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アルヴァ・アアルト『41 アームチェア パイミオ』1932年デザイン、アルヴァ・アアルト財団蔵。 photo: Tiina Ekosaari
【Penが選んだ、今月のアート】
歴史に刻まれたプロジェクトには、さまざまな出会いや対話が潜んでいて、大切な多くのことに気付かされる。
シンプルで使いやすい空間を目指したモダニズムの精神に、ヒューマニズムや自然への深い眼差しを重ねたフィンランドの建築家、アルヴァ・アアルト(1894-1949)。活動初期となるユヴァスキュラの設計事務所でともに働き始め、半年後に結婚したのがアイノ。育児をこなしながら対等な立場で事務所を運営。建築プロジェクトを夫婦で手がけた先駆け的存在だ。
アアルトのプロジェクトをアイノの存在に注目して紹介する興味深い展覧会が開幕する。日本とフィンランドのチームが7年以上温めてきた企画だ。
実験的な写真作品を残すなど、アイノのたぐいまれな芸術的感性は、空間の実現でさまざまに活かされていた。曲げ木の家具で知られるアルテック社の設立にも参加し、初代アート・ディレクターに就任。癌を患い54歳で他界するまで、創造の現場で才能を発揮した。アルヴァ・アアルト財団CEOのトンミ・リンダはこう述べる。
「多くの研究者が試みるも、どの作品がアイノの設計で、どの作品がアルヴァの設計なのかを特定することは不可能でした。25年間のほとんどのプロジェクトは共同で行われました」
ふたりが憧れ、新婚旅行でも訪ねたイタリアで得た経験にも目を向け、モダンライフの探究の軌跡など主要プロジェクトを振り返る本展。パイミオのサナトリウムやヴィープリの図書館、マイレア邸、アアルトハウスなど代表作を支える思想と試みをひも解き、アルテック社の設立理念にも触れる。遺族所有の貴重な資料も初披露される。
「建築はリンゴの樹のようでなければ」と考えていたアルヴァ。実を結ぶ過程は同じでもカタチや味は各々異なる。一つひとつ豊かな実りをもたらす樹を、ともに育てたのだ。
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『アアルトハウス リビングルーム』アルヴァ・アアルト財団蔵。奥のダイニングにイタリア旅行で購入した家具がある。機能的で心地よいキッチンや食器棚など、アイノの感性は自邸でも随所に。
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アイノ・アアルト(右)とアルヴァ・アアルト。1937年、アアルト・ファミリーコレクション蔵。 photo: Eino Mäkinen
『アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話』
開催期間:3/20~6/20
会場:世田谷美術館
TEL:03-3415-6011
開館時間:10時~18時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(5/3は開館)、5/6
料金: 一般¥1,200(税込) ※日時指定予約制
www.setagayaartmuseum.or.jp
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。