変幻自在なデザインの海に圧倒される、『第22回亀倉雄策賞受賞記念展 菊地敦己 2020』。

  • 文:はろるど

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会場にはこれまでに菊地敦己がデザインした作品が所狭しと並んでいる。展示数は約1000点。どこから見るべきか迷う。photo: Harold

1964年の東京オリンピックや70年の大阪万博のポスターなどの名作を生んだ亀倉雄策の生前の業績を讃え、グラフィックデザインの発展を目指して99年に設立された亀倉雄策賞。過去の受賞者には原研哉や佐藤卓、色部義昭らの名だたるデザイナーが名を連ねており、日本グラフィック界の最高賞として高く評価されてきた。

2020年の『第22回亀倉雄策賞』に選ばれたのが、1995年〜2004年のミナ ペルホネンのアートディレクションや青森県立美術館のサイン計画などで知られる菊地敦己だ。クリエイションギャラリーG8で開催中の『第22回亀倉雄策賞受賞記念展 菊地敦己 2020』では、これまでに菊地が手がけてきた書籍、雑誌、パッケージのデザインをはじめ、展覧会のチラシやポスターなどの実物を余すことなく紹介。なかには誰もが一度は目にしたことのあるブックカバーや、ファストファッションのTシャツといった身近なプロダクトも展示されており、これほどまでに幅広いジャンルで活躍してきたのかと驚く。

今回の受賞作である『野蛮と洗練 加守田章二の陶芸』のブックデザインも見逃せない。19年に菊池寛実記念 智美術館で開催された現代陶芸家、加守田章二の作品展のカタログで、表紙には曲線が波打つような作品の模様を引用している。会場ではカタログとともに、展覧会のポスターも展示。黒を背景に『曲線文扁壺』が宙を浮くような姿には、古代のモニュメントのような迫力ある造形がダイレクトに伝わってくる。シンプルながらも、一目で脳裏に焼き付くような力強いデザインだ。

菊地は受賞に際し「どの仕事もあまり仕上がりをイメージしてつくりません」とコメントしている。独特の余白と心地よい揺らぎを伴うデザインは、カジュアルで遊び心がありながら、時に上品で洗練された印象を与える変幻自在さがある。とても同じ人物の手によるものとは思えないほど多彩で、そこに菊地のデザイナーとしての無限の可能性と大きな魅力が感じられる。

陶芸家の展覧会図録のブックデザイン『野蛮と洗練 加守田章二の陶芸』(菊池寛実記念 智美術館)。選考委員より「編集、撮影、印刷、造本のすべてにデザイナーの力が発揮されている」と評価され、『第22回亀倉雄策賞』を受賞した。

『野蛮と洗練 加守田章二の陶芸』の図録や展覧会のポスターなど。図録はギャラリー受付にて、中のページを閲覧できるサンプルがあるのがうれしい。photo: Harold

左上はかつてユニクロから発売された菊地敦己デザインのクルーネックTシャツ。カラフルな円錐がプリントされた楽しいデザイン。photo: Harold

『第22回亀倉雄策賞受賞記念展 菊地敦己 2020』

開催期間:2020年7月20日(月)~9月2日(水)  
開催場所:クリエイションギャラリーG8
東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
TEL:03-6835-2260
開館時間:11時~19時
休館日:日、祝、8月9日〜16日
入場無料

*オンラインでの事前予約制。ただし当日や直前でも定員に達していない場合は、来場登録後に入場可能。マスクの着用、入館前の検温や手指消毒液を設置するなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施。

http://rcc.recruit.co.jp/g8