シーズン1を批判した人にも観てほしい『全裸監督 シーズン2』【ネタバレなし】レビュー

  • 文:SYO
Share:

Netflixオリジナルドラマの『全裸監督 シーズン2』は6月24日に配信がスタート。
Photo by Mio Hirota

成長著しい動画配信サービス「Netflix」。古今東西の過去作品はもちろん、斬新なオリジナル作品を次々と生み出し、圧倒的な存在になりつつある。日本上陸は2015年とまだ日は浅いが、2020年の8月末時点で会員は500万人を突破。今後は東宝スタジオを複数年にわたって貸借し、日本オリジナル作品の量産体制に入る。

そのNetflix日本オリジナル作品で、異彩を放っているのが『全裸監督』だ。実在のAV監督・村西とおるの半生を追ったノンフィクション『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)を原作に、虚実織り交ぜて80年代(シーズン1)・90年代(シーズン2)のアダルトビデオ業界を描いていく。「地上波では描けない」過激なセリフや題材、描写がふんだんに盛り込まれており、また実際に起きた事件も絡んでいるため、2019年のシーズン1配信タイミングでは、賛否も含めた一大ムーブメントを呼び起こした。

そして、2021年6月24日には、シーズン2が配信開始された。シーズン1から続けて観た方は、かなり驚いたのではないだろうか。というのも本作、前シーズンと明確にテイストが異なっているのだ。端的に言えば、シーズン1は成功物語、シーズン2は転落物語。シーズン1の配信時に「犯罪者をヒロイックに描くとは何事か!」という批判が出たのは記憶に新しいが、本シーズンにおいては、主人公の村西とおる(山田孝之)が周囲の人間を巻き込み、破滅させていくさまを克明に描いている。

元々は『全裸監督』自体、ふたつでひとつの作品であり、シーズン1で“予兆”として存在していた主人公の危険な本性が描かれるわけだ。そういった意味では、シーズン2こそがこの作品の「本質」といえるかもしれない。Pen Onlineでは、『全裸監督 シーズン2』を【ネタバレあり】【ネタバレなし】の2本に分けて、紹介する。

村西の狂気が「加速する」シーズン2

シーズン1で蜜月関係だった村西とおると黒木香だが、シーズン2では…。

さまざまな試練を乗り越え、アダルトビデオ業界の寵児として大ブレイクを果たした村西(山田)。さらに成り上がろうとする彼は、選挙活動を行ったり暴露モノのアダルトビデオを作ったり、看板女優の黒木香(森田望智)と共にテレビ番組に出演したりと精力的に活動。そんな折、「未来の事業」として衛星放送の存在を知らされた村西は、アダルトビデオ専門チャンネルを作ろうと思いつき、次第に野望に取りつかれていく……。

シーズン2(全8話)で描かれる主な内容は、衛星放送の事業参入を図る村西が独断専行で行動しまくった結果、仲間たちを次々と不幸に陥れ、自らも莫大な借金を抱えてどん底に落ちていくというものだ。相棒で所属会社の社長・川田(玉山鉄二)やメイク担当の順子(伊藤沙莉)、黒木との間に亀裂が生じるさまは、ヒーローではなく完全にヴィラン(悪役)のそれである。

とはいえ、テイストこそがらりと変われど、シーズン1と別作品というわけでは全くない。結果を出したり、仲間に恵まれたりしたことで、カリスマとして崇められてきた村西は、多くの問題を抱えながらもなんだかんだで「許されてきた」存在でもあった。いわば、危険性が棚上げされていたわけだが、シーズン2では無視できないほどに膨張してしまう。村西が根本から「変わった」のではなく、彼の狂気が「加速した」ということ。つまり、最初から片鱗や素養はそこにあり、今回明るみに出ただけなのだ。

だからこそ、本作には背筋がゾッとするようなおぞましさが漂う。シーズン2を観たうえでシーズン1に立ち戻ると、隠された“危うさ”が浮かび上がってくるだろうし、シーズン1から続けて観ると、あまつさえ怪物を“応援”してしまっていた自分に戦慄が走るのではないか。「シーズン2こそが本質」と述べたのはこれが故であり、ジャイアントキリング的な面白さが光るシーズン1の印象が、シーズン2を観た後だと完全に変わってしまうのだ。

これは、武正晴総監督が掲げた「コントラスト」というテーマにも一致する。画作りにおいても、人物の二面性をビビッドに描写しており(わかりやすい部分では、人物の表情にかかる陰であったり、自然光と人工光の差異、画面の輝度や彩度など)、豪邸だった村西のプロダクション「ダイヤモンド映像」が荒れ果てていくさまからも、「繁栄と凋落」が伝わってくるだろう。

作品のテイストががらりと変わっても破綻しない理由

シーズン2から登場する新人女優の乃木真梨子(恒松祐里)。

さらに、山田孝之の完全に役に入り込んだ鬼気迫る怪演が、両シーズンを見事につなげたうえでギャップを生み出しており、「場を与えられてしまった暴君」の恐ろしさが強烈に迫ってくる。それは、“受け”の演技を披露する共演陣も同じ。村西の狂気が加速することで、“ファミリー”だった人々が困惑していくさまを生々しく見せた玉山や森田、伊藤はもちろん、村西を信じてついてきたスタッフに扮した柄本時生や後藤剛範の疲弊していく演技も必見だ。同時に、黒木の座に取って代わろうとする新進女優に扮した恒松祐里が見せる意図的なふてぶてしさが、「壊れていく立ち上げメンバー」とのコントラストを担保している。

ここから見えてくるのは、画作りや物語構造、脚本に演技……およそ作品を構成する要素が、スクラムを組むようにがっちりと連携しているということ。シーズン1の制作時から数年にわたって各メンバーが動いていたからこそといえるだろう。テイストががらりと変わっても破綻しないのは、基盤が揺るがないから。コアメンバーが続投したうえで、新規メンバーが新たな“血”を注入していく――。それはもちろん、シーズン1の時点で制作陣に今後の展開が見えていたからでもある。

最初から、作り手たちがこの結末に至る画を描いていたということ。それぞれのポジションを務めるメンバーが有機的に動いたこと。だからこそ『全裸監督 シーズン2』は冒険ができ、前シーズンで視聴者にこびりついたイメージを一新させるに至ったのだ。


【ネタバレあり】レビューを後日公開予定!

『全裸監督 シーズン2』
総監督/武正晴
出演/山田孝之、満島真之介、玉山鉄二ほか
2021年 全8話
Netflixで独占配信中。
https://www.netflix.com/jp/title/80239462

【関連記事】
『全裸監督 シーズン2』で描かれた“問題”は、現代のクリエイターにとっても他人事ではない【ネタバレあり】レビュー

『全裸監督』で最注目の女優・黒木香の知られざる名盤「小娘日和」がデジタルリリース