モノづくりの町・長田の誇り、「神戸ザック」を知っているか?

  • 動画ディレクション:谷山武士
  • 文:Pen編集部

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大阪の食い倒れ、京都の着倒れ、神戸の履き倒れと言われるほど、「神戸はくつのまち」として有名だ。中でも長田区は、1952年にゴムに代わる新たな素材として、ゴム底で表面は合成皮革や布などの化学合成品を用いた「ケミカルシューズ」を生んだ町としても知られる。そんなものづくりの町・長田で、約半世紀前に産声をあげたのが、バッグブランド「神戸ザック (KOBE ZAC)」だ。古きよき昭和の名残を醸す下町で継承される、モノづくりの魅力を映像とともに届けしよう。

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左:震災から26年が過ぎ、再整備が進む神戸の街並み。右:2009年10月に新長田に完成した、鉄人28号の巨大モニュメント。神戸出身の漫画家で新長田にゆかりの深い横山光輝(よこやまみつてる)の作品。地元商店街などが中心となってNPO法人KOBE鉄人プロジェクトを立ち上げ、震災復興と地域活性化のシンボルとして、神戸・新長田の街を見守り続けている。

クライマーが探し続ける、背負い心地のよさ

シンプルにして、親しみとどこか懐かしさを感じるデザインのザック。ザックとは、主に登山者が用いる言葉でリュックサックを意味する。神戸ザックは、地元・神戸はもちろん全国の登山家から支持される老舗メーカーだ。創業は1971年。職人の星加弘之が生み出すザックは、そのデザインだけでなく、使い勝手がよく、丈夫で長持ちとベテラン登山家からの評価も高い。

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星加弘之(ほしか・ひろゆき)●神戸ザック創業者。川崎重工の職域山岳会時代に装備係を担当。その当時、神戸でテントやザックを製造していた「トモミツ縫工」のモノづくりに感銘を受けて、川崎重工を退職し弟子として仕え修行に入る。1971年に独立し、神戸市乙仲通に工房を構え「神戸ザック(KOBE ZAC)」をスタート。

「独立してから、ハンプを使った一本締めのいちばんクラシックなリュックがうまく軌道に乗り、南極越冬隊やエベレストの南壁隊に使っていただくようになりました」と星加。登山家でもある星加により生み出される機能性を最重視したデザインは、職人の手による厚紙の型紙づくりから刃物を駆使した手裁ち、約30年間動き続けている動力ミシンでの縫製まで、熟練の技が光る。それが登山家から長く支持される明確な理由だ。また軽く、身体にフィットし、疲れにくい設計も特徴。かつては山岳警備隊や消防署の救助隊に納入した実績もある。そしていまもなお、自社工房内で製造を一貫するスタイルにまでこだわる徹底ぶり。そうした変わらぬ姿勢こそが、本物を納得させる確かなクオリティを生む。

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職人の手による刃物を駆使した手裁ち。
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約30年間動き続けている動力ミシンでの縫製作業にあたる職人。
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神戸ザックのブランドタグに至るまで、手作業でていねいに縫製されている。
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自社工房内の作業机の上に置かれた、ハサミやミシン糸。ここではひとつ一つのオペレーションが、職人の熟練の勘と確かな技術によって支えられている。

2020年、星加が高齢のため幕を下ろそうとしていた伝統と技術をどうしても守り抜きたいと、後継者の意思から現在の神戸ザックは再スタートした。一線を退いた星加の指導の元、想いを受け継いだ若者たちが自社工房内で日々腕を磨く。けれども、星加が半生をかけて培った技術と経験を引き継ぐにはまだまだ時間を要する。そのためイモックのザックは、一点一点の発注が入る度に製造する受注生産の体制を取っている。それでもいまなお、全国の愛用者からの支持は根強い。

"登山家がつくる本物志向のザック"。アウトドア派だけでなく、普段使いにも心強い逸品のため、ぜひお薦めしたいアイテムなのだ。

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約半世紀にわたり製造し続けている、オリジナルデザインのザック「イモック (IMOCK)」。

「神戸ザック」の魅力を凝縮したムービーがこちら!

問い合わせ先/神戸ザック新長田店 TEL:078-742-9070

http://www.kobezac-imock.net