1960年に田中一光らと日本デザインセンターの創設に参加し、札幌冬季オリンピックのアートディレクションや企業のマーク・CI(コーポレート・アイデンティティ)を数多く手がけ、戦後のデザイン界を牽引してきたグラフィック・デザイナーの永井一正。80年代後半からは動植物をモチーフとした手描きの「LIFE」シリーズを制作し、すべての生き物がもつ生命の美のたくましさや神秘を表現してきた。
永井が2020年4月に刊行したのが、「LIFE」シリーズや過去作品の絵と言葉を収めた『いきることば つむぐいのち』だ。現在、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の『いきることば つむぐいのち 永井一正の絵と言葉の世界』では、本の世界をインスタレーションとして表現し、映像やテキストを通して永井が作品に託したメッセージを知ることができる。細かい線を刻んでウサギやゾウを描いた絵は愛おしく感じる一方で、「魂の鏡を磨いていないと、そこには本物は映ってこない」などの言葉は本質へ迫るようで、心に突き刺さる。
まず1階では『いきることば つむぐいのち』とともに、東日本大震災を契機に刊行された『つくることば いきることば』の世界が展開されている。暗がりの中、照明によって絵と言葉が交互に浮かびあう光景が美しい。地下では「LIFE」シリーズの動物や、過去に永井が手がけた展覧会のポスターを壁一面に映像で公開。BGM<音楽/音響:evala (See by Your Ears)>の鳥のさえずりや動物の鳴き声、水のせせらぎを耳にしながら、下から上へに流れるようにスクロールしていく様子を見ていると、いつしか動物が住む森の奥深くへと誘われるような感覚にさせられる。
2階ライブラリのインタビュー映像(16分、2020年10月5日収録)も見逃せない。ここでは永井が過去のデザイナーとしての活動を振り返りながら、「LIFE」シリーズについても言及。さらにコロナ禍についても触れており、生きていれば必ず課題を解決できるとして、未来への希望に満ちたメッセージを発信している。永井の言葉を心に受け止めつつ、「いきる」ことの喜びと「いのち」の大切さを感じる『LIFE』の世界に、じっくりと向き合いたい。
『いきることば つむぐいのち 永井一正の絵と言葉の世界』
開催期間:2020年10月9日(金)~11月21日(土)
開催場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1F
TEL:03-3571-5206
開廊時間:11時~19時
休館日:日、祝
入場無料
※混雑時は入場規制をする場合あり
※マスク着用や入館前の検温、手指消毒液の設置を行うなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施
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