日本民藝館『アイヌの美しき手仕事』で、アイヌ文化の造形美に没頭する。

  • 文:はろるど
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『アイヌの美しき手仕事』会場風景。1941年に日本民藝館で行われた『アイヌ工藝文化展』の一部を再現している。photo: Harold

漫画『ゴールデンカムイ』が大ヒットし、今夏には国立アイヌ民族博物館や慰霊施設からなる民族共生象徴空間「ウポポイ」が北海道白老町に誕生するなど、近年人々の注目を集めているアイヌの歴史と文化。そうしたアイヌ民族に戦前から敬意を払い、工芸品に魅せられていたのが、日本民藝館の創設者である柳宗悦だ。

柳は1941年に『アイヌ工藝文化展』を同館で開催している。当時の広間と1階すべての部屋を用いて約600点ものアイヌの工芸品を美術館で初めて陳列し、まだ民俗学的資料として受け止められていたアイヌ工芸に高い価値を見出した。展示は会期が延長されるほど好評を博し、柳も「アイヌを最上の姿で示した展観であった」との言葉を残している。

現在、行われている『アイヌの美しき手仕事』では、柳の蒐集品に加え、柳を師と仰ぎ『アイヌ工藝文化展』でも選品を担った芹沢銈介のアイヌコレクションを紹介。草や樹皮から織られた装飾的な衣装をはじめ、流麗なガラス玉の首飾りや魔払いのための太刀、渦巻の文様が力強く彫られた盆など180点もの品を鑑賞することができる。都内でこれほどのアイヌの工芸品を一度に見られる機会はあまりないだろう。

最大の見どころは、41年の展示を一部に再現した本館大展示室だ。アイヌの衣装と刀掛け帯が高らかに壁へかけられ、棚には首飾りや神(カムイ)に祈るために用いたヘラ状の儀礼具「イクパスイ」などが収められている。その造形美は互いに響き合うようで壮観だ。展示全体がひとつのかけがえのない芸術品のように思えて息を飲む。

柳はアイヌの造形美を「啻(ただ)に美しいのみならず、立派でさえあり、神秘でさえあり、其の想像の力の容易ならぬものを感じる」と評価し、約200点の工芸品を日本民藝館へと納めた。ひとつ一つの作品を見ていると、ていねいな手仕事に驚くだけでなく、つくり手の祈りや魂が凝縮されているようで、畏敬の念すら覚える。約80年の年月を超え、再びアイヌの館と化した日本民藝館での充実の展示を見逃さないようにしたい。

イラクサ地切伏刺繍衣裳(テタラペ)」樺太アイヌ エゾイラクサ、ムカゴイラクサなどの草皮から織られた衣服。素材の糸の色から、他のアイヌの衣服に比べて仕上がりが白いのも特徴だ。

「首飾り(タマサイ)」部分 青、水色、白などのガラス玉を連ねた首飾り。円盤状の飾り板は「シトキ」と呼ばれている。ガラス玉は大陸や本州との交易で得たもので、女性が儀礼の時に晴れ着と一緒に身に着けた。アイヌで首飾りは母から娘へと伝えられる宝物であり、護符でもあった。

「椀(チェペニパポ)」樺太アイヌ 魚料理などを盛るために使われた薄手の刳(く)り椀。刃先が湾曲した小刀を用いて、椀の内部を刳り抜いたもの。舟の形をしていて、片方に握手がついている。手の温もりを感じるようで愛でたくなる。

『アイヌの美しき手仕事』

開催期間:2020年9月15日(火)〜11月23日(月・祝)
開催場所:日本民藝館
東京都目黒区駒場4-3-33
TEL:03-3467-4527
開館時間:10時~17時 ※入館は16時30分まで
休館日:月(但し祝日の場合は開館し、翌日休館)
入場料:一般¥1,100(税込)
※混雑状況により人数制限を行う場合あり
※マスク着用、手指消毒液の設置を行うなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施
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