【着る/知る】Vol.113 男性ファンに朗報!ハイクがジェンダーレスアイテムに本腰を入れはじめた

  • 構成・文:高橋一史 写真:青木和也

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ハイクがこの秋にアイテム数を増やしたジェンダーレスラインのトップス。

多くのファッション通がハイク(HYKE)に信頼を寄せるのは、彼らが常に地に足をつけ、高い次元でモノづくりしているからだろう。ワーク、ミリタリー、ユニフォーム、スポーツといった歴史を生き残ってきた男性的なウエアを、大胆に変貌させてウィメンズのモードに落とし込む。できあがった服はもはや原型とかけ離れ、ディテールにその面影を残すのみ。先端モードの空気がたっぷりと吹き込まれ、どの服もハイクらしさが濃密だ。ドレスとカジュアルの境界線は存在しない。女性がどんな場所にも着ていける毎日の装いがサポートされている。
少人数で運営し、納得のいくものだけを発表するやり方もハイクの流儀だ。ウィメンズに集中すべくこれまでメンズとは距離を置いてきた。彼らのクールなテイストを好む男性ファンは、マッキントッシュ、アディダス、ザ・ノースフェイスといったコラボコレクションのときだけ登場するメンズサイズにすかさず飛びついた。日本屈指の洗練されたミニマルデザインを身につけられる貴重なチャンスだったからだ。

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プルオーバーは背後ろがファスナー開きで、裾と同様のフリンジふうの長いストラップつき。同素材パンツと組み合わせ、シルバー925のリングネックレスを下げて洒落心を加えれば都会的なスポーツセットアップの完成だ。プルオーバー¥38,500(税込)、パンツ¥30,800(税込)/ハイク、アイウエアホルダー¥30,800(税込)/チャコリ × ハイク(すべてボウルズ TEL:03-3719-1239)

そのハイクが現代的なジェンダーレスラインに力を注ぎはじめた。サイズ幅が広く、同じ服を男性はベーシックに、女性はビッグに着られる。スタートのきっかけは、メンズそのものを着たいと望む女性からの熱い要望。時代の求めにハイクが応えた形だ。2021年春夏シーズンからはじまり、この21-22年秋冬シーズンでさらに種類が拡大。今年オープンした待望のオンラインショップでも購入可能である。
ここでは涼しくなる秋に実用的なトップスとパンツを紹介しよう。それぞれを組み合わせ、通常ラインのアクセサリーをプラスしてコーディネートした。まずは上写真のセットアップから。ハイクが得意とするスポーツ要素が素材にもパーツにも取り入れられている。プルオーバーはフラットな丸首襟で、裾はファスナーつきスリット。ウィメンズのディテールを男性が身につける繊細な洒落心を愉しみたい。インナーに白モックネックTシャツを着るなどレイヤードアイテムとして活用するのも良さそうだ。パンツは裾がドローコード仕様のイージータイプ。ヒップポケットがないのもウィメンズ感覚である。家生活を快適に過ごすのにも役立つ一本だ。

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フーディーは丸首にフードを取り付けた独特な構造。素材もディテールも凝りに凝った服だ。プレーンなデニムパンツを合わせ、ロックテリクス製の登山用カラビナをバックルにしたパラコードベルトで腰を飾ってスタイリッシュに着こなそう。フーディー¥38,500(税込)、パンツ¥23,100(税込)、ベルト¥22,000(税込)/ハイク(すべてボウルズ TEL:03-3719-1239)

たっぷりとしたオーバーサイズのスウエットフーディは、これ一枚被るだけでファッション性がアップする一着。コットン100%の生地は分厚く、手に持つとずしりとくる重量感がある。杢糸がデニムの色落ちのように縦に流れ、ほかにないオリジナルの美しさを際立たせている。クラシックなトレーニング用ウエアも、ハイクの手にかかればここまで都会的になるのだ。パンツはシルエットをワイドにしてモダンな印象を高めたベイカー(ファティーグ)パンツ。コットンの柔らかな風合いが快適な着心地を生む。

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ワーク調のこなれた風合いと、色のトーンの相性がいいセーターとパンツ。旬のトランスルーレントのメガネを掛ければコーデがクリーンな印象になる。ジュリアス タート オプティカルとのコラボアイテムで、21-22年秋に透明モデルが新登場。セーター¥30,800(税込)、パンツ¥23,100(税込)/ハイク、メガネ¥41,800(税込)/ジュリアス タート オプティカル × ハイク(すべてボウルズ TEL:03-3719-1239)

コットンのクルーネックセーターも、肩が落ちて脇幅が広いビッグシルエット。奥深いスモーキーな色味も魅力だが、袖先と裾のリブデザインも見逃せない。ミリタリーニットのように切り替えた編みで、プレーンな服のさりげないアクセントになっている。着て洒落て見えるのはこうした工夫があればこそだ。スウエットシャツに倣った縫製も、男性が気軽に着やすいスポーティさに貢献している。パンツはこれもワークパンツのベイカータイプ。オリーブグリーンでサテン生地なのはミリタリーそのものだが上質さが違う。ステッチもパーツもすべてがブラッシュアップされ、古着を愛してきた大人が穿くのにふさわしい仕上がりだ。

ハイクのウィメンズはアイテムにより、単にメンズをサイズダウンした服と思えることがある。だが実際に着てみると、肩周り、袖回り、ネックライン、身幅といったすべての要素が女性体型を映えさせるつくりであることに気づく。あくまでも“メンズ風”であり、男性体型に合う仕立てではないのだ。だが新しいジェンダーレスラインは、男性も似合う形が計算されている。まだ展開型数は限られるが、ハイセンスな人の新定番になりそうな期待のラインだ。

HYKE

https://hyke.jp/

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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