ビームス ジャパンが選んだ、「ニッポンの新しい銘品47選」とは?

  • 文:一ノ瀬 伸

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『ビームスジャパン 銘品のススメ』鈴木修司 著 トゥーヴァージンズ  ¥2,200(税込)

Pen Onlineのオフィシャルコラムニストでもある「BEAMS JAPAN(ビームス ジャパン)」ディレクターの鈴木修司が、日本全国を巡る中で出合った“銘品”を紹介するのが本書。衣食住の幅広いカテゴリーで、47都道府県から一点ずつピックアップしている。単なるカタログではなく、モノが生産された背景や歴史、地域性を交えて魅力を伝えていて読み応えたっぷりだ。

「ビームス ジャパン」は、ビームス創業40周年を記念して2016年に立ち上げられたプロジェクト。新宿の旗艦店のほか、渋谷店、京都店を展開し、日本の食やファッション、アート、カルチャー、クラフトなどのセレクト品を販売してきた。5周年を迎え、本書に特に印象深く記憶に残る銘品をまとめた。

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各地の地域性や文化や歴史まで、感じられるものを紹介

掲載されているモノは、実に多種多様。山形県では熟練の職人が手がけるけん玉、新潟県は金属加工業の一大産地として知られる燕三条(つばめさんじょう)の缶切り、山梨県は富士山麓で生産が盛んなジャカード織物の洋傘、愛知県は瀬戸焼きのまねき猫、兵庫県はアラジンストーブとも呼ばれるブルーフレームヒーター、佐賀県はガラス器の肥前びーとろ……などなど。

鈴木とモノとの出合い、つくり手らとの会話も書き留められている。銘品として褒め称えるだけではなく、ときおり見られる鈴木氏の正直な物言いはクスッと笑いを誘うとともに、その独自の審美眼を支える所以とも感じさせる。また、地域の人々の懐へ、躊躇せずに見事に入り込んでいくさまは、ビームス ジャパンが各地のモノと化学反応を引き起こし、多くのコラボレーションを成功させてきた要因と言えそうだ。

鈴木は文中の随所で、プロジェクトへの思いを綴っている。

「長年、バイヤーとして全国を廻り、さまざまな人や産地と関わり、たくさんのモノを見てきた私の頭の中には、漠然と、やりたいことがずっとありました。それは、見過ごされてきたモノ、本当は良いモノなのに正当な評価を受けてこなかったモノ、まだまだ知られていないモノを紹介していくこと」(P3)

「『ただ可愛いモノ、ただ美味しいモノ、ただ上質なモノ』は日本各地にたくさんあると思います。ビームス ジャパンの仕事は、その中からさらに『各地の地域性や文化や歴史』までも感じてもらえるような銘品を紹介すること。そんなふうに常日頃考えています」(P165)

インターネット上に情報があふれ、人の顔が見えないセレクトも多い時代において、年月をかけて現場を歩いて掘り出されたモノの尊さと信頼感を改めて感じさせられる。自分の暮らしに、あの人への贈り物に……。ページをゆっくりとめくって銘品との出合いを楽しんでほしい。

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ビームス ジャパン開業5周年企画「アッパレ、ニッポン‼︎」がただいま開催中。写真はその一環である、期間限定店舗「ビームス ジャパン 伊勢」(2021年8月31日まで営業予定)。この店舗以外にも、「ビームス ジャパン 宮島」など全国12店舗で展開している。

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