2009年にスタートした『フェスティバル/トーキョー』(通称F/T)は、これまで69万人を超える観客と参加者を集めてきた、日本最大級の国際舞台芸術祭です。12回目を迎える今年は、8カ国を拠点とする12組のアーティストが池袋エリアの劇場や大塚の商店街などに結集。「からだの速度で」をテーマに、演劇、ダンス、音楽、美術などの多彩なプログラムが繰り広げられます。
今回、Penが注目するのは、韓国や中国、そしてポーランドのアーティストが国境を越えて日本とのコラボレーション作品を披露する3つのプログラム。SF的世界観を感じさせるパフォーミングアーツを通じて、未来について思いをはせてみませんか。
『ファーム』
再生医療や人工生命が発達した、近未来の世界。遺伝子操作によって生まれた青年とその家族がさまざまな葛藤を抱え、やがて人間の本質を露わにしていく…。2011年に岸田國士戯曲賞を受賞、作家としても活躍する松井周(劇団「サンプル」)が、デザイナーベビーから着想して生み出した戯曲を、韓国人演出家キム・ジョンが舞台化します。キム・ジョンは、韓国演劇界を代表する演出家ハン・テスクのもとで学び、ドンア・ドラマアワード新人演出家賞(17年)、ドゥサン・アーティストアワードパフォーマンス部門受賞(18年)などで注目を集める気鋭。韓国人キャストとともに松井戯曲をどのように解釈し、独創的な演出を見せてくれるのか、注目です。
“アジア”という環境が問う、舞台芸術の進化。
『新丛林 ニュー・ジャングル』
中国美術学院出身の新進気鋭アーティスト・チェンチェンチェンと、アメリカ人のミュージシャン・イーライ・レヴィによるサイケデリック・エレクトロニックグループ「香料SPICE」が初の来日公演。ピンク・フロイドやレディオヘッドに影響を受けたというサイケデリックなビートに哲学的歌詞を乗せ、東洋と西洋がミックスされたかのようなミステリアスなサウンドを響かせます。また注目したいのは、コンセプチュアルなステージング。未来のハッカーをモチーフにした彼らのオリジナルSFマンガをベースに、音楽や映像、パフォーマンスなどで世界観を構築するとのこと。「音楽ライブ」の枠に留まらない、刺激的なライブ体験をさせてくれそうです。
『オールウェイズ・カミングホーム』
ポーランド生まれの欧州演劇界の若き鬼才、マグダ・シュペフトの演出作品が日本に初上陸します。今回の作品で挑戦するのは、日本とポーランドのスタッフ、キャストとともに未来の「ユートピア」を出現させること。『ゲド戦記』で知られるSF作家アーシュラ・K・ル=グウィンが、文化人類学的アプローチで、遠い未来に住む人類の末裔を描き出した『オールウェイズ・カミングホーム』を原案にしています。これまでにもドキュメンタリーやインスタレーションなどを採り入れ、演劇の枠組みを超えた舞台作品を発表してきた鬼才は、F/T19で、いったいどんなユートピアを見せてくれるのでしょうか?
人と都市から始まる舞台芸術祭
フェスティバル/トーキョー19『からだの速度で』
開催期間:10月5日(土)~11月10日(日)
開催場所:東京芸術劇場、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)、トランパル大塚ほか
TEL:03‐5961‐5202