以下はこの映画『GUILTY/ギルティ』の予告編リンクです。
ただこの予告編、観ないほうがベターです。
静かに進行していく映画の叙情性とリズムが表現されてない宣伝映像ですので。
秒単位でアングルが切り替わり、派手に音楽が流れるアクション映画と思われそう。
それを期待して観る人はがっかりするかもしれません。
まさかの密室劇ですから。
BGMも一切なし(エンドロールで初めて音楽が流れます)。
観はじめて間もなく映画より演劇に近いことに気付き、それでも観続けるかどうか。
Amazonプライム・ビデオの各レビューもチェックしないでおきましょう。
小見出しも見ちゃダメです。
話の展開を事前に知ったり予想するべきでない映画です。
2019年に日本で劇場公開された、18年制作のデンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』。
第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞。
当時は映画館に行かず、このたびAmazonプライム・ビデオではじめて観ました。
夜中に室内で、外部スピーカーをつないだ27インチモニタのパソコン再生で。
これが思いがけず大正解。
キーボードが置かれた机、そして夜という時間が室内で繰り広げられる映画のシチュエーションと見事にリンクして、臨場感マシマシでした。
ここで映画のストーリーの序盤を、観るきっかけ程度にお話しましょう。
「デンマーク警察の緊急ダイヤルに夜間通報があり、どうやら拉致されて車に乗っている女性からのもの。
男性の同乗者がいて、その人物が拉致者らしい。
主人公は通報担当の警察官。
デスクワーク専任でなく一時的に異動させられた刑事だから、オペレーターとしての自分の役割を越境して女性を救おうと必死になる」
さきほども言いましたが密室劇です。
犯罪現場の様子は電話でのやり取りで伝えられ、この警官も観る我々も音声情報から状況判断するしかない。
あたかも小説、ラジオドラマのよう。
観る側に視覚的な想像力が要求されます。
そこがこの映画の評価をわかれさせているようです。
Amazonプライム・ビデオの総合レビューが星3ツ半で、4ツに届かないのは万人向けでないことの証。
この作品に向きそうな人は、
●犯罪映画を数多く観てきた。
●スリルが好き。
●人間心理を描き出す映画が好き。
●苦しさや辛さに共感する。
●自分の職業が映画製作側に近い(つくり手目線でモノを見る)。
逆に向かなそうな人は、
●幸せな気分に浸りたい。
●ショッキングな犯罪は耐えがたい。
●映像や音楽の変化に乏しい映画が苦手。
●低予算映画には惹かれない。
●「明日も明るく出社しよう!」
とはいえ、ネガティブ映画、センセーショナル映画、難解映画、クリエイターのドヤ顔映画(?)ではありません。
正義が空回りし、信念を押し通せず、善と悪の境界線があいまいで、判断を誤り、希望は絶望になり絶望は希望に変わる……こうした現実社会での人の営みを描いた映画です。
「映画じゃなくていいじゃないか」
レビューにはこういう意見が多数見られますが、この作品、映画でないと無理ですよ。
主人公の背景にいる脇役人物の仕草や目線が物語に深みを与えてます。
映像の端にいる役者一人ひとりのさりげない演技がこれほど大切とは。
制作者たちがどれほど真剣に話し合い、入念に組み上げた作品なのか伺いしれます。
素晴らしいのは脚本だけではないのです。
舞台演劇でこの現実味を出すのはおそらく難しく、ラジオドラマだと脇役を描きにくいはず。
小説ならどんな描写もできるでしょうが、この映画はエンドロールに移る直前のラストシーン映像もイイんですよ!
その先の未来に何があるか、見事な結論。
デンマーク語ですし、台詞の内容に集中する意味でも日本語吹き替え版をお薦めしたいです。
ただ、拉致された女性の不安と恐怖が入り混じった震え声はオリジナルが圧勝。
吹替版だけ観る分にはなんら違和感ありませんが。
Amazonプライム・ビデオではどちらも用意され会員は見放題ですから、お好きなほうでぜひ。
『THE GUILTY/ギルティ』
吹替版
www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07YGR8XCN/ref=atv_wp_r_dp_ub_ms
字幕版
www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07YGQZJ34/ref=atv_wl_hom_c_unkc_1_1

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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