映画 『his』で注目の若手俳優・宮沢氷魚が向き合った、LGBTQの“生きづらさ”。

  • 写真:森山将人(TRIVAL)
  • 文:高野智宏
  • スタイリング:秋山貴紀 ヘア&メイク:秋月庸介(traffic)
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今回主演を務めた宮沢氷魚。現在、3月から上演中の渡辺謙主演の舞台『ピサロ』出演中だ。

2015年、メンズ・ノンノのオーディションでグランプリを獲得。専属モデルとして活躍しながら、17年には人気ドラマ「コウノドリ(第2シリーズ)」へのレギュラー出演で俳優デビューを飾る。以降も多くのテレビドラマや舞台に出演し、なかでも昨年夏に放送されたドラマ「偽装不倫」では杏演じる主人公の相手役を好演し、一躍注目される若手俳優のひとりなった宮沢氷魚。そんな彼の初主演映画『his』が、1月24日より公開される。

宮沢演じる井川迅(しゅん)は、ゲイであることを隠し移住した山間の町で、穏やかな日々を過ごしていた。そんな迅のもとに、8年前に別れを告げられたかつての恋人、藤原季節演ずる日比野渚が、少女・空とともに現れる。迅と別れた後、渚は留学したオーストラリアで通訳をしていた女性、玲奈と結婚し、空の父親となっていたのだ。しかし、夫婦仲が破綻した現在は離婚調停中だという。複雑な想いを抱きつつも、迅と渚、空の同居生活が始まる。そんな生活にも慣れたある日、親権を主張する玲奈が空を東京に連れ帰ってしまう。そしてその夜、迅と渚は感情のままにお互いの想いをぶつけ合いーー。

はじめてLGBTQ役を演じた宮沢は「プレッシャーでした」と振り返る。「高校までインターナショナルスクールで、LGBTQの友人もいたため、彼らを理解しているつもりでした。でも、脚本を読んで、世の中には意識、無意識に関わらず彼らへの差別が多いことを知り、中途半端な気持ちではこの役を演じられないなと」。また、彼らの生きづらさには宮沢も共感できるという。「クウォーターである僕は子どもの頃、学校の外では外人と言われることありました。一方、母の母国であり生まれ故郷のアメリカに行けばアジア人扱いされる。そんな、自分が何者なのかわからないという感覚は、迅と似ているのかもしれません」

昨年4月に公開された映画『愛がなんだ』が大ヒットし〝恋愛映画の旗手〟と注目される本作の監督・今泉力哉は、初めて演出した宮沢に対し、「こちらのプランで演じずに、目の前の演者に反応しながらアレンジしてくれるのがよかった。役を真剣に考えている姿勢も伝わってきました」と称賛する。「この作品を観て、ひとりでもLGBTQについて興味を抱くきっかけになれば嬉しいですね」と語る宮沢。そんな彼の繊細でいて芯のある演技に注目したい。

ゲイであることを隠し、ひっそりと田舎で暮らしていた主人公・迅のもとに、かつての恋人が現れる――。©2020映画「 his 」製作委員会

藤原季節演ずる日比野渚。ふたりは、役作りのために10日間共同生活をしていたそう。©2020映画「 his 」製作委員会


『his』

監督/今泉力哉
出演/宮沢氷魚、 藤原季節ほか
2019年 映画 2時間7分 
1 月 24 日より新宿武蔵野館ほかにて公開。
www.phantom-film.com/his-movie