テレワークの気分転換は、自分好みに改装した家で楽しむ料理の時間

  • 写真:フランキー・ヴォーン
  • 文:坂本 きよえ(STUDIO SAKAMOTO)

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「僕の会社ではLoop upというアプリを使い仕事をしている。テレワークの時期も朝早く起き、運動をし、料理をし規則正しい生活を心がけていました」

ミラノの北部にあるチッタストゥディで暮らすエンリコ・フェレーリ。彼が通ったミラノ工科大学からほど近い、緑も多く有名建築が立ち並ぶエリアだ。学生時代建築を学んだエンリコだが、いまはファッションブランドのヨーロッパ全体を統括するセールスマネジャーをしている。

1年前に家を購入し、自分好みに改装。インテリアにもこだわり、惜しむ事なく好きな家具を揃えたことで、今回のテレワークの期間はとても助かったのだという。イタリアと北欧のブランド家具に巧みにヴィンテージ家具を組み合わせ、スタイリッシュだが温かい佇まいの空間をつくっている。

「自分の好きな居心地のよい空間は人の気持ちを穏やかにするでしょう。この家があって僕は助かった」と。無類の料理好きの彼は、レストラン顔負けのオープンキッチンも設置。

「家が完成した半年後にこのパンデミックが始まったミラノ、料理をつくることもコロナ禍とテレワーク時の心の安定に役立った」とも。

自宅は1人でいるには十分な広さがあり快適だったが、問題はコンピューターだけですべての仕事が完結することが初めての経験だったこと。そしてモニター上でセールスもしなければいけなかったことにも戸惑いがあった。

「モニター上で自分の顔が毎日相手に見られるのも少し緊張した覚えがあります」と。そこで朝のスタート時間を8時と決め、規則正しい生活を心がけたのだ。朝起きたらまずストレッチし、シャワーを浴び、着替えて、仕事を始める。仕事に向かう心のスイッチの切り替えは「普通ですが朝、パジャマから外出着に着替えることだった」と。

2カ月間の隔離が解除になった頃、家で働くことが少し苦痛になり、近くにある大学の庭で週に何度か仕事をするようになったことも。

「外に出る事で気分転換になり緑がある場所での仕事は効率が上がった」

そしていまは週に3度オフィスに足を運んでいるそうだ。エンリコの仕事は、ヨーロッパで売れる服を選択し、国別に分けてセールスしていくこと。「各国でディテールの好みも微妙に違うので、それぞれの国のセールス担当者とテレワークで相談しながら売り方を決めています」

直接商品を見せずにモニター上の画像や映像を見ながら売ったり買ったりするリモート・ビジネスの時代になる可能性もある。だからディテールなどをどう見せると画面上で魅力的に思え、購買意欲を刺激できるか、その表現方法も研究しているという。

天気がよい日は自宅から3分ほどの母校ミラノ工科大学の庭で草木の香りと太陽を浴びながらテレワークにいそしむ。

大好きなアーティスト ニコラ・グイドウィッチの絵に囲まれた部屋。毎日インテリアを変えながら日常を楽しんでいる。

友人を自宅に招待し彼が腕を振るうオープンキッチン。キッチンの外のテラスでハーブを育てている。ハンス・J・ウェグナーの椅子などが並ぶ。

コラード・ロッティの照明がこの部屋のポイント。デパドバのソファに ジャスパー・モリソンの椅子、ボヘミアングラスとバランスのよい空間。