肩線が広く脇幅も身幅もダボダボなデザイン。
長く垂れ下がるフリンジ(実はファスナーを引っ張るストラップ)、フードを丸めて収納できる大きな立ち襟といったディテールの凝り具合もあり、着て歩くとかなりの迫力です。
でもヨーロッパ的エレガンスが漂う仕上がり。


購入当初に多かったのはアタッシェドプレス女性などからの、
「これほしかった!着なくなったら譲ってください!」というコメント。
下手な冗談で、「君で3人待ちなんで10年以上はあとになるだろうけどいい?」と話すほどの評判アイテム。
こんなに「いいな、いいな」と言われたの人生初ですよ。
たぶんこの先もないですよ。
ハイク恐るべし。

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みんなわかってるんですね、本当の実力派を。
両袖の先に白文字で小さくプリントされたGORE-TEX・HYKEのロゴ、幅広な立ち襟のゆったりハイテクモッズコートなどこれをパク……サンプリングした服がその後各ブランドから次々に出現してきました。
オリジナルはこれです、間違いなく。

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実はアディダス オリジナルス by ハイクのラストシーズン16年秋冬のウィンドブレーカーも持ってます。
マイファーストハイクです。
同シーズンの展示会にも行ったものの、購入したのは新宿ルミネのエディションにて。
アディダスとのコラボはシューズがカッコよすぎて、ウェア類は展示会でちゃんと見なかったんですよね。
店で見て、そのときトレンドだった1970年代レトロ感覚も感じてゲット。
黒×カーキ、斜めにザクッと切り替えたバイカラー、ペラペラの素材感、いま見ても最高です。
なんと黒部分とカーキ部分は2枚の生地の縫い合わせ!
左右の柄合わせが完璧で、レイヤー生地(撥水・防風性能)で縫い目は裏側でシール加工。
止水タイプのファスナーつきで雨降りもなんのその。


もうひとつ「さすが!」と思ったのは、首周りがすごく細い点。
女性の首を美しく上品に見せるデザインなんです。
男っぽく思えて、着れば納得のウィメンズアイテム。
私はネックを開けて着てます。
上まで閉められないですから、背が小さい男でも。

お気づきかと思いますが、ザ・ノース・フェイスが相手でもアディダスでも、ハイクのデザインは軸にブレなし。
ハイクのスタイルに、定番ブランドが肩を寄せてる印象。
価格も一般人が手に届く範囲。
コラボレーションかくあるべし。

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ハイクのサンプルが並ぶ現在のプレスルームの一角。
8月に訪れたときの様子。
オフィスは元有名撮影スタジオ。

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2021-22年秋冬シーズンのアクセサリー類。
8月に訪れたとき記録のためテーブルに適当に置いてiPhoneで撮っただけの写真。
それで絵になってしまうのがハイクのセンスですねえ。

この3点はメンズ対応ジェンダーレス服を紹介するPen Onlineの記事撮影用に選んだコーディネートアイテム。
各価格は以下の記事に記載しました。

【着る/知る】Vol.113 男性ファンに朗報!ハイクがジェンダーレスアイテムに本腰を入れはじめた

ハイクの新しい試み、ぜひぜひご一読くださいませ。

あ、そうです、ザ・ノース・フェイスとアディダスとのコラボアウターは販売終了と明言しておかねば。
ネットで調べてみたら、状態の悪い中古でも定価より高く販売されてる……。
着た形跡があるってことは転売ヤーじゃないからちょっとホッとしますが、プレミアムを喜ぶ人たちでもないと思うんですよね。
購入するなら新しく生まれてくるウエアを、または安く売られてる真っ当な中古を(それは薦めていいよね!?)。

All Photos©KAZUSHI

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。