音楽、映画、文学と分野を交差する、台湾カルチャーの新たな面白さとは?

  • 文:近藤弥生子

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台湾カルチャーといえば台北の印象が強かったが、現在は各地方へと広がり、多様性を見せてきている。

ここ数年、台湾カルチャーへの注目度が高まっている。多様なエスニシティに、日本をはじめ世界各国から受けた影響が混じり合って織りなされるトランスカルチャー。そこには、ひと言では言い表せない魅力があふれている。

2021年に日本で3つの新作が邦訳出版され、2作品が文庫化されるなど、いま最も注目されている現代文学作家のひとり、呉明益(ウー・ミンイー)に、そんな台湾カルチャーについて訊いた。彼は台湾の国立大学で文学について教鞭を執る教授でもある。

「いちばん魅力的なのは、音楽かもしれません。過去に政府に禁止されていた、台湾語や先住民族の歌が甦ってきている。私は母語の客家語で創作活動をするミュージシャン・林生祥(リン・シェンシャン)の作品に文章を寄せたこともあるし、台湾語を用いるバンド『拍謝少年(ソーリー・ユース)』が私に作品を送ってくれたこともある」

もともと映画監督になるのが夢だったという呉は、近年アーティストの創作や交流の幅が広がっている状況についても語った。

「音楽、映画、文学といった分野がトランスされてきているのが、台湾カルチャーの新たな面白さだといえるでしょう。まさに、“台湾カルチャーとはこういうものだ”と型にはめられない自由さこそが魅力です。

映画だと『大佛普拉斯(The Great Buddha)+』を監督した黃信堯(ホアン・シンヤオ)は若い世代の中でも実力が抜きん出ていると思うし、マレーシア籍でありながら台湾を深く理解している蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督も、特別な存在だと思います」

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呉 明益(ウー・ミンイー)●1971 年、台湾・台北生まれ。小説家、エッセイスト。国立東華大学華文文学科教授。邦訳された著書に、台湾人作家として初めてブッカー国際賞にノミネートされた『自転車泥棒(訳:天野健太郎、文藝春秋)』、台湾でドラマ化され大きな話題となった『歩道橋の魔術師(訳:天野健太郎、白水社)』などがある。

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『複眼人(訳:小栗山 智、KADOKAWA)』。傷を負い、愛を求める人間たちの運命が、巨大な「ゴミの島」を前に重なり合い、驚嘆と感動の結末へと向かう──。人間と生物、自然と超自然的存在が交錯する世界を、圧倒的スケールと多元的視点で描く未曾有の物語。

豊かな自然とそこで暮らす人々によって織りなされ、それぞれの場所に息づいた文化も注目に値するという。たとえば、馬祖や金門といった場所では、東南アジア・ヨーロッパ・中国、そして現在の台湾文化が混じり合った雰囲気が建築などにも数多く見られるそうだ。

「私は蝶や野鳥が好きで、海外へ行くと必ず自然保護区や動物園に足を運ぶのですが、台湾にもたくさんの特有種がいます。日本統治時代にも博物学が追求され、日本人によってたくさんの研究が行われていましたから、もしかしたらいまの日本の方々も、こういったところに興味をもってくださるかもしれません」

さらに、日本の文学や漫画から大きな影響を受けているという呉は、登山漫画『神々の山嶺』が非常に好きで、周囲にも薦めている。

「日本人は知識をもとにした繊細な描写をとても大切にされますよね。これは、創作の上でとても大切にしていることでもあります。参考資料もない、見たことがないものを想像して情景を描く時も同じです」

そして代表作である長編小説『複眼人』もそのように創作したと、作品に対する思いを述べた。

「自分も見たことがない“ゴミの渦”が島とぶつかることについて書きました。この作品が出版された2011年に日本で東日本大震災が起こり、読者の中にはそのふたつを関連付けて捉える人もいたようです。そういった意味では、日本とのつながりが強い作品なのかもしれません。台湾も天災が多いですし、政治面での脅威、情報セキュリティの問題など、サステイナブルな発展を遂げるためにはどうしていくのがいいのか、多面的に考えることが必要でしょう。台湾はIT先進国として知られていますが、私にとっては台湾の自然環境こそがなにものにも代え難い唯一無二の存在です。そんな台湾の自然によって育まれた人々とその文化が花開いていくことが、私にとっての夢ですね」

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勢いあふれる台湾カルチャーを、都内で体感できるイベント

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「脳内トラベル台湾」。旅行や外出がままならないいま、本を読むことで台湾を巡り、人との触れ合いを体感するイベントだ。日本橋の誠品書店をはじめ、首都圏の書店で9月15日まで開催中。

映画やドラマ、音楽、文学、アニメーションといったコンテンツが続々と日本でも公開され、勢いを感じることが多くなってきた台湾カルチャー。台湾の文化やコンテンツの産業化・国際化を担う、国の文化部(文部科学省に相当)直属の独立行政法人、台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)は2021年を台湾カルチャー飛躍の年にしようと、イベント「脳内トラベル台湾」を開催した。

台湾デジタル担当大臣のオードリー・タンら豪華ゲストによるトークイベントを皮切りに、都内各書店での台湾作品や生活雑貨ブランドなどがフィーチャーされている。台湾で最も注目されているカルチャーが直輸入されるイベント、ぜひ旅行気分で訪れてみたい。

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旧暦1月の元宵節に台湾各地で行われるランタン祭り。最近では環境保護の観点からエコなランタンが開発されるなど、現代に即した伝統文化の継承が進んでいる。

脳内トラベル台湾

開催場所:誠品生活日本橋
(東京都中央区日本橋室町 3-2-1 COREDO 室町テラス 2F)
開催期間:8月16日~9月15日
開催時間:10時~21時
TEL:03-6225-2871

開催場所:本屋 B&B
(東京都世田谷区代田 2-36-15 BOUNS TRACK 2F )
開催期間:8月16日~8月31日
営業時間:HPをご確認ください
TEL:03-6450-8272

開催場所:ダ・ヴィンチストア
(埼玉県所沢市東所沢和田 3-31-3 ところざわサクラタウン 2F)
開催期間:9 月1日~9月15日
開催時間:10時~20時
TEL:04-2945-1828

https://nounai-travel-taiwan.taicca.tw

※開催日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

※台湾では「先住民族」という言葉が「すでに滅びた」というニュアンスをもって使われるため、元来その地域で暮らしてきたという意味で「原住民族」と呼ぶことを政府が定めている。ここでは日本語表現を優先して先住民族と記載した。

音楽、映画、文学と分野を交差する、台湾カルチャーの新たな面白さとは?

  • 文:近藤弥生子

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